金田一少年

ふと気づけば、俺は一般的な人とは少し違った考えを持つ奴に育ってた。


不明瞭な記憶の中で、確実だと言い切れるくらいに遡れるのは十二歳のあの日。


きっかけは何だったか覚えてないけど小学校最後の発表会とか言うやつで俺はスカートを履いて髪を結って何かを一人で歌わされてた。


十二歳というと早い奴は声変わりをしてるわけで、もちろん男女の区別だとかお互いに違いを認めて意識し始めるとかそんな年なわけで、たぶん俺はその歳にしては色恋に興味がなくて未だ声変わりもしてない、背も低いやつだったから恰好の餌食だったんだと思う。


別にいじめとかではないけど、体のいい暇つぶしというか、笑いの種というか、それが思ったよりも高クオリティだったからみんな微妙な顔したりしてたんだろう。


大成功で幕を下ろしてしまった発表会は今も俺の中でイイ思い出として残ってる。


息を吐いてから立ち上がればひらひらと動きに合わせてスカートが揺れて、暗くなり始めた窓ガラスに反射した俺が見える。


いつもはヘアワックスで適当に跳ねさせてる髪はしなやかに揺れて肩ぐらいの長さを保ち、ほんのり色づく程度のチーク、リップ、上げただけの自前睫毛のおかげで窓ガラスの中にはそこそこ可愛らしい女子が立ってた。


『ああ、今日も可愛い』


困ったというか、変わったというか、人とは違うとはっきり気づいてしまったのは十三歳。


よくわからないがそのとき高校三年のゴリマッチョ的な先輩に告白されたからだ。


もちろんその人は男で、俺も男で、いくらそこそこしゃべる仲の先輩からとはいえ冗談にしては意味不明て面白くないそれに首を傾げながら断った覚えがある。


その時思ったことといえば、あ、俺意外と可愛いんじゃないだろうか。である。


何がどうしてそうなってしまったのか。


その日のうちに100均のグロスと練チークを買って早速家でつけてみたところ、鏡の中には可愛い女の子がいたわけで


折角似合うのであればどっちの服も着たくなる。けれどそれからというもの休日はそういう格好で外に出れば声をかけられ面倒だということに気づき、専ら家の中で着替えて遊ぶくらいしかしていない。


たまに気まぐれでは出れば、それなりに買い物やらして楽しむのはもちろんなのだ。


更には昔から、合唱だとか歌うことが好きだった俺は音域も広く、安定して違う音が出せるようで声変わりした今でも高い声は難なく出るし、地声以上に低い声も出せる。


まぁ、声真似とかは苦手だけど自分の中で設定した声色は安定して出し続けられるから外に出た時やこういう格好のときはほんのちょっと高くして話してた。


こんなことできても将来どこで役立つのかはよくわからないけれど。今の俺は概ね幸せに自由に生きれているから、死ぬのであればこの幸せなうちに死にたいなとは思う。





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