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『俺は泳がない』
真っ直ぐ前を見ているようでどこか荒んだ目は俺を捉えてそう断言した。
四月。キラキラと太陽の光を受け輝く金色の髪に俺は目を奪われた。気だるそうな瞳。身長は多分真琴よりも大きいんじゃないか。
着崩された真新しい制服の下には、俺達と同じような逆三角形の綺麗な身体があると思えた。
…_もし、泳ぐならば、こいつと一緒がいいと、一目で俺は思った。
昔、子供ながらにして自分とは違うあの光を反射させる明るい髪が、水と混ざりあってキラキラ輝く姿がかっこいいと思ったことがある。
それは確か小学生時代の遠く鮮やかな記憶だ。
かっかっとチョークを音立て黒板に浮かび上がった白い文字。その文字に並ぶようにして立つ男は眠いのか怠いのか、あくびをこらえるかのような表情をしたのちに口を開いた。
『中原舞です。そこそこによろしくおねがいします』
なんて適当な自己紹介をした本人にこちらは呆け、俺は席に向かう中原を眺めた。
一番前の席について頬杖をつき窓の外を眺め始める中原に先生は何度か吃ったあと笑顔をつくろってみせた。
『嫌だ』
「なんでよー、まぁまぁそう言わずにー!」
凛との再会で火がついた渚と江は授業が終わってすぐの教室に飛び込んできたと思えば中原の机を囲んだ。
中原は古文が嫌いなのかよく寝ており、今も寝起きだからか声が不機嫌に聞こえる。
「いまならイワトビちゃんが!」
『なんだよそのゲテモノ。いらねぇ』
ちらりと江の手の中のマスコットを見てため息混じりに答えた中原に二人はそれでも!と声をかけ、資料運びから戻ってきた真琴が混ざり静止をかる。
「ちょ、二人共落ち着いて、中原、大丈夫?」
『無理。その二人どうにかしてくれ』
困り顔の真琴と苛立ってる中原だけを見ていると喧嘩を危惧するが残念、こいつらはそんなではないのである。
「まこちゃんまこちゃん!ねーねー!まいちゃん入れようよ」
「ま、まいちゃん?」
「まい先輩!はいってくださいー!」
『名前で呼ぶな。入らねぇよ』
犬でも払うように手を振った中原に渚と江は更に勧誘し、ヒートアップした結果、中原は先生と真琴の介入により古文の授業態度帳消し代わりに水泳部の見学に来ることが決定した。
5月頭のこの時期。正直言って、屋外のプールに入りはしゃいでるこいつらはアホなんじゃないかと俺は思う。
『帰りてぇ』
この場所に来て何度目になるか、そう呟けば後ろで日傘をさした先生が補習?と目で語ってきて諦めてまた水面に目を向けた。
どいつも無駄のない入水体制。抵抗を極限まで抑えた手足の動きに水飛沫が派手に跳ねることはなく、綺麗だった。
中でも先程から一心不乱に泳いでる七瀬は別格だと思う。水と共存しているかのようにも思えた。
「まーいちゃん!」
『…殴られてぇのか』
びしょびしょの体で俺にくっついてきた下級生の…葉月?は悪びれもせずにやにやと笑った。
「ね、ねっ、入る気になった?」
『まったくもってこれっぽっちもねぇな』
「じゃ、これ入部届け!」
こいつは宇宙人かなにかなのか?
言葉が通じない恐怖とやらを初めて体験し、思わず葉月をプールの中にリリースしてしまった。
Q,なんのためにこの学校に来たか
A,なんとなく。
retake
Q,なんのためにこの学校に来たか
A,兄が卒業生で、ここに勤めているから
両親が離婚したため俺と兄は名字が違うから兄弟と気づいている人はいないだろう。
まぁ、帰る家は一緒なので急な訪問が有れば即座にバレることなのだが
今のように
玄関先で棒立ちする兄の背と、目と口を開いたまま突っ立ってる水泳部の面々に俺は段々目が死んでいってる気がした。
…―…―…―…―…―…―…
多分このあと水泳部のマネになるはず
不良風面倒臭がり
中原舞くん
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