東リベ
乾青宗は俺の唯一無二の友人である。誕生日で言えば1つ年上になるけれど、俺が早生まれだから学年は同じで、そして家も近い。
俺とイヌピーはタイプは違えど仲が良い幼馴染で、そして、イヌピーの五つ上のお姉さんである赤音さんは俺達の良き姉であり、俺の想いの人である。
そんな想い人の横には有名人が存在している。
赤音さんいわく、同じ学校で知らない人間はいないほどの有名人なのだというその人は、全身を長袖長ズボンに手袋。目元には色のついた眼鏡、それから帽子と日傘とほとんど素肌を見せない出で立ちをしていて、一歩間違えずとも怪しすぎる不審者の服装で、俺は初めて見たときは赤音さんが不審者に絡まれているのかと騒ぎかけた。
「お肌が弱いから完全装備なの。いつも暑くて大変そう」
幼稚園からの同級生なんだよと、そう心配しつつ程よい距離感で会話をしていた赤音さんの幼馴染だというその人は、家がそこまで近いわけではないらしく、登下校時も含めて赤音さんと話しているところを見たのは両の手で足りるほどだった。
「ひめは赤音と仲いいけど、俺とココみてーに一緒にいるわけじゃないしクラスメイトじゃね?」
中学から高校に上がっても同じ学校だそうだけど、そこまで親しいわけではなさそうなそれに、イヌピーの言うとおり、本当にただのクラスメイトなんだなとすぐに記憶から消してしまって、それからすぐに、事件は起こる。
乾家が全焼する大きな火事。火にのまれたのは在宅の姉弟で、俺が飛び込んで助けたのは俺の幼馴染である、弟の青宗。その後救い出された赤音さんは煙の吸いすぎによる中毒と全身に及ぶ重度の火傷による意識不明の重体。
「治すのに、四千万かかるって」
自分も負ったやけどで顔半分がまだ包帯で巻かれているのに、痛みよりも赤音さんのことを思い泣いているイヌピーに自分にできることを考えて、俺は犯罪に手を染めた。
×
赤音さんが亡くなって、イヌピーは不良の道に転がって、乾家は崩壊した。
大きな暴走族の一つに所属したイヌピーに俺は次第に疎遠になるかと思いきや、今更縁が切れることはなくて、あまりに大きな事件を起こして捕まってしまったイヌピーが少年院から帰ってくるのを待ってた俺は、一緒に柴大寿をトップに据えて同じ特攻服に袖を通した。
力と金で完全に支配してる上下関係は単純明快で、ボスも馬鹿じゃないからあれこれと余計なことを考えなくて済む。
×
その日は一緒に動くことの多い俺とイヌピーが、違う仕事をして、一緒に帰るために合流したところだった。
『黒猫ちゃんと白犬くん?』
持っていたそれの尖先をかつんと地について。見上げたそこにはやけに白いシルエットが浮かんでいた。
「?」
「……」
俺とイヌピーが思わず目を瞬いて、それから眉根を寄せる。
ふわふわと、ゆるい空気をまとっているのにどこまでも鋭く隙のない佇まい。
白色の肌と白色の髪。仄暗く紅く光る瞳は不気味で、イヌピーが目つきを悪くすればそれはにんまりと笑って、くるりと踵を返す。
『お元気そうで何より。あまり悪いことしてると戻れなくなるから気をつけるんだよ』
ひどく曖昧に意味深な言葉を残して離れていく姿に、一体何だったんだと眉根を寄せる。
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