デュラ
人が集まる街、東京の二十三区の一つ豊島区池袋。
そこには人だけじゃなくてぶっ飛んだ奴も、キチった奴らも、妖精さんも、異形も集まるとかなんとか。
そんな池袋に三人の少年少女が集まり物語を紡ぎ始める、八年前の話。
・一問目
入学式を終えて、各自教室でのホームルームが終わったのか周りが騒がしくてはっと目を覚ました。
あたりを見渡すとすでにいくつかのグループができててなんとも乗り遅れた感がやばい。
黒板にはなにかメモられてたのか書いたあとがあって、隣を見るとまだ片付けをしてて立つところだった。
『あ、ねぇ!』
「なんだ?」
高校生らしからぬオールバックは少し大人びて見え、一瞬躊躇いそうになる。
『ホームルームなにか重要なこと言ってた?』
「聞いてなかったのか」
呆れたような、笑いを含んだような表情に嫌な気分にならないのは人の心情をとことん乱したり、人の嫌なことを平然とやるやつが三年間一緒だったからか
「明日は教科書とジャージの受け取り、その後オリエンテーション。明後日は身体測定だからジャージ持参だぞ」
『まじか、サンキュー』
それなら明日は特に持ち物いらないな。
「困ったときはお互い様だ。じゃあな」
『ありがと、また明日』
かばんを持って出て行った彼に俺も帰ろうとかばんを持って外に出た。
そいいえば、名前知らねぇや
明日聞こ
なにがどうしたのか、この変態闇医者死亡との腐れ縁はここまでも続くらしい。
「夜那!」
『うげっ』
教室を出て廊下を歩いてると、この学校のブレザーをきちんと第一ボタンまで止め、ネクタイをしめた黒縁メガネが現れた。
ドラクエならば逃げるのコマンド一択なのに、そいつの後ろでにやにやしてる黒髪によって消されて泣きそう。
『また一緒?』
「うんうん!ここまで偶然が重なると面白いよね!やっぱり僕と夜那はなんとかの糸的なもので繋がれてるんだよ!」
「いやぁ、不思議だよね、また三人が揃うなんて」
にやにや笑いながらそう言ったやつは何故か指定のブレザーじゃなく黒短ランに赤シャツで、ちらちら廊下に残ってた他のクラスのやつが見てきてる。
『白々し』
「でも同じクラスになれなかったのは残念だなー」
この学校はG組まであって、これで同じクラスだったとしたらどれだけの情報操作が行われてたんだろう
「折原、ちょっといいかー」
「はーい」
ひょいっと顔をのぞかせた教師に非の打ち所のない笑顔と返事を携えて小走りの臨也に胡散臭いと新羅が笑ってこっちを向いた。
「夜那は知り合いいた?」
腐れ縁の新羅はB組。
にたにたしてる臨也はD組。
俺はG組で、教室を覗きながら口を開いた。
『一人』
「え?誰々?」
『新羅も知ってる。静ちゃん』
「へぇ!平和島くん来神にきてたんだ!」
机の上に上半身を預けて一定のリズムで上下してる人影に近寄る。
金髪の頭は入学早々おっかないと思われたらしくて周りは様子見してるだけで声掛けしてない。
それで置いてけぼりはどうかと思うけど
『静ちゃん、もう放課後、起きろよ』
肩に手をおいて揺らせば寝ぼけた声が聞こえて体が起き上がった。
陽のあたるこの席は暖かくて日向ぼっこが好きな静ちゃんには特等席で魔の席だと思う。
「やぁ!覚えてるかい!静雄!」
寝起きの静雄ちゃんの視界に一番で入るような距離とタイミングで新羅が出てくる。
静雄ちゃんは無言で新羅を眺めてた。
「平和島くーん、平和島静雄ー」
「……ああ、なんだ、新羅か」
「なんだってなにさ?僕は君の小学校来の友だち岸谷新羅だよ!」
胸を張る新羅を静雄はほんの数秒眺めて頭を掻いた。
俺が静雄の立場だったら二度と新羅には近寄らないくらいの変人行動。
「夜那、なんか連絡あったか?」
『明後日は身体測定だから体育着ってくらい』
入学式を終えたのは今日で、最初の三日間はオリエンテーションと準備、健康診断で潰れるらしい
俺も半分寝てたからあまり覚えてないんだけど、さっき隣の席のやつに聞いたから大丈夫のはず!とつけ足せば静ちゃんは笑って立ち上がった。
「じゃ、入学祝いになんか飯でも食い行くか」
『おー!さんせ!さんせ!!静ちゃんおごり!』
「あほか。無理に決まってんだろ。せめて割り勘」
『じゃマックかモスが妥当じゃね?』
「俺米食いたいんだよな」
「僕無視しないでよ?!」
まだいたのか
静ちゃんの目に新羅が嘘泣きしながら俺の後ろに隠れて、そうだと手を叩いた。
「僕んちでホームパーティなんてどうかな?」
「いいのか?」
「構わないよ!」
そうと決まればれっつごー!と静ちゃんの背を押す俺と新羅。
二人がかりでも動かない静ちゃんに勢い余って突撃してつらい
静ちゃんには自力で歩いてもらって校舎を出た。
『イオンで飲み物と食い物買ってこうぜ』
新羅の家路からは少しそれる大型ショッピングモールに入って男子高校生三人で食料品売り場を歩けば奥様方の視線が刺さって心が痛い。
「やっぱ飲み物は「牛乳」だよね?!え、牛乳?」
ペプシか牛乳かで戦争してる二人はそんなことないんだろうけどね。
息を吐いてオレンジジュースのパックをカゴに入れてレジに向かった。
ぴっぴっと手際よくなってく音と加算される金額。
「すんません、これも」
「こっちもおねがいします」
一リットルの牛乳パックと二リットルのペプシのペット。
表示された合計金額は四桁で一番左の数字が5だった。
『や、やっぱここは割り勘だよな!』
「俺の牛乳が一番安いじゃねぇか」
「わっ、夜那のオレンジジュースさりげなく高いやつ!」
『はいはい、一人二千円!』
ぶーぶー言う二人はそれでも二千円だして、六千円払ってお釣りをもらった俺らはカゴを持って台に移動した。
『せーのっ』
「「かんぱーい!」」
色の違う飲み物を注がれたカップを合わせて笑う。
テープルの上にはパックに入った焼き鳥やらポテトサラダやら。
「いやいや、本当にまたこの三人で学校通えるなんて嬉しいよ!」
サバ味噌をつついてた新羅が俺と静ちゃんを見た。
ちょうどコールスローがなくなったから口を開く。
『え、静ちゃんはいいけど新羅と通えても嬉しくない』
静ちゃんはリブステーキを食べるのに忙しいらしく新羅を無視。下手したら聞いてもない。
「うわぁぁ、夜那の薄情者!いけずめ!」
『?』
新しく開けたリンゴドレッシングのサラダを口に入れて首を傾げればベジタリアン!と新羅が泣いた。
「また夜那と平和島くんと一緒に学校通えるなんてこれからが楽しみだ!」
「夜那、牛乳とってくれ」
『自分で取れし』
「ねぇ聞いて?!」
うわぁぁんと背中に引っ付いてきてなき真似をされうざい。
静ちゃんは我関せずと渡した牛乳をついで、今度は焼き鳥に手を伸ばしてた。
向こう側から鍵の開く音がして近づいてくる足音にどうにかしてくれそうだと息を吐く。
『セルティーー』
一問目
Q.出身校が同じ人の名前
A.新羅、静ちゃん、臨也
保育園から一緒の新羅に最近恐怖を越して慣れがきはじめてる件
[新羅いい加減にしろ!]
ぶわっと出てきた黒い影が俺から眼鏡を引き剥がして吊るした。
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