デュラ
・例題
オレンジジュースの入った缶を片手に柵に寄りかかって空を仰ぐ男子高校生。
風に煽られる短髪気味な黒髪、雲の切れ目で射した光が眩しかったのか、目尻が少し吊られた一重な目が細められた。
どこにでもいそう。そう言われてしまうと頷きざるを得ない彼は、れっきとした俺のトモダチだ。
「夜那」
『んー、どうしたー』
姿勢は変えず、顔だけこちらに向けた夜那は眠そうだ
変わらず風に煽られた髪は短く舞ってる。
「夜那ってなんでもできるよね」
『は?』
「できないことってあるの?」
常々思っていたことが思わず口から出た。
夜那は気怠げな雰囲気はそのままに、口元だけ呆れとも取れるような笑みで弧を描いて見せた。
『いいか、俺、人間だからね。』
それだけいって夜那はまだ残ってるらしき缶に口をつけた。
「知ってるよそれくらい」
わかりきった反応に息を吐いて硬いコンクリートの床に寝そべる。
最近少し伸びてきた前髪が風で肌をなでた。
がちゃりと少々建付けのわるい金属製の扉が開く。
「あ!やっぱりここにいたんだ!」
俺や夜那よりも長い黒髪を揺らした眼鏡、中学から旧知の新羅が早足気味に近寄ってくる。
「まーたさぼりか」
その後ろからは笑ってるドタチンと仏頂面の静ちゃん。
『だって四限現社だったからー』
夜那はずるずると柵に凭れながら座った。
「臨也、こんなとこで寝ると服汚れるぞ」
「んー、」
「午後からの授業出ねーの?」
ドタチンが俺に構ってお母さんやってると静ちゃんが夜那の隣に座った。
『午後は英語あんだよねー』
「お前きらいな教科ばっかだよな」
『静ちゃんもなー』
夜那と静ちゃんはけらけらと笑い、新羅とドタチンはこれはと苦笑う。
「あ、僕クーポン持ってるんだよね!」
思い出したかのように新羅がわざとらしく手を叩いて笑った。
「お、どこのだ?」
「スイパラー」
『いこいこー』
「こりゃ午後もさぼりか」
ここのメンバーは皆甘いものが嫌いではなく、さぼることに抵抗もない。
だからよく授業を抜けてどこかいくことがあった。
話題の種は新羅、最初に食いつく静ちゃん、決定する夜那、まったくと息を吐きながら頷くドタチン。
もとから立ってたドタチンを除く三人が立ち上がる。
「…夜那ー」
一人まだかったいコンクリートに寝そべったままの俺は会話に混ざるわけでもなく、今頃になって夜那に声をかけた。
夜那はいつも通り笑って右手を差し出す。
『ほら、臨也いくぞー』
・例題
Q.一番の思い出を答えよ
A.彼らと過ごしてきた素晴らしい日々
こんな風にずっと、続いてほしい
「だ、大丈夫?」
『……うん…』
「臨也お前夜那にケーキ押し付けただろ」
「てへぺろっ☆」
「ノミ蟲…」
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