念能力者の平易生活


町中なのにぶわっと吹いてきた風が舞い上げた砂のせいで髪の毛がばりばりになりそう。

帰ったらすぐお風呂に入らないと砂臭くて話にならなそうとか思いながら目の前の人を見失わないように歩いた。

「なんでてめーが着いてきてんだ」

『よくわからないけど、センゴクさんがサーを見送れって』

ちっと舌打ちが耳に届いたものの、気にせずに後ろをついてく。

そういえば会議中にやたら僕に絡んできたピンクのもふもふは結局誰なんだろ

「もてなしなんかしねぇぞ」

『別にもてなされるためについてきてるわけじゃないから気にしないでいいと思う』

一瞬視線が寄越された気がしたけどすぐに前を向いたサーは町民に崇められれば手を上げて返し、スタスタ歩いてく。

見るからに王様が住んでそうな宮殿っぽいものまで歩いて門の前で立ち止まった。

『王様なんだ』

「アラバスタ国の英雄だ」

鼻を鳴らして答えたサーは機嫌が良いのか悪いのか僕に判断のしようがないけど、たぶんいい方なんじゃないかと思う。

あくどい笑みを零したアラバスタ国の英雄は、僕の頭を冷たくて硬い鉤爪の背で二度撫でるように叩くと王宮の中に振り返ることなく歩いて行った。

黒いもこもこのコートが扉の向こうに消えて、気配もなくなったところで僕はこの砂だらけの国から出て行くために来た道を戻る。



英雄、七武海サー・クロコダイルが除名されたのはこの一週間後。

まだ名を上げたばかりの海賊に悪事を潰されたのだとか、センゴクさんが頭を抱えて、それに連動するかのように青キジさんが仕事をサボることが多くなった気がする。



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