籠球男子による排球への影響

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山口くん専用の呼び方

今日は先生いわく新コーチ紹介&練習試合があるとのことで準備が多かった。

洗い乾ききったユニフォームの山をカゴに入れて持ち上げる。清水さんに言われたとおり部室に向かった。

『…………――どち、らさま―…てしょう、か?』

「は、はい!」

練習が始まって誰もいないはずの部室の前、挙動不審な背中があったから声をかけただけなのに偉く肩を跳ね上げられてしまった。

解せぬ。

じっと眺めてれば振り返ったその人は言い訳を探してて、その顔に見覚えがあった。

『…………………あずま―ね、さんです―か?』

「え?!あ、あれ?会ったことあったっけ!?」

会ったことはないと首を横に振ってからそういえばと服を見た。洗濯するのに邪魔臭いからってジャージの上を脱いだままだ。部室の入り口にかけられた排球部を指さしたあとに両手を塞いでるユニフォームの山を見せる。

東峰さんにめっちゃくちゃ驚かれた。

「そんなでかいのにマネジなんだ!て、ええ、バレー部っ」

ころころ顔色が変わって面白い人。

俺も表情の豊かさを見習うべきかな

うーん、うーんと声に出して悩みだしてしまった東峰さんに首を傾げてから仕方なく部室を開けて中に入る。

東峰さんは目を丸くして俺を見てた。

『………………はい―らな、いん、で…すか?』

「え、」

大きい体と大人びた顔立ちには似合わないくらい眉を八の字に下げた東峰さんは何かに悩んでるようで部室と廊下の境界線を眺めてる。

開け放ったままの扉はそもそも鍵がかかってるわけでもない。入りたくなったら入ればいい。

なんて結論を出してユニフォームを畳む。

サイズと名前を見ながら各自のロッカーにしまっていって、最後に西谷さんのを置いて立ち上がった。

東峰さんはまだ部室の外にいて、もう悩みもしないで俺を見てる。

「あ、あのさ、えっと」

『……―話、くらいな、ら―俺、聞きま…す』

「っ、悪い、ちょっといいかな」

俺がバレー部のマネージャーだからか、それとも新入りでなにも知らないと思ったからか。

理由なんてなんでもいいけど東峰さんという先輩が何か話そうとしてるんだったら、聞かない選択肢はない

連れられて向かったのはバレー部の練習する声が聞こえる体育館裏、こんなところにベンチがあるなんて知らなかった。

どうやら俺の情報集めもまだまだ爪が甘いらしい

「良かったらこれ、飲んで」

渡されたのはりんごジュース。

見上げればここから先の口止め料ってことにしといてと笑った顔があって礼を言いストローをさした。

隣りに座った東峰さんはとてつもなく思いつめた表情をしてて、リストラされて今にも首を吊りそうなサラリーマンにも見える。

人を見た目で判断したらいけないのは“幼なじみ”を通してよくわかってるから言いはしないけど

「その、俺一応三年でWSしてるんだ」

手持ち無沙汰そうに自分のりんごジュースをのパックを触る東峰さんの視線は落ちたままで、口は挟まずに先を待つ。

吹いた風で伸び気味の前髪がなびいて目に入りそう

「去年、負けてから俺スパイク打つのが怖いんだ」

目線を外してりんごジュースを一口含む。

負けて、怖くなる。

なんだか中学の頃を思い出した。

「打って、もしまた止められたら、そう考えるだけでトスが呼べない。またノヤやスガ、みんなに迷惑をかけたら、こんなダメなエースがいたところで……」

言い淀んだのは先を言いたくないからか、今にも泣きそうでそれを堪えてるみたいな表情が痛くて痛くて仕方ない

「…………―この間、日向って子と影山って子が来て、挨拶してってくれたんだけど、なんか…―」

すごく、眩しかった

ぽつりと呟いて深々と息を吐いた東峰さんの指先が白んでる。

風に吹かれて舞ったらしい葉が東峰さんの頭に乗った。

「いつまでも逃げてちゃいけないのはわかってる、けど、俺なんかが戻ったところでみんなに迷惑しかかけない」

口に出せば出すほど自分の居場所をなくしていってるようにしか見えない。吐き出しきってしまったのか静かになった東峰さんの背中を眺める。

成り行きでさして飲んでたりんごジュースがずずっと鳴って口を離した。体を動かしたからか少し目が覚めてて気分も悪くない。

息を吸って、吐く。

『……東峰、さん。俺はまだ、バレーのことはよくわかってません。俺、中学までは球技をしてたんですけど、その時の経験を踏まえて…見当違いなこと言うかもしれないですが、話してもいいですか?』

「喋った!?」

そこで驚かれるって、解せぬ。(本日二度目)

「あ、ええと、ああ、俺ばっか話すのも変だし、話してくれるなら嬉しいです、はい」

俺が喋ることはそんなに稀なことではないと思う。

あ、でもここに来てから寝ぼけないで喋ったのは二回目か

嫌に恐縮されても話しづらいだけなんだけど、息を吐いて視界を狭め始めてた髪を耳の後ろにかけた。

『俺はずっとバスケをしてました、物心つく頃には幼馴染と一緒にボールを触って暇さえあればストリートで年上に混じって―…東峰さんは、バスケしたことありますか?』

「バスケ…うーん、授業くらいなら、?」

『ポジションはありました?』

「たしか、センター…?」

東峰さんはとても背が高いし力もありそうだからそれも頷ける。

『バレーでいうセッターはバスケのポイントガード、ミドルブロッカーはセンター。まぁ、少し違いますけど同じ球技で団体戦っていうのもあるのか似ているところがあると思います』

話についてこれてるか横目で東峰さんを見れば真剣な眼差しでこっちを見てきて頷いてくれた。

『バスケはボールをゴールに入れる競技、バレーはボールをコートに入れる競技。どっちも似てますが、相容れないところが一つあります。
バスケは強い人が一人いれば、試合に勝てるんです』

「……バスケは五人でチームプレーするもんだろ?」

『そう、たしかに習いますね。…でも、バスケにはボールを一人でゴールに入れてはいけないだとか、一人で敵を全員抜いてはいけないなんてルールはありません。だから強い奴が一人いればそれで、誰が何点とったっていい、結局は勝てればなんだっていいんです。中学の部活はそんな世界でした』

「そ、んなの、もう」

『勿論チームプレーもなにもありません。チームメイトなんて数さえ合えばいい。聞いた話ですが、影山くんは中学時代ワンマンプレーが過ぎて試合を下げられそうですね…俺の中学じゃ理解できない、理解されない。使えるものなら使う、それが普通。』

困ったような顔をした東峰さんはそれでも目をそらさない。

『…ここに来てバレー部のマネージャーになってまだ日は浅いですが、月並みな表現、俺はとても凄いなと思いました。バレーは一人じゃ点が取れない、だからみんなポジションを大事にして協力して試合に臨むんでしょう』

ふわふわ揺れ始めてまた落ちてきた髪を押さえる。

そろそろ戻らないと清水さんに怒られちゃうか、怒られるのは嫌だな

『先ほど、東峰さんは自分のようなヘタレ・気弱・トラウマ持ちが戻っても迷惑をかけるとおっしゃいました』

「ヘタレ、気弱、トラウマ持ち…」

『俺のいた中学なら即切り捨て、良くて退部勧告でしょうね。でも、ここは俺のいた中学じゃないし、バスケ部でもない。烏野排球部です。西谷さんだけでなく、部長さんも菅原さんも、清水さんも、入ったばかりの日向くん、影山くんだって東峰さんを待っているのに、迷惑をかけられる仲間がいるのにどうして戻らないのか…話を聞かせて頂いても理解ができませんでした。』

立ち上がって服を軽くはらってからご馳走様でしたと頭を下げる。

東峰さんは呆けてて聞こえてるのかわからなかったけど本気で時間がやばいからお暇させてもらう。

さすがに歩いて戻るのは気が引けて走ることにした。



(目が覚めてる彼と話したひげちょこさんの道は変わるのでしょうか)



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