籠球男子による排球への影響
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おはようございます。桃井です。
ただいまAM.5:40、体育館前。とても眠い。
最近寝不足がひどいのに早起きは酷だ。誰か助けてくれ。寝不足で寝ぼけてる俺を気にせず世の中は進むんだから酷い。
ああ、無常っていうやつだ。
体育館の鍵を開けて体育館に入れば当たり前ながら一番乗りで息を吸った。
この間の青葉城西との試合後、露呈した一年のレシーブ能力の低さが強化対象になった。その日以降及川さんからくるLINEは気が向いたら程よく返してる。もう直接は会いたくない
けどそのLINEのおかげで知ったことかある。
バレーも夏の大会はIHというらしい。聞けば開催時期もかぶってる。
現在俺の所属は烏野高校排球部マネージャーで優先はバレーになって資料まとめをしてるところだった。バスケは趣味の範囲、もう公式に出ることもないし。そう入れたらめちゃくちゃ反応がうざかったから通知を切ってしまった。夜、時間のあるときにゆっくり見よう。
「桃井!桃井!見てみて!!」
『………………………あ…うん、み―た。』
もう何度目になるか、黒いジャージと試合用のオレンジのユニフォームを聞きとして見せてくる日向くん。
本当にやりとりなんなのかな
「桃井、ちょっといい?」
清水さんが助け舟のつもりはないんだろうけど話しかけてきて着いて行く。
職員室に資料を取り行くのを手伝ってとのこと
「今日、戻ってくる部員がいるの。だから手続き書とユニフォーム、全部持って行かないと」
『……………―わかりま、した…もち、ま―す』
渡された荷物全部を両手に持ち、清水さんは職員室に別件があると残った。
一足先に言われたとおり部室に向かう。
朝練の開始してるこの時間、俺が部室に行くのは荷物をいたら本人に、いなければロッカーにつっこんでおくため。
騒がしい気のする体育館を過ぎて部室に入れば誰もいなかった。
歩いて言われたロッカーに立つ。開いた中には何もない荷物、けど扉に写真が貼ってあった。いつのものかはわからないけど記憶にない人たちが写ってる写真は先代バレー部の集合写真なのか。前には見たことのない人たちが、後ろのほうには部長…じゃないかこの時は、澤村さん、菅原さん、田中さん、縁下さん、木下さん、成田さん、見たことのない背の低い人と、高い人、コーチらしいおじいさん。
盗み見してても仕方ないからと荷物をぐちゃぐちゃにならないよう詰める。
扉が開いた。
「え、あ!女子?!」
『…………………―あ、うん…違う…、?』
日向くんより小さい身長が一人。
立った髪は跳ねてるけど、顔はすごく童顔で中学の時の“赤い主将”みたいだ。
「わ!すごい美人!…潔子さんの友達か?」
不思議そうに首を傾げられる。
この人はさっきの写真にあった背の低い人か
清水さんの言ってた戻ってくるっていう部員さん。
「お、これ俺の!なんだ用意してくれてたのか?」
『…………………清水、さんが―…』
「潔子さんっ」
ロッカーの中を見て涙ぐむこの人を眺める。
よくわからないけど、この人の清水さんに対する反応はきーちゃんのテツくんというか、姉のテツくんというか
どっちにしろどうでもいいことなんだけど
「だがしかし!俺は戻るわけには行かねぇ!」
すみません!潔子さん!
ばんっとロッカーを閉めて扉に向かう。
振り返った目が真剣だ。
「悪いな!じゃあまたな!」
『…………………あ、…はぁ』
なんだろう。よくわからない人だ。
結局名前聞いてない。
ロッカーの名札入れに入ってる紙には西谷 夕と書いてあった。
昨日もしっかり眠れず、今日も眠い。
ホームルームを右から左に流し鞄を持って立ち上がった。
『……………なん…で?』
「いいからお前も一緒に来い」
ぐいっと引かれた手にぼーっと先を歩く黒髪を眺めて周りを見る。階段を登り、他学年の階に入った。
ここは二年、…三年の階層?
後ろから駆け足に階段を上がってくる音がして、日向くんが顔をみせた。
「あれ?桃井も来たんだ!」
来たって何をだろう。ぼーっと二人を眺めていると短い口論を続けてた。理由も言わずに連れてきたくせにこんなところで喧嘩するなんて。
ふと思ったけど、この二人の競技以外で馬のあわない感じはテツくんと―ちゃん、もしくはきーちゃんと――を思い出す。
「なんでお前知らねぇんだよ!」
「か、影山だって知らないじゃん!」
「旭!」
二人の喧騒をも掻き消すような声に顔を上げた。
その先には教室から出てきた菅原さんと部長さん、それと引き止められてるっぽい高身長の先輩。
「あ、あの人かな?!」
「旭って呼ばれてたし、多分そうだろ」
向こうの様子をうかがってる日向くんと影山くんはすっかり俺のことは忘れてるようだ。
はぁ、解せぬ。
来た道を戻って部室に足を進める。
「あ、桃井」
さっさっ、あ、違う、てけてけ…とてとて?と小走りで近づき隣に並んだ清水さん。
「少し、話ししてもいいかな?」
『………………―かま、い…ません』
手を引かれて連れてかれた先は何故か女子更衣室。こっちと招かれて躊躇してる間にまた手を引かれて中に入った。促された先にあるベンチに座る。
部屋の中は男子とさして変わらないように見えた。
『…………………―あ…の、―俺ここ―はい、たら―駄目―じゃ……?』
「男子のほうじゃ誰に聞かれるかわからない、それに女子は私だけだから誰も来なくて丁度いいんだ」
いつだか日向くんに返したみたいに気の抜けた返事をして立ったままの清水さんを見上げる。
背中を向けてロッカーをいじってた清水さんが振り返って向かいに座ると写真を差し出して見てと言われる。
写真は昨日見た西谷さんのロッカーに飾ってあったのと同じだ。
「これ、去年の先輩たちと引退直前にみんなで撮ったの」
どんな先輩なのか、俺は知るわけもないけど清水さんの穏やかな様子からすると良き先輩だったのかな。
ほんの少しだけ、最近連絡もとってない“渡米した先輩”がチラついて元気にしてるのかとかセンチメンタルになる。
「前に座ってるのは前任の監督と先輩で、こっちに固まってるのが澤村、スガに田中に縁下、成田、木下―…」
淀みなく指して名を呼んでた口が閉ざされて指先が震えた。
残りは二人。
見たことのあるようなないような、背の高いその人と、飛びはねて笑顔を向ける人。
『………………にし―やさん、と……あさひ―さん、でした、け?』
「!」
ぱっと顔を上げた清水さんは驚いてるのがよく伝わってくる。
別に驚かせたいわけじゃなかったんだけど
『……………………き…の、う…お、あい―ました。』
「そうなんだ。」
短い沈黙。
練習を始めたのかグラウンドから部活に勤しむ生徒の声が聞こえてきてた。
清水さんは俺に何を話す気でここに連れてきたのか
「……桃井の言うとおり、こっちが旭…東峰で、こっちは西谷。二人共うちのバレー部。」
昨日、時間がなくてあえなく断念した情報集めの少ないそれに、たしか、烏野にはウィングスパイカーの東峰 旭さんとリベロの西谷 夕さんがいるとあった。
あ、さっき東峰さんのこと旭って言っちゃった。先輩に当たるのに無礼だったかもしれない
「今はちょっといないけど…もし、バレー部に顔出したらよろしくね?」
『………………―わか、りました―…?』
西谷さんと初めて会って、東峰さんをチラ見した日から2日経った。
こみ上げてきたあくびを噛み殺して扉を開ければ誰よりも早く来てたのか西谷さんがボールを壁に叩きつけては拾ってる。
『……………おはよ―ござ、います』
「ん?おお!桃井!おはよっ!」
すっかり女子と間違えられてた俺は田中さんの尽力によってようやく男と認められた。
この身長で女子と間違えられる俺ってなんたんだろうな…
一礼して体育館の床を踏む。
朝の冷たい空気に混じってゴムや埃のこもった匂いがした。
「あ、桃井ちょっと練習付き合ってくれ!」
『………………え、あ、はぁ』
キラキラした目がなんだかきーくんみたいで断りづらい。
頷いてしまったからには手伝うしかない。初心者同然の俺に何をさせる気なのか
「俺が拾うから桃井はばんばん打って!」
超絶アバウト。
ゆるく頷いて、ようは練習の始めにやってる反対コートから打ち込まれたやつを拾うやつの真似事をすればいいんだろう
からからボールの入ったカートを持ってネットを挟んだ向こう側に立つ。
『…………………いき、ます』
「おー!どんどんこーい!」
緑と白と赤のラインが入ったカラフルなボールを高く上げて、ジャンプして斜め上から叩きつけるように隣のコートに入れる。
見よう見真似じゃ狙ったとおりの場所にいかなかったけど、西谷さんは安定してレシーブした。
「ぬぉ?!桃井力強っ!」
『………………いちお―男です、し』
「なるほどな!よし!ばっちこーい!」
またボールを上げて打ち込む。
さっきよりは狙った場所にいくようになったボールにほんの少しだけ達成感が湧き上がった。
茶色くて硬いボールは嫌いじゃないけど、両手間で翻弄したりついたりしないこのボールも嫌いじゃないかもしれない。なによりも、一人一人の役割が決まってて、一人じゃ点が取れないなんて大きな違いが新鮮だ。
「っ、もう一本!」
『………………………』
促されるまままたボールを放り上げて叩きつけた。
十本、二十本、三十本。
何十本目かは忘れたけど、西谷さんのレシーブにブレが見始めた。
この人、右側のレシーブのとき体重が普通より左に置かれたままだ。
わざともう一本、同じように右を狙ってそのあとも右に打つ。
「っ、はぁ、」
伝った汗を拭う西谷さん。時計を盗み見るともう二十分は経っていて扉のほうにはいつか来たのか汗を拭ってる日向くんと影山くんがいる。
「こい!」
促されるままボールを上げて打ち付けた。
「ロぉぉぉリングさんだぁあ!」
声の大きさの割に静かにレシーブされたボールを走りこんできた影山くんがトスして、跳んだ日向くんがスパイクを打った。
「お、おお、早いな!」
「おはざいますっ!」
「はざっす!」
賑やかになり始めた向こう側に目を向けてからそこら中に転がるボールを拾ってはカートに戻す。
「桃井ー!ありがとな!」
顔を上げてから首を横に振って頭を下げまたボールを拾い始めた。
寝不足でクラクラするかも
.
ただいまAM.5:40、体育館前。とても眠い。
最近寝不足がひどいのに早起きは酷だ。誰か助けてくれ。寝不足で寝ぼけてる俺を気にせず世の中は進むんだから酷い。
ああ、無常っていうやつだ。
体育館の鍵を開けて体育館に入れば当たり前ながら一番乗りで息を吸った。
この間の青葉城西との試合後、露呈した一年のレシーブ能力の低さが強化対象になった。その日以降及川さんからくるLINEは気が向いたら程よく返してる。もう直接は会いたくない
けどそのLINEのおかげで知ったことかある。
バレーも夏の大会はIHというらしい。聞けば開催時期もかぶってる。
現在俺の所属は烏野高校排球部マネージャーで優先はバレーになって資料まとめをしてるところだった。バスケは趣味の範囲、もう公式に出ることもないし。そう入れたらめちゃくちゃ反応がうざかったから通知を切ってしまった。夜、時間のあるときにゆっくり見よう。
「桃井!桃井!見てみて!!」
『………………………あ…うん、み―た。』
もう何度目になるか、黒いジャージと試合用のオレンジのユニフォームを聞きとして見せてくる日向くん。
本当にやりとりなんなのかな
「桃井、ちょっといい?」
清水さんが助け舟のつもりはないんだろうけど話しかけてきて着いて行く。
職員室に資料を取り行くのを手伝ってとのこと
「今日、戻ってくる部員がいるの。だから手続き書とユニフォーム、全部持って行かないと」
『……………―わかりま、した…もち、ま―す』
渡された荷物全部を両手に持ち、清水さんは職員室に別件があると残った。
一足先に言われたとおり部室に向かう。
朝練の開始してるこの時間、俺が部室に行くのは荷物をいたら本人に、いなければロッカーにつっこんでおくため。
騒がしい気のする体育館を過ぎて部室に入れば誰もいなかった。
歩いて言われたロッカーに立つ。開いた中には何もない荷物、けど扉に写真が貼ってあった。いつのものかはわからないけど記憶にない人たちが写ってる写真は先代バレー部の集合写真なのか。前には見たことのない人たちが、後ろのほうには部長…じゃないかこの時は、澤村さん、菅原さん、田中さん、縁下さん、木下さん、成田さん、見たことのない背の低い人と、高い人、コーチらしいおじいさん。
盗み見してても仕方ないからと荷物をぐちゃぐちゃにならないよう詰める。
扉が開いた。
「え、あ!女子?!」
『…………………―あ、うん…違う…、?』
日向くんより小さい身長が一人。
立った髪は跳ねてるけど、顔はすごく童顔で中学の時の“赤い主将”みたいだ。
「わ!すごい美人!…潔子さんの友達か?」
不思議そうに首を傾げられる。
この人はさっきの写真にあった背の低い人か
清水さんの言ってた戻ってくるっていう部員さん。
「お、これ俺の!なんだ用意してくれてたのか?」
『…………………清水、さんが―…』
「潔子さんっ」
ロッカーの中を見て涙ぐむこの人を眺める。
よくわからないけど、この人の清水さんに対する反応はきーちゃんのテツくんというか、姉のテツくんというか
どっちにしろどうでもいいことなんだけど
「だがしかし!俺は戻るわけには行かねぇ!」
すみません!潔子さん!
ばんっとロッカーを閉めて扉に向かう。
振り返った目が真剣だ。
「悪いな!じゃあまたな!」
『…………………あ、…はぁ』
なんだろう。よくわからない人だ。
結局名前聞いてない。
ロッカーの名札入れに入ってる紙には西谷 夕と書いてあった。
昨日もしっかり眠れず、今日も眠い。
ホームルームを右から左に流し鞄を持って立ち上がった。
『……………なん…で?』
「いいからお前も一緒に来い」
ぐいっと引かれた手にぼーっと先を歩く黒髪を眺めて周りを見る。階段を登り、他学年の階に入った。
ここは二年、…三年の階層?
後ろから駆け足に階段を上がってくる音がして、日向くんが顔をみせた。
「あれ?桃井も来たんだ!」
来たって何をだろう。ぼーっと二人を眺めていると短い口論を続けてた。理由も言わずに連れてきたくせにこんなところで喧嘩するなんて。
ふと思ったけど、この二人の競技以外で馬のあわない感じはテツくんと―ちゃん、もしくはきーちゃんと――を思い出す。
「なんでお前知らねぇんだよ!」
「か、影山だって知らないじゃん!」
「旭!」
二人の喧騒をも掻き消すような声に顔を上げた。
その先には教室から出てきた菅原さんと部長さん、それと引き止められてるっぽい高身長の先輩。
「あ、あの人かな?!」
「旭って呼ばれてたし、多分そうだろ」
向こうの様子をうかがってる日向くんと影山くんはすっかり俺のことは忘れてるようだ。
はぁ、解せぬ。
来た道を戻って部室に足を進める。
「あ、桃井」
さっさっ、あ、違う、てけてけ…とてとて?と小走りで近づき隣に並んだ清水さん。
「少し、話ししてもいいかな?」
『………………―かま、い…ません』
手を引かれて連れてかれた先は何故か女子更衣室。こっちと招かれて躊躇してる間にまた手を引かれて中に入った。促された先にあるベンチに座る。
部屋の中は男子とさして変わらないように見えた。
『…………………―あ…の、―俺ここ―はい、たら―駄目―じゃ……?』
「男子のほうじゃ誰に聞かれるかわからない、それに女子は私だけだから誰も来なくて丁度いいんだ」
いつだか日向くんに返したみたいに気の抜けた返事をして立ったままの清水さんを見上げる。
背中を向けてロッカーをいじってた清水さんが振り返って向かいに座ると写真を差し出して見てと言われる。
写真は昨日見た西谷さんのロッカーに飾ってあったのと同じだ。
「これ、去年の先輩たちと引退直前にみんなで撮ったの」
どんな先輩なのか、俺は知るわけもないけど清水さんの穏やかな様子からすると良き先輩だったのかな。
ほんの少しだけ、最近連絡もとってない“渡米した先輩”がチラついて元気にしてるのかとかセンチメンタルになる。
「前に座ってるのは前任の監督と先輩で、こっちに固まってるのが澤村、スガに田中に縁下、成田、木下―…」
淀みなく指して名を呼んでた口が閉ざされて指先が震えた。
残りは二人。
見たことのあるようなないような、背の高いその人と、飛びはねて笑顔を向ける人。
『………………にし―やさん、と……あさひ―さん、でした、け?』
「!」
ぱっと顔を上げた清水さんは驚いてるのがよく伝わってくる。
別に驚かせたいわけじゃなかったんだけど
『……………………き…の、う…お、あい―ました。』
「そうなんだ。」
短い沈黙。
練習を始めたのかグラウンドから部活に勤しむ生徒の声が聞こえてきてた。
清水さんは俺に何を話す気でここに連れてきたのか
「……桃井の言うとおり、こっちが旭…東峰で、こっちは西谷。二人共うちのバレー部。」
昨日、時間がなくてあえなく断念した情報集めの少ないそれに、たしか、烏野にはウィングスパイカーの東峰 旭さんとリベロの西谷 夕さんがいるとあった。
あ、さっき東峰さんのこと旭って言っちゃった。先輩に当たるのに無礼だったかもしれない
「今はちょっといないけど…もし、バレー部に顔出したらよろしくね?」
『………………―わか、りました―…?』
西谷さんと初めて会って、東峰さんをチラ見した日から2日経った。
こみ上げてきたあくびを噛み殺して扉を開ければ誰よりも早く来てたのか西谷さんがボールを壁に叩きつけては拾ってる。
『……………おはよ―ござ、います』
「ん?おお!桃井!おはよっ!」
すっかり女子と間違えられてた俺は田中さんの尽力によってようやく男と認められた。
この身長で女子と間違えられる俺ってなんたんだろうな…
一礼して体育館の床を踏む。
朝の冷たい空気に混じってゴムや埃のこもった匂いがした。
「あ、桃井ちょっと練習付き合ってくれ!」
『………………え、あ、はぁ』
キラキラした目がなんだかきーくんみたいで断りづらい。
頷いてしまったからには手伝うしかない。初心者同然の俺に何をさせる気なのか
「俺が拾うから桃井はばんばん打って!」
超絶アバウト。
ゆるく頷いて、ようは練習の始めにやってる反対コートから打ち込まれたやつを拾うやつの真似事をすればいいんだろう
からからボールの入ったカートを持ってネットを挟んだ向こう側に立つ。
『…………………いき、ます』
「おー!どんどんこーい!」
緑と白と赤のラインが入ったカラフルなボールを高く上げて、ジャンプして斜め上から叩きつけるように隣のコートに入れる。
見よう見真似じゃ狙ったとおりの場所にいかなかったけど、西谷さんは安定してレシーブした。
「ぬぉ?!桃井力強っ!」
『………………いちお―男です、し』
「なるほどな!よし!ばっちこーい!」
またボールを上げて打ち込む。
さっきよりは狙った場所にいくようになったボールにほんの少しだけ達成感が湧き上がった。
茶色くて硬いボールは嫌いじゃないけど、両手間で翻弄したりついたりしないこのボールも嫌いじゃないかもしれない。なによりも、一人一人の役割が決まってて、一人じゃ点が取れないなんて大きな違いが新鮮だ。
「っ、もう一本!」
『………………………』
促されるまままたボールを放り上げて叩きつけた。
十本、二十本、三十本。
何十本目かは忘れたけど、西谷さんのレシーブにブレが見始めた。
この人、右側のレシーブのとき体重が普通より左に置かれたままだ。
わざともう一本、同じように右を狙ってそのあとも右に打つ。
「っ、はぁ、」
伝った汗を拭う西谷さん。時計を盗み見るともう二十分は経っていて扉のほうにはいつか来たのか汗を拭ってる日向くんと影山くんがいる。
「こい!」
促されるままボールを上げて打ち付けた。
「ロぉぉぉリングさんだぁあ!」
声の大きさの割に静かにレシーブされたボールを走りこんできた影山くんがトスして、跳んだ日向くんがスパイクを打った。
「お、おお、早いな!」
「おはざいますっ!」
「はざっす!」
賑やかになり始めた向こう側に目を向けてからそこら中に転がるボールを拾ってはカートに戻す。
「桃井ー!ありがとな!」
顔を上げてから首を横に振って頭を下げまたボールを拾い始めた。
寝不足でクラクラするかも
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