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僕の学園遊戯
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テンプレな“あくじょ”というやつに嵌められてから早一ヶ月。
俺を取り囲む環境は一変してしまった。
無視、罵倒、暴力、持ち物の紛失、破損、etc
今日も朝から準備室に閉じ込められ、昼休みは体育館裏に呼び出され、放課後は屋上に呼び出された。
「お前なんでまだ学校来てんだよ」
「美心(ちゅらら)が怖がってんだろ!」
「だ、大丈夫、私は…」
「無理しないでください」
「ほら、後ろにいてな」
向日と宍戸に守護され鳳と忍足の後ろに隠された女子生徒が下を向いてほくそ笑んだ。
つけ睫毛3枚重ね、ヘアブロー推定平均1時間20分の放課後でもばっちりなパーマ、ロゼカラーに染められた髪は毛先だけ痛んで色が抜けピンクっぽい。
美心と書いてちゅららと読むらしい。どきゅーんだ
これで彼女を好いてるテニス部レギュラーの方々は勿論、一部を除いたクラスの男子女子は清楚系だと持て囃すんだから、大多数の人の感性と僕はずれてるかなって思う。
「なんとか言えよ!」
宍戸に肩が掴まれどんと壁に押し付けられた。
肩の表面からじーんと伝わってくる痛みに口元が歪みそうになるのを抑える。
『…僕は…―ぐっ』
「耳障りだから話すな」
鳩尾ではなく腹へ拳が入れられ言葉が途切れた。
掴まれた肩に指が食い込んでて局部的に痛む。
「美心に謝れよ!」
突き飛ばされふらついたところに向日の飛び蹴りが後ろから入れられ前のめって無様にコンクリートの床に転けた。
咄嗟についた掌を擦りむく。
広範囲に痛い。
「なに平気な顔して学校来てんだ?美心はあんなに傷ついてんだぞ!」
転けた僕に追い討ちをかけるように腹部へ蹴りがいれられた。
吹っ飛ぶほどじゃないけど痛い。
下からの蹴りから踏みつけるに変わった打撃は背中を容赦なく痛め付ける。
「クズがよ!」
「美心襲うなんて最低だ!」
ここ一ヶ月聞き続けた雑言は心の表面を蝕む。
痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い
背中と腹部への打撲で感覚が麻痺する。
痛みと罵声がしめる頭の中、扉の開く音がした。
背中に降りそそいでいた攻撃が止まる。
顔を上げて見れば跡部が冷えきった目で僕を見つつ口角を上げた。
「まだやってるのか」
冷たく言い放たれた言葉は心を抉る。
ああ、痛い
「跡部は酷いなぁー」
忍足はいたって冷静そうに笑いを押さえきれていない嘲笑を含ませた目を僕に突き刺した。
向日と宍戸の嘲た笑い声と、鳳の後ろに隠れてる女子のざまぁみろって歪んだ顔が僕に刺さり、抉り、
あと……―――
跡部の後ろの扉が開いて、僕は目を見開いた。
「誰だお前」
嘲笑してた跡部が眉間に皺を寄せ入ってきた赤髪を睨み付ける。
鳳の後ろの女子は童顔気味な美形に目を輝かせてた。
「まったく…本当に馬鹿なのか?こんなことになってるなんて、だから一緒の学校に来いと言ったんだ。」
長くはないけど目にはかかる程度の赤い前髪が吹いてきた風に靡き舞う。
普段涼しげな表情か魔王みたいな顔をしてるのに、今日は眉間にうっすら皺を寄せてた。
単細胞な向日と宍戸、鳳は後ろに隠れてる女子のことを守るように一歩前に出て壁を作る。
僕はもう眼中にないみたいで、今は自分達より幾分目線が下にある赤髪を睨み付けてた。
忍足と跡部は訝しげにしてる。
「ほら、迎えに来たから帰ろう」
「!てめ、美心を!」
怒り心頭な向日が眉をつりあげ赤髪に掴みかかろうと手を伸ばす。
「なんだ。僕の行く手を阻むだなんて…頭が高いぞ」
向日は後ろに尻餅をついて赤髪を見上げた。
周りは表情の色を驚愕に染めてる。
本日のズガタカだ。
赤髪は彼らに一瞥もくれずに僕の目の前に立ち片膝をつく。
「さぁ、帰ろうか」
笑顔の中に怒りを滲ませて手を伸ばした。
「…―てめ、そのクソの仲間かよ」
宍戸が眼光鋭く睨み付ける。
赤髪の左右色の違う目が冷めた。
「口には気を付けろ。次に僕とコイツを侮辱や侮蔑を交えた言葉を聞いたら……」
「は、なんだ?お前も美心襲うのか?」
「やっぱ明石(アカシ)の知り合いはカス―――…」
明石っていうのは僕の名前だったりする。
向日の言葉が途切れたのは無理もない。
頬すれすれに鋏が飛んできたんだから
宍戸にいたっては避けるさいに重心が後ろになりすぎて尻餅をついてる。
「言葉に気を付けろとわざわざ僕が警告をしてあげてたのに言葉を遮り無視したね。僕に逆らう奴は親でも殺すぞ」
瞳孔が開き気味な赤髪が、二人に投げられた赤のとっての鋏と同じ鋏を突きつけるように持って不敵に笑った。
ボクサカオヤコロをいただきました。
「……鋏投げてくるなんて危ないなぁ、自分明石の知り合い?」
「だったら何だい?ほら、トウ、いい加減に帰るぞ」
僕の右手を掴み引っ張りあげようとしたセイくんの手を払った。
急に動いたせいで蹴られて蓄積した痛みが身体中に走る。
『――――のに……』
ぎりっと奥歯を噛み締めた。
僕の行動にセイくんは一番にため息をついて、テニスレギュラー陣は目を丸くしてた。
そりゃ、僕は滅多に反抗しないし話さないし大人しいし。だけど、邪魔されるのは、セイくんでも許さない
『あとちょっとだったのに何で邪魔するの…っ』
「僕は人のことをとやかく言うつもりはないが…、その“性癖”は治すべきだ」
ばっと顔を上げればセイくんは呆れ返って息を吐いてる。
『治せるわけないでしょ…部活どころかクラスからも無視と罵倒、陰湿な嫌がらせに時にはリンチ…生傷が絶えないよ……っ――最高じゃないか!』
「………は?」
間抜けな声を上げたのは誰だったか
いい機会だからと矛先を向ける。
『僕の体に放たれる宍戸の重い蹴り!邪気ありの向日の罵倒!僕を見下してくる鳳の冷笑と忍足の嘲笑!
極めつけはあの跡部の侮蔑に満ちた冷たい視線!!僕を罵るわけでも痛め付けるわけでもなくだ!あんなのが中三なんだよ!?世の中は広いんだね!知らなかった!ここは天国だよ!!』
騒ぐ度につけられた傷が痛みを発して興奮する。
つけられた痛みを思い出すと更に息が上がった。
『ほら!あの罵声が!殴打が!たぎるねっ!
僕はここに聖地を見つけたんだ!』
「トウ、鼻血」
ティッシュを押し付けながら鼻がつままれ息苦しくて痛くて笑みが溢れる。
『興奮しすぎちゃったみたい!セイくんもっと痛くしていーんだよ!』
「そんなんだから彼奴らは付け上がる。いい加減に君は怒ったらどうだ」
ぐいっと鼻にティッシュをつめたセイくんは手付きが荒くて怒りが隠せてない。
『え?なんで怒るの?僕は快楽が無償で目一杯与えられるこの状態が至福で堪らないんだけど?』
セイくんがむっとする。
テニスレギュラーたちは我に返って僕を睨み付けた。
んー、ああ、あの侮蔑の目、最高
「ぐだぐだ言っているが、明石が美心を襲ったのは事実だ」
俺様跡部が腕を組み仁王立ちして見下す。
周りもそうだと言わんばかりに僕を睨んでた。
気持ちいいけど大分慣れてきちゃったかな
「ほう?トウがそこの女を襲っただなんて戯れ言を信じたお前らは下等だな。やはりこんなところに進学させるんじゃなかった」
「てめっ、美心が傷ついてんのに最低だな!」
「最低なのはどう考えてもそちらでしょう」
透き通るような透明で柔らかな声が響いて僕とセイくん以外は肩を跳ねさせた。
水色の髪は空に溶け込むように最初からそこにいて、持っていた携帯を操作して跡部たちに聴かせるように持ち上げた。
「ほーんと、テニス部もクラスの男子もちょろいよねー、いいのは顔だけじゃん。明石の奴も最初から私の言うこと聞いてればいーのに逆らうから痛い目みるのよ。顔だけはいいから誘ってあげたのに拒絶するなんて信じらんない。そんなんだから今まで付き添ってきてたレギュラーどもに苛められんのよ。いーきみ」
誰かと喋ってるのかぺらぺら顛末を話してる女子の声にレギュラーたちは目を見開いた。
「愚かですね。三年間尽くしてくれた藤十郎くんではなく、出会って一ヶ月足らずの人を貶めることでしか持て囃される方法をしらない低能の女子を信じるなんて。
藤十郎くんが好んでこの状況を作り出したのはわかっていますが、僕は絶対に許しません」
『あ!テツくんが悪女ブレイクしちゃったよ。そろそろ飽きてきてたから僕が録音しといたやつ担任と教育委員会とマスコミに持ってこうと思ってたのにつまんないな!……だから罵ってテツくん!』
「気持ち悪いですよ」
『はぅ』
「なにがだからなのかはわかりませんが君ならちゃんと証拠を持っていると思いました。最初から提示してください、こっちは心配なんです。悦に入らないで話を聞きなさい」
右から左に言葉を流しつつテツくんの声に心を踊らせる。
ミステリアス、寡黙、ポーカーフェイスな彼もやっぱり怒ってるみたいで僕の耳を引っ張る力が強い。
『ああ、静かな言葉攻めはやっぱりテツくんが一番だね。そろそろ新しい録音ほしかったからご馳走様です!』
すっかり癖となって身に付けてる盗聴器。録音は色んなところで役に立つ。
今頃音源は僕のパソコンに転送されて保存されてるだろう。
寝る前に聞こう
「な、なによその録音…」
顔面蒼白な女子と、事実に怒り、焦り、欺瞞を浮かべたテニレギュ陣。
「美心、あれはなんなん?」
「あ、あんなの私知らない!酷いよ明石くん…っ!」
女子から続けられる言葉は真実0%の僕をけなす言葉だけ。
わぁぁ、セイくんたちの目が怖い!その視線にしびれるぅ
「っ、根暗で冴えないくせに私の言うこと聞かないのがいけないのよ!」
化けの皮がはがれちゃった。
案外堪え性ないね
僕は三年間被ってたんだけどな
気づいてた忍足は愉しそうに、跡部と気づいてしまった鳳は僕を見れず、向日と宍戸は唖然してる。
「さて、幾ら低能で下等な奴らでももう過ちには気づけたか?」
セイくんの魔王スマイルを直視した向日が短く息を吸った。
「あ、明石さっ」
「まず一つ、トウは明石じゃない。赤司だ。漢字を変えたのは父とトウの悪ふざけだ」
「二つ。藤十郎くんは赤司くんの双子の弟で地毛は赤髪です。なに勝手に染めてるんですか」
『えへへ!僕藍色好きなんだよね!』
「僕と同じ赤髪は嫌なのか?」
前髪が掴まれて2cm伸びて根元が赤色な頭髪が目立った。
「…赤司?――まさかお前」
跡部が僕とセイくんを見比べて合点がいったみたいに目を見開く。
「あか―……」
「はーい、時間切れだよー」
場違いに間延びした低い声と扉が開く音にセイくんとテツくんが悪魔みたいな笑いを作った。
「こっちは済んだぜ」
「こちらも終わったのだよ」
「俺んとこも終わりっス☆」
「残りはそいつらだけだな」
次々と報告しながら屋上に足を踏み入れてくる。
視界を彩る紫、青、緑、黄……
『ショゴくん!心の友よー!』
最後に入ってきた灰に両手を広げて近づいていけば脛に蹴りをいただいた。
『ぁん。きもちい!』
「相変わらずきもちわりぃな」
それ以上近づくなと頭がわし掴まれて距離を取られた。
残念だけど掴む力が強めで気持ちいいからおkだぉ!
「時間のようですね。」
テツくんの静かな声にテニレギュは一歩後ずさった。
「赤司藤十郎に…いや、明石藤へした行動を、かけた言葉を、その身で償え。全ては無能な自らの行いだ。精々悔やめばいい」
察しのよい女子は扉から逃げようとしたけどアツくんが扉は塞いでた。ダイくんとショゴくんが次々とレギュ陣を気絶させていく。
女子と跡部はシンくんとリョウくんによって気絶させられた。
「少し離れるから任せるよ」
全員気絶して静かになった屋上はさっきまで吹いてた風も止んでた。
セイくんがシンくんだけじゃなくて皆に聞こえるよう声をかける。
「トウの服を着替えさせないとね」
「全くだ。そんな貧相な格好で隣に立たれても迷惑だ」
『わぁ!シンくんもっと!罵って』
「いーからとっとと着替えてこいっつーの」
ダイくんの拳骨とショゴくんの背中へのハイキックをもらって、セイくんと手を繋ぎ屋上を出た。
静かな校内は時々呻き声やすすり泣きが聞こえてて微妙に不気味だ。
「トウ。明日からは帝光に通え」
『この遊び折角楽しかったのにセイくんはいつも終わらせちゃうね』
砂と血と埃っぽい氷帝学園のブレザーを廊下に捨て、セイくんから渡された白のブレザーを羽織った。