DC 原作沿い



『裏切り者ばっかなんだけど!!』

ぷんぷんと効果音が出ているようにしか見えないパリジャンの表情に、ええ、まったくですねと息を吐く。

パリジャンがアイリッシュに連れられて海外に旅行していたのは知っている。パリジャン本人がお土産なにがいい??とにこにこして僕達に問いかけていたのは記憶に新しい。

行く場所も帰ってくるまでの期間も知らないけど!とパリジャン特有のお気楽さと適当さで楽しみ〜!!とスキップしていたパリジャンに、話しかけられた僕は食べ物以外を指定したし、ライは酒か煙草と伝えてた。

『せっかくアイくんと動物園いる最中だったのにジンくんから怒りの連絡来るし!最優先で帰ってこいってひどくない!!?』

明日は美術館だったんだよ!と頬をふくらませるパリジャンに、こいつ観光を満喫してたんだなと気を遠くしてしまいつつ、そうですねとまた頷く。

お土産!といきなり僕の前に現れてそのまま車に乗り込んだパリジャンは助手席でおしゃべりを始めた。

どこに向かえばいいかもわからず、仕方無しに車を適当に走らせて、パリジャンの話に相槌を入れて。かれこれもう一時間は怒っているパリジャンに小学生の相手をしている気分になってくる。

『俺が探し者してる間にアイくんも呼ばれてお仕事行っちゃったし!明美ちゃんと志保ちゃんは何も知らないし!』

「おや、宮野姉妹は無関係と断定なんですか?」

『うん!直接お話したけど知らなかった!』

「それは…なるほど」

仕事スタイルのパリジャンの恐ろしさを俺はまだ見たことはないけれど、噂通りであるのなら一介の人間が目にして正気でいられるとは思えない。

あの日、言葉を少し交わしただけでも殺意と恐怖を覚えたそれを、あれだけ仲の良い相手にも行ったのだろうかと、本当にこいつは彼奴なのかと視界がぶれたところでハンドルをきり、高速道路を下りる。

今度は一般道路を使って、来た方向に戻るように車を走らせる。

「ライの行方は知れずですか?」

『んー?うん。俺がいたときならまだしも、ライくん逃げて二日以上経ってるし、FBIだったならどっかで隠れちゃってるんじゃない?』

「さすがの貴方でも探し出せませんか」

『近くに居るときならいいんだけどね〜』

同じ国には居ないと見つけても間に合わないよーと零す姿に、ハンドルを握る手に力が入って、すぐに緩める。

「ではライの捜索は終わりですか?」

『う〜ん。どーだろ』

「どうとは?」

『ジンくんが怒ってるから』

「ジンがそこまで?」

『うん。なんかよくわかんないけどすんごく怒ってる』

なんでだろーねーと首を傾げる隣人は心当たりがないらしい。

あいにくと俺もジンとライの確執は聞いたことはなくて、一般道路故に存在する信号が黄色になったから速度を落として静かに一度停車した。

「お二人と仕事内でのトラブルですかね?」

『そうかも?』

本当になにも知らなそうなパリジャンはこてりと傾げていた首を元に戻して、やれやれと息を吐く。

『こんなことなら最後一緒に仕事したときに話聞いとけばよかったや』

「おや、ライと仕事があったんですか?」

『ん?うん。アイくんと旅行のちょっと前くらいに?』

「へぇ。貴方とライが…」

『片付けの仕事だったから思ったより早く終わって、ご飯でも行こうかーってなったからご飯食べ行ったんだよね』

「、二人で?」

『うん。ライくんがおすすめのごはん屋さんあるからってバーみたいなところ行って、そこで食べたお肉すごく美味しかったし、お酒も美味しかったんだけど、美味しすぎて食べ過ぎちゃって』

「……………」

『眠くなっちゃったところでライくんが抱えて運んでくれて〜』

みしりと音を鳴らしたハンドル。視界の端で青色に変わった信号にアクセルを踏んで、静かに進む。

『寝ちゃったっぽくて気づいたらお家だったんだけど、ライくんじゃなくてジンくんが部屋にいて、……あ!もしかして俺がライくんと遊んで門限破りかけたから怒ってるのかも?!』

「………なるほど」

『でもそれ俺が悪いからジンくんがライくん怒る必要なくない…??』

どう思う?と首を傾げる無防備な姿にハンドルは悲鳴を上げていて、赤色に光る信号にそっと速度を落として車を停車させたところで手を伸ばす。

中指を折り曲げて、親指で支え、額に寄せたところで弾けばバチンと音が響いた。

『いったぁ〜!???え!!?なに!!!??』

「警戒心が薄すぎる残念な上司への喝です」

『なんで??!』

「貴方、忘れてますけど彼奴はFBIでNOCだったんですよ。そのときに何か盛られてたり、殺されてるかもしれないじゃないですか」

『俺ある程度の毒は耐性あるし、さすがに死にそうになったら目ぇさめるもん…!!』

「まったくもって信用できませんね」

『どうしたら信じてくれるの??!』

「少なくともこんなに簡単に僕に額を差し出してる時点で無理です」

『だってバボくんは俺にひどいことしないもん〜!!』

「………、はぁ」

涙目で額を押さえながら騒ぐ姿にため息をつくことで視線を外してまたアクセルを踏む。だいぶ離れてしまっていた拠点方面につけて、進路を変えた。

「まぁジンがライを目の敵にしてる理由はジンのみぞ知るということですね」

額をさすって、そうだね〜なんて頷く姿にもう一度ため息をついて、今度は寄り道をせずにまっすぐ道を進んでいく。

あと少しでこいつの家というところで車を止めて、隣を見た。

「貴方、本当にライとはなにもなかったんですよね?」

『んぇ?寝てたあいだのことなんてわからないよ…!』

「…それもそうですね」

本当に心当たりのなさそうな姿に諦めて、扉のロックを解除する。扉を開けて降りたと思うと、振り返って俺と目を合わせた。

『バボくん!元気で!またね!』

「、ええ。貴方も体調にはお気をつけて」

『ありがと!』

扉を閉めてさっさと家に入っていく後ろ姿を見送る。

なにか違和感があって、けれどそれがなにかはわからない。

口を開いて、閉じて。また言葉にならなかったそれを飲み込んで、アクセルを踏み直した。


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