イナイレ
佐久間の語学力と基山の翻訳力。それから不動の読解力を駆使したことにより、なんとかセンタリングからシュートを打ち込む動作までは進めるようになった。
「何故こんなにもタイミングがあわない…?」
『速さがあってねぇから?』
「その速さが毎回バラバラなんだ!」
『バラバラって言われてもなァ…?』
感覚で打ち込んでる俺に対して、リズムとか角度とか今更言われても困るところで、基山と不動がそれぞれ表情を変える。
「本来なら栄垣くんにもう少し話を聞いてみたいところだけど…」
「流石に次の試合相手と仲良くしすぎるべきじゃねぇだろ」
「そうなんだよね…」
後2日もすればようたのいるイタリアとの試合で、相手チームだと理解しているからこそ声をかけづらそうな三人に、ここで呼ぶか?なんて聞いた日には道也と風丸のお説教がとんできかねない。
あいつらすぐ怒るんだよなぁとリフティングして遊んでいれば、ずきりと膝が痛んで、感覚がぶれた瞬間にボールが転がっていった。
『っ…』
霞かけてる右目だけで視界を確認する。作戦会議に盛り上がっている四人は俺に気がついていないから、ふらつきながら近くのベンチに腰掛けて、歯を食いしばる。
痛い、寂しい、怖い。嫌な感情がぐるぐる回ってて、気持ち悪い。
「大丈夫、大丈夫」
優しく、背が撫でられる感覚。かけられる声と手のひらにすっと痛みが和らいでいくから呼吸を繰り返して、落ち着いたところで少し顔を上げる。
『か、まる…?』
「ああ。…見えてるか?来栖」
『…ん』
「そうか」
とんとんと心拍に合わせるように叩かれる背中に息を吸って、吐いて、視界の霞みの一因になってる涙を拭ったところで顔を上げれば手が離れた。
「具合はどうだ?」
『…別に』
「まったく…そんなに悪いなら、しばらく安静にしてたほうがいいんじゃないか?」
『…………』
風丸にはなんて答えたって筒抜けで、少し考えてから首を横に振った。
『まだ平気だ』
「そうか。なら我慢できなくなったらちゃんと言うんだぞ」
『……わかった』
「いい返事だ」
とんっと最後に背が叩かれて、ほらとボトルが差し出される。
「遊ぶのはいいが、水分補給を忘れるな」
『はいはい』
「はいは一回」
受け取ったボトルに口をつけて、水分を取る。飲み込んで、体の中に染みる感覚に息を吐いて、返せば風丸は笑った。
「それで?シュートの調子はどうなんだ?」
『難航中』
「そうか…。ボールは上がるようになったみたいだな」
『ああ。高さはいいけど、俺と鬼道が合わない』
「そればっかしは何回も合わせるか、きっかけをみつけないと難しそうだな?」
『あー、そうだなァ』
未だ作戦会議中の向こう側に風丸がアルディートステラかぁと零す。
「吹雪と豪炎寺のほうは?」
『影も形もねぇけど行けそうな雰囲気あるのが吹雪。形はあるのにまったくうまくいく気配ねぇのが豪炎寺』
「ははっ。正反対の完成度だな」
『ああ。基山んときみてぇにその場でパってやったほうが良さそう』
「ヒロト?」
ぱちりと目を瞬いた風丸に、あ、口を押さえて立ち上がる。
『不動に怒られる』
「不動??お前何したんだ??」
『まだ内緒』
「はぁ。まったく…悪さしたわけじゃないんだな?」
『悪くない』
「ならいいけど…」
ジト目でこちらを見てくる風丸に目をそらして一歩離れて、手を差し伸べる。
『そのうち風丸にも見せてやる』
「ああ。楽しみにしてる」
しっかりと手を取って立ち上がった風丸に、現れた道也や多数の人影。時間を確認すればそろそろ練習開始の時間で、基山と鬼道も顔を上げた。
「ああ…時間切れか…」
「なにか、後一手、きっかけがあれば…」
浮かない表情の二人に佐久間と不動も会話をやめてこちらに向かってきて、道也が揃ったメンツを確認して口を開いた。
×
練習が始まるのかと思いきや、レッドマタドールという、別ブロックで戦っているチームと練習試合をすると言われたのはつい今さっきで、スペイン代表の言葉に目を瞬く。
『スペイン…?』
「あ?どうしたんだよ」
『んや…』
なにかあったような気がすると思い出しそうになった瞬間に視界が歪んで、左目を押さえる。
またこれかと、目を瞑っていればざっざっと足音が近づいてきて、道也が紹介する声が聞こえる。
大方相手チームが来たんだろうそれにゆっくり目を開けて、そうすれば妙にデカイ四人とばちりと視線がぶつかって向こうは笑った。
「
『げ』
「
「
「
『うわ、やめろ、こっちくんなっ!』
「え、来栖??」
「んんっ!心配してたんだぞー!!」
騒ぎながらひっついてくる四人を押しのけようにも次々と手を伸ばされて頭を撫で回され頬を撫でられれば追いつかない。
四人の言動にイナジャパも向こうの奴らもぽかんとしていて、睨み付けてるのに四人はでれっと笑った。
『はなれろ!』
「「あ〜!!うちの末っ子が反抗期〜!!」」
「天使はなにしてもかわいいなぁ!」
「まだまだちっちゃいなぁ〜!」
「偏食せずにちゃんと食べてるか?」
「夜ふかししてないだろうな〜??」
『うるせぇ!あっちいけ!!』
「「「「
『
蹴り飛ばそうかと足をあげようとしたところでさっと掬われて抱えられ、ぺたぺたと触られる。
「かるっ!天使やっぱり人間やめてないか?!」
「まったく、本当に小さいなぁ、天使は」
「いまだ偏食してるんだろう?」
「ちゃんと食べないと兄さん許さないぞ?」
『誰が!兄貴だ!!くそが!!!』
全員の頬をひっぱたいて腕から逃れて走って、道也の後ろに隠れる。睨みつけていれば道也は頭がいたそうに息を吐いて、俺を見据えた。
「諧音…どういうことだ…」
『不審者!!』
「なんだ?本当に反抗期か?天使??」
「末っ子にそんな目で見られて悲しいなぁ」
「ほらほら、こわくないからおいで〜」
「こっちにお菓子があるぞ〜、天使〜」
『いかねぇ!!』
四人組の言動に全員が戸惑っていて、道也から意地でも離れないと睨みつけていれば四人はあははっと笑う。
「うんうん、元気そうだなぁ、天使〜」
「ほんと、久々に会えて嬉しいぞ」
「せっかくだからもっとかわいい顔を見せてくれ、天使」
「末っ子に会えてテンションあがったんだ、許してくれ、天使〜」
『やだ!』
「「「「angelito〜 !! 」」」」
×
「まったく…ほら、あれでいいか」
『………そいつらぜってぇ俺に近づけんなよ』
「あ、ああ…?」
向こうのキャプテンやそれ以外のチームメイトが四人の肩を抑えつけているから仕方なく道也の後ろから出る。
四人の目がきらきらしてるから顔を逸らして、そうすればイナジャパの面々の中で、代表してか、円堂がええとと俺を見据えた。
「来栖、あの人たち知り合いなのか?」
『…………チーム組んだことあるだけ』
「え!もしかして噂のチームメイト?!」
『噂ってなんだよ』
「来栖が言ってたんじゃん!すげぇつえーチームメイトの話!!」
「「「「angelito…!! 」」」」
『、そんなこと言ってねぇ!!』
黙ってろとバンダナを掴んで引き下げればうわぁ!と円堂が大きな声を出して慌てる。
おそらく知ってたであろう鬼道が息を吐いて、円堂のバンダナを直してやると俺を見据えた。
「随分とチームメイトから可愛がられているようだな」
『彼奴らが過剰なんだよ!!彼奴もようたも同い年なのに俺だけ末っ子扱いしやがって…!!』
「だってなぁ?」
「諧音は末っ子だしな?」
「「ああ」」
『うぜぇ!こっち見んな!話に入ってくんな!!』
「ははは!それは無理な相談だ」
「俺達の天使がいるのに無視できるわけないだろ?」
『うっざ!!!』
「………なんだか、本当に仲のいい兄弟ってかんじだね…?」
『ちげぇっつーの!』
向こうの選手たちに押さえ込まれているからなんとかこちらには来ないものの、手を伸ばすような動作に後ずさって、風丸が思いついたように目を瞬いた。
「なぁ来栖、そうやって過剰に反応するから面白がられてるんじゃないのか…?」
『、』
風丸の言葉に固まる。
彼奴とようたがこいつらに接するときの反応を思い出して、そうかと頷いた。
『愛想笑いか無視すればいいのか』
「「「「angelito ?! 」」」」
動揺した声にぷいっと顔を背ければ、あわあわして四人が各々謝罪か甘ったるい言葉を投げつけてくるから、そのまま道也を見た。
『試合しねぇのかよ』
「お前が止めてるんだ…」
『俺のせいじゃねぇ』
「はあ…」
朝からすでに疲れ果ててる道也は向こうのキャプテンと監督と目を合わせて、それではと頷いた。
日本とスペインで組分けされて準備を始める。
道也には一瞬視界が眩んだことを伝えてけばわかったと短く零された。
「来栖くん、あっちの人たちすごく見てきてるけどいいの?」
『いい』
適当に分かれたことで、一緒に柔軟をしてた吹雪が首を傾げる。
向こうは向こうで準備があるんだし、敵チームと和気あいあいする気にも、試合の前にこれ以上余計な体力を使う気にもなれない。
「ふふ、それにしても来栖くんって末っ子だったんだね」
『うるせぇ』
「そういうところ、アツヤにちょっと似てるかも」
『……お前の弟のことか?』
「うん。アツヤも照れると口がちょっと悪くなって早口になるんだよ」
『…………大体の人間はそーだろォ。場所変われ』
「ありがとう」
手を離して、立ち上がった俺に変わりに吹雪が座ってぺたりと前に倒れるから背を少しだけ押す。
「あと来栖くんって甘えじょうずっぽいなとは思ってたから納得ってかんじ」
『はあ???』
「ふふ。あんなに賑やかなお兄さんたちに囲まれてたら仕方ないよね」
『あれは孫可愛がる爺婆だろ。俺の兄貴は一人だけだ』
「お兄さんかぁ。来栖くんののびのびしてるかんじ、やっぱり弟なんだね」
『…………』
手を離して、立ち上がった吹雪が背を向けるから仕方なく背中合わせになって腕を組む。
「僕の弟はね、来栖くんと似てて、自信家ででも寂しがりで甘えん坊で強がりなんだよ〜」
『………』
「来栖くんのお兄さんってどんな人なの?」
『……お前みたいに、ふわふわした頑固者』
「あれ?僕と似てるの?」
『ちょっと』
「サッカーしてる兄弟って似てるのかなぁ」
『局地的なもんだろ』
お互いに動いたところで腕を離す。柔軟は終わったし、次はと考えるよりはやく手が取られた。
「来栖くん、このままパス練付き合ってくれないかな?」
『……ん』
ボールを拾って、ぽんぽんと感触を確かめた吹雪はボールをこちらに送ってくる。そこそこ早いけれど、鋭くはないパスに安心して送り返して、吹雪が笑った。
「なんだか懐かしいね」
『あー…前もやったなァ』
「うん。あの時も楽しかったね」
『…まぁ』
『ふふ』
ふわふわと笑う吹雪に、さっきの会話も相まって彼奴が重なる。優しい空気感は彼奴よりも軽くてあっさりとしていて、彼奴の真綿でしめてくるような甘さとは違う。
『……………』
「来栖〜!吹雪ー!」
『…なに』
「円堂くん、どうしたの?」
「全体の動きの確認するぞー!」
「うん!わかった!行こう、来栖くん!」
『…ん』
手を取られて走り出す。俺を置いてかないように速度の合わせられた歩幅にやっぱ彼奴とは違うなと思いつつ連れられて、俺達を迎えいれた風丸が眉根を寄せた。
「来栖、吹雪にわがままいったんじゃないだろうな?」
『はぁ?なんでそうなんだよ』
「吹雪は押しに弱そうだからだ」
『何言ってんだ、こいつお前より流されねぇぞォ』
「ふふ」
風丸の言葉に意味深に笑うだけの吹雪は、わかってるだろうに手を離さない。
柔らかな目に息を吐いていれば、向こう側で天使がサッカーしてる〜!末っ子してる〜!と耳障りな音が聞こえてきて眉間に皺を寄せた。
『
「あ!天使が反応した!」
「天使〜!」
「かわいいよ〜!」
「こっち見て〜!」
『ちっ!!』
返したのが良くなかったらしい。嬉しそうにぶんぶんと手を振る四人に向こうのチームは総じて引いているし、こちらのチームも引くか苦笑いかの二択だ。
「来栖くん、可愛がられてるね」
『子供って馬鹿にされてんだよ、腹立つ』
「まあまあ」
とんとんと背中が撫でられて唇を結う。不機嫌な俺に吹雪は微笑ましそうで、こういうところでオレの諧音だけど?と威圧して張り合ってた彼奴や、かいとんをおもちゃにするなよ??と威嚇し返してたようたとは違うなと感じる。
吹雪と風丸が目を合わせて、それから笑った。
「来栖、不貞腐れてる暇なんてないぞ」
「いつまでも赤ちゃんだと思ってる相手には見せつけてあげないとね?」
『……お前ら結構好戦的だよな』
「今のチームメイトは俺達だからな」
にっと笑う風丸に、ふわりと微笑む吹雪。それから話を聞いていたのかうんと頷いたのは円堂で。じっと見てきてる豪炎寺、鬼道の視線が喧しい。
息を吐いて、気を取り直して。向こうを見やる。
『
ぴたりと動きを止めた四人は口角を上げる。つい今しがたまで蕩けた顔で愛を囁いてた人間には思えないそれに、チームメイト含めて固まって、四人はそれぞれ口を開く。
「「
「いくら天使が相手とはいえ、試合は試合」
「兄貴分としていいとこ見せないとね」
「それに今の天使のチームも気になる」
「これは本気で挑まなくてはな」
一気に引き締まった空気感に、イナジャパは驚いたように目を瞬いてる。
昔から、フィールドに入ればスイッチが切り替わって別人なんじゃないかと思えるほどにタイプが変わる四人に、息を吐いて目を細めた。
『呑まれてんじゃねぇぞ。練習でやったこと忘れんなよ』
「、ああ!」
「おう!」
慌てたように頷く様子に大丈夫かよと思いながら整列するためにフィールドの真ん中に向かう。
幸い、向かいに立ったのは見知らぬ人間だったからすんなりと挨拶して離れた。
今回の試合は新しいフォーメーションの確認を目的としてる。
だからディフェンダーに俺がいて、フォローに風丸。不安定になる可能性も踏まえて土方と壁山が後ろに据えられてる。ミッドフィルダーには鬼道、不動、佐久間。フォワードには基山、吹雪、染岡が選ばれ、あぶれた豪炎寺と虎はわかりやすく頬を膨らませてた。
「よし!勝つぞ!」
円堂の大きな声が後ろから響く。
ベンチから立向居と虎と条助、飛鷹が頑張れ!と声をかけてくれるから手を振って、息を吐く。
今日の気分は悪くない。
観客の多さに比例して悪化するらしいそれに、どこまで保つだろうかと目をつむって、開き直す。
フィールドには先に進んで定位置についている人間と、俺を見据えて待ってた人間がいて、一番近くで足を止めてた不動に近寄る。
「実践のほうがお前もやりやすいだろ」
『たぶん』
「朝練の成果出すぞ」
『あー』
「気合入れてけ」
べしりと背中を叩かれて、おーと返事をこぼせば片眉を吊り上げるから手を伸ばす。
服を掴めば動揺したように肩を揺らしてて、目を合わせた。
『…今日も、一緒に遊んでくれるか?』
「……まぁ、したかねぇから、いいぞ」
『ん』
「………あんまりにも弛んでたら放っとくからな」
『ああ』
手を離して、歩き出す。
少しだけ足元は覚束ないけれど試合のときほどじゃない。その証拠にすれ違いざま風丸にはストップをかけられることはなくポジションにつけた。
×
今日の目的は不動と鬼道との動きの確立と、それに伴いフォアード陣とディフェンダー陣との連携の練習。
イタリア戦ぶっつけ本番の可能性があった中で、ほぼ実践、なおかつ俺を知る人間が相手に据えられた今回の試合は相手はもちろんこちらも願ってもない機会で、道也からは体を動かしてこいとだけ言われてる。
息を吸って、吐いて。胸の前で手を組み目を瞑る。
『ーーーーー. 』
ピーッと鳴った大きな音に声はかき消されて誰にも届かずに済んで。顔を上げた。
向こうのボールから始まった試合に要所を確認する。相手チームの彼奴らからで、それぞれ走り出した様子を眺めて、賑やかなそこに足を進める。
ボールをかすめ取って、走り出した。
「相変わらずはやいなぁ!」
「いかせないけどね」
俺へのマークが早い。最初から俺を封じるのを目的にしていたんだろう動きに嘲笑った。
『風丸!』
「ああ!」
出したボールを受け取るのは飛び込んできていた風丸で、お?と目を瞬かれた。
「まるでヨータだな!」
「速さでいえばヨータ以上か!」
賞賛の声を上げる二人にバックステップで距離を取ってから抜ける。
帰ってきたボールは止められる前に不動に回して、次は鬼道に渡った。
「「へぇ!!」」
「天使!いいミッドフィルダーを捕まえてるじゃないか!」
「少しラグはあるがいい動きをする」
『うるせぇ!刮目してろ!!』
余裕混じりの声色。楽しげな表情が崩れない。
「だが、そのラグ…」
「命取りだなぁ?」
俺と彼奴とようた。そのスピード感に慣れていたこいつらは俺の出す合図を元に不動と鬼道との連携の隙をついてくる。
ボールを通そうとすればわかっていたとでも言うようにルートを塞いでくるから、ボールは戻すか自分で運ぶかとなかなか前に進めない。
「くそっ」
「やはり俺達だとだめなのか」
悔しそうに歪んでる不動と鬼道の表情にボールをキープしながら考える。飛び込んでくる足を避けて、走り込んでいるのが見えてた白色に送った。
『吹雪!』
「うん!ナイスパス!」
「お、通しやがった」
「行かせないぞ!」
俺の動きを見れる四人のうち二人は俺に固定。残りの二人がどこにでも対応できるよう近くを遊泳してる。
不動と鬼道は他の人間にも警戒されていて、風丸は上がってる姿をほとんど試合で見せてなかったから戸惑われてるものの、こいつらならすぐ対応してくるだろう。
吹雪という選択肢を増やしたことで機嫌が良さそうに笑うそいつらに、これは厳しいなと走る。
確認した先の道也もわかりやすく眉根を寄せていて難しい顔をしてる。
吹雪から鬼道に渡ったボールに、二つ分の影の隙間を抜けてボールを取りに行こうとして、鬼道が追いついてないことに気づく。
『鬼道!』
「、来栖!」
「んー、やっぱり」
「そのラグ…やりづらそうだな?」
「天使、まだテスト中か?」
「初めたばかりだな?」
もらったボールにすぐに追いかけてくる二人と、こちらに向かう二人。常にまとわりついてくる四人に鼻を鳴らす。
『
「それもそうだ」
「カイトとヨータもよく喧嘩していたなぁ」
「ヨータの泣き顔なんて始めてみたもんなぁ」
わははと笑いながら追いかけ詰めてくるのを躱し、見えたピンクにボールを蹴る。
『染岡!』
「っおう!」
体制を崩しつつ、危なっかしい動きでボールを受け取った染岡が上がっていって、また俺から二人離れて二人残る。
「
「
『…………
「「¡Oh, no! 」」
『
嘆いてる二人に怒れば近くにいた土方と小暮が何話してるんだ?と風丸を見て、風丸が首を横に振った。
×
取って取られて、点はそこまで離れないものの、戦法として機能してる気がしない。
点を取ったのも壁山、鬼道とボールがうまく回って決めた染岡の一点のみで、中盤に関してはまったく息をしてない。
ハーフタイムに入ったから、目を逸らしてる道也の向かいに立った。
『道也、下げろ』
「……………」
警戒されてて役に立ってないのは俺とわかってる。
まだ少し、早かった。
道也は難しい顔のままで口を開こうとして、伸びてきた手ががっと俺を掴んだ。
「おい、なに降りようとしてんだ」
『あ?』
「このまま…止められたままで、引き下がる気かよ」
『ああ?もちろん癪だけど、俺がいるほうがやりづれぇだろ。お前と鬼道へのパスほとんどカットされるし、いつもの連携使えねぇんだぞ?』
「………それは俺達がまだ遅いからだろう。現に風丸や吹雪へはパスが通っている。ならば、今この試合で、ものにするべきだ」
『ものにするっつっても…』
まだ数回しか一緒に練習をしておらず、全体練習なんてもってのほか。連携できるのは鬼道、不動、風丸で吹雪はぶっつけ本番に近い。10人のうちの半分と意思の疎通ができず、連携できるうちの半分とが攻撃を阻害されてしまうのなら、原因は排除するしかない。
重い空気に、息を吸う音が響く。
「………じゃあ、こういうのはどうだろう?」
聞こえたのは基山の声で、全員が顔を上げた。
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