イナイレ
執拗に追いかけまわしてくる鬼道の怒りは夕食前に少し付き合う程度では晴れなくて。仕方なく夜も少し付き合って遊ぶハメになった。
鬼道といるときは相変わらずステラの練習をメインにしているけど、中々合わないタイミングにどうしたものかなと頭を悩ませる。
ステラは元々俺が使うために作ってた技じゃない。ようたが新技を作ろうとしていて、一緒にはしゃいだ結果の副産物にすぎない。ようたの技に勝手に混ざって出来上がったものに対して俺にアドバイスはできそうになかった。
『んー…』
屋根の上、星空を眺めてぼーっとする。ようたがいくつか鬼道にアドバイスをしてくれたけれど、それでも理論派の鬼道と感覚派の俺。更にはその中間でどちらかといえばパワープレイヤーのようたではお互いに技のイメージが違くて共有するのも難しい。
少し強めの風が吹いて髪が巻き上がる。ばさばさと毛先が暴れて視界を遮って、耳が音を拾った。
パンっと破裂するような、ゴムを叩きつける音。聞き馴染んだそれに手を伸ばして体制を変えて下を覗く。
グラウンドの隅。ボールを蹴る赤色を見つけて口角を上げながら一度部屋に降りて靴を履いて外に出た。
食後の運動なのか一人でボールを蹴って走っている姿に勝手に飛び込んでボールをもらい、そのまま走り出す。
「え?!」
ドリブルで上がっていけばすぐに追いかけてきてボールを奪い返そうと足を伸ばしてくる。
踵ですくいあげて足を避けて、前に回してきたボールを膝で受けてまた走り出せば負けじと追いかけてきて、なんとなく後ろをついてくる姿が懐かしいようなと首を傾げてるうちに向かい合う。
リズミカルにボールを取るため伸びてくる足にボールを転がして避けて、何度めかの攻防でボールに足が当たって後ろに飛んでいった。
「や、やっととれた…!」
『うーん』
「…なんだか難しそうな顔をしてるけど、どうしたの?」
『んー』
心配そうにも見えるその表情に言葉は浮かばなくて、転がっていってしまったボールを拾いに行って、数メートル離れたところにあったそれを蹴って渡す。
「ええと、」
『いくぞ』
「っ、」
走り出せばすぐにボールが逃げていく。ルールも何もあったもんじゃないけど、ボールを取られないようにしっかりと動く姿に無心でボールを奪いに行って、見えた隙につま先でボールを弾いて自分のものにする。
「ぐっ、」
『ん〜??』
なにか、似てるような。
わからないからわかるまでとボールを蹴り進めて、ボールを取りに来るから避けて。何回も繰り返しているうちにボールがまた弾かれ飛んでいった。
「よ、よし…!」
『…………?』
嬉しそうに輝いた瞳に、既視感を覚える。やっぱり見たことがあるような、ないような。
『………、…うーん』
「来栖くん、本当にどうしたの…?」
『ん〜』
こういうとき、言葉にしないと意志の疎通ができないのはもどかしい。
『こまった…』
「何か悩みごと?」
『悩み…、ちがうとおもう』
「ええと、じゃあなにに困ってるの…?」
『困ってるけど、困ってない…』
「………あ、風丸くんか不動くんに声をかけてこようか?」
『………うーん。これたぶん、お前じゃなきゃ駄目なんだよなァ…』
「え、僕?」
何かしたっけと目を更に瞬く様子に首を傾げる。
赤色の髪。白い肌。薄い緑色の目。何かが引っかかってる感覚。
ちらちらと頭の隅に何かが浮かんでるような、浮かんでないような。曖昧な輪郭に赤色と白色と緑色が浮かんで、また消えて、口を開く。
『基山』
「あ、うん、どうしたの?」
『……なんかやっぱちげぇなァ』
「ええ…?」
生来面倒みがいいのか、真面目なのか。俺の言動に振り回されながらも怒ったりせずに離れることなく近くで待って見守ってくる姿に、また風が吹いて髪が流れる。
「っ、今日は風が強いね…」
『あー、さっきも変な風吹いてたし、このあと嵐かもな』
「え…天気予報晴れじゃなかったっけ…?」
『んー、雨…風…?嵐…あれ、違うなぁ』
「来栖くん、本当にどうしたの…?」
『なんかこう、なんだっけ?基山って……、あ』
「え?」
鼻に届く湿った匂い。いつの間にか星空を覆い尽くしてる厚い雲。妙な強い風でどんどん流れてくる空気は暖かくて、基山は気づいてないのか俺を見たまま言葉を待ってる。
「来栖くー…」
『よし』
「え?」
『一発勝負だ。…遊ぼう、基山!』
「………え?」
ボールを拾って、走り出す。
「え?!!」
『ついてこい!!!』
「ど、どこに!?」
言われるままに走り出した基山は俺の少し後ろを走ってる。フィールドを縦断するためにまっすぐ走っていって、ごろごろと響き始めた音に基山がはっとして上を見る。
「、雷?いつの間にこんな雲が、」
『俺さき!基山あと!』
「え?!なんのこと!?」
『壊そう!』
「は、え?!」
『走れ!』
「うん!!?」
目を白黒させる基山が面白くて、俺の横を駆け抜けていった基山に笑いながらボールを思い切り蹴って、勢いを増したボールに風が大きく吹いて雷が響く。
「っ!そういうことだね!」
後ろから飛んできたボールを更に蹴った基山に、すごい音を立ててゴールネットに刺さって、同時にまた大きな雷の音がしてぽつぽつ水が落ち始める。
「いま、のは…」
『たのしい!満足した!』
「あ、うん?よかったよ…?」
基山が首を傾げるけれど、髪を濡らし始めた雨にさっさと走り出した。
『寝る。おやすみ。風邪ひくなよ』
「あ!えっ、ちょっと…!」
濡れ鼠になって拭くのも着替えるのも面倒だ。駆け抜けて部屋に帰って、そのまま布団に飛び込んで、あ、と声をこぼす。
『ヒロトか』
ようやく出てきた名前に、どこで聞いたんだっけなと一瞬思ったものの、まぁいいかと目を閉じる。
どうしても気になるのなら、明日聞いてみればいい。
きっと、基山は俺から逃げないはずだ。
×
寝る間際、夜中は凄まじいほどの嵐だったけど、朝にはすっかり雨は上がっていて、開け放った窓の外はカラッとした空気が吹いてる。
清々しい目覚めに大きく伸びて、扉を開ければちょうど出てきた不動が目を見開いてた。
「お前起きれたんだな?」
『たまたま。今日は機嫌が良い』
「…それ自分で言うことか?」
呆れ混じりの不動に首を傾げつつ外に出る。グラウンドはまだ若干湿っているものの、この晴れ具合なら朝食後には乾ききってるに違いない。
「…本当に機嫌いいな」
『ん?』
「鼻歌」
『まじか』
珍しいこともあるもんだと自分に驚きながら不動が蹴ってきたボールを受け取って、走り出す。
タイミングが合わない鬼道とのシュート。まだ不完全な不動との連携。やりたいことはたくさんあってどれもこれも取っ掛かりがない。
新しくシュートを作ろうと練習をしているものの豪炎寺と吹雪はそもそも中々時間も合わないし、ざっくりとしたイメージは二人の中にあるようだけど、形も出来上がってない。
『うーん』
「来栖!」
『ん?』
「また突っ走ってんぞ!」
『あれ?』
「ぼさっとしてんな!」
『ごめん』
『ったく…』
考えながら蹴ってたせいで、気づかずに渡そうとしてたボールは不動よりもかなり後ろに飛んでいってたらしい。
見えていたはずなのにずれた位置に頭を掻いて、転がってしまってたボールが拾われた。
「来栖くん、不動くん、おはよう」
『基山?おはよ』
「…はよう」
今まで、一度もこの時間に会ったことがなかった基山はにこりと笑っていて、不動か訝しげに眉根を寄せてる。
「二人ともこんな朝早くから練習してたんだね」
「…人数がいんと動きづれぇからな」
「たしかにね」
『基山はこんな時間になにしてんだァ?』
「目が覚めちゃったんだ」
『早くね?』
「うん。昨日のことが忘れられなくて」
笑顔の基山はボールを転がしながら近づいてきて、数歩離れたところで俺にボールをパスする。
受け取れば基山は楽しそうに笑った。
「不動くんとの朝練が終わったら、少し時間もらえないかな?」
『なんで?』
「もう一回あのシュートが打ちたくて」
『ん。わかった』
「…………お前ら、」
目を見開いた不動に基山は嬉しそうに笑って、一歩足を引く。
「それじゃあまたあとで。お邪魔してごめんね。朝練楽しんで」
『おー。またなァ』
「……………」
ひらひらと小さく手を振った基山の背が離れていって、外に向かうらしいそれにジョギングかなと思いながら隣を見る。
手を上げて、深すぎる眉間の皺を突いてみれば睨みつけられた。
『こえー顔してんぞォ?』
「…誰のせいだと思ってんだぁ?」
『………?俺か?』
「…ちっ!!!」
盛大な舌打ちにまばたきをして固まる。あまりに心当たりがないそれに口を開こうとすればぱっとボールが持ってかれた。
「さっさとついてこい!!」
『おう…?』
練習を再開する気らしく走り出した不動を追いかける。
どことなく怖い顔をしてる不動に口を開いた。
『なんで怒ってんだァ?』
「別に」
『気になる。不動』
「てめぇで考えろ」
『んん…』
考えることがまた増えてしまって頭を抱えたくなる。
俺より少し前を走る不動は突き放したいわけじゃないのか置いてく気配はない。
なんだっけこれと昨日も考えていたようなことを思いながら走り回って、いつものアラームが鳴ったところで足を止めた。
『んー』
「わかったのか?」
『むずかしい…』
「じゃあ宿題だ」
『期限いつまで?』
「ねぇけどあんまりにも遅かったらそういうもんだと思って今後接する」
『まじかよ…』
“そういうもん”がどういうことなのか気になるけど、それを聞いたら余計怒られる気がして唸る。
不動は息を吐いた後に笑った。
「頑張って考えろよ、来栖くん」
『ああ…がんばる…』
どうしてか機嫌が少し良くなったらしい不動は鼻を鳴らして、それから歩き出す。
連れられるように歩き出して、見えた赤色に不動が目を向けた。
「待たせたな」
「ううん。全然…というか、また来栖くんは考え事してるの?」
『不動から宿題出された…』
「昨日のもやもやしてたのも不動くんの宿題?」
『昨日はステラと基山のこと…』
「それは忙しそうだね…?」
『いそがしい…』
基山の苦笑いに頷いて、とりあえず顔を上げた。
『シュートすんだろ?』
「うん!よろしくね!」
不動がちらりと俺達を見るから、服を引く。
『不動、パス出してくれ』
「…はぁ。仕方ねぇな…」
不機嫌でもボールが絡めば拒絶してこない不動は持ってたボールを地面に落とす。
ゴールに向かって走り出した俺に基山もついてくるように走り出して、全力で俺を抜いた基山を確認したところで不動がボールを蹴った。
風で少しぶれているものの、昨日のような嵐最中の荒々しさはないボールを難なく受け取って、蹴り上げる。
『行け』
「ああ!」
きちんと昨日と同じように威力を増したボールは基山に届いて、基山も思い切りボールを蹴り込んで、ネットを揺らしたボールに不動が目を見開いた。
「へぇ…!」
「うん…!やっぱりすごい爽快感…!」
『たのしい』
少し離れたところにいる基山はスッキリした顔をしていて、振り返れば不動がにんまりと笑ってる。
「お前らこれ誰かに言ったか?」
『んや?』
「練習してるとこ見られたりは?」
『昨日パってやったやつだしないと思う』
「パって…?」
「ええと、僕の自主練中に来栖くんが飛び込んできて、たまたまボールが繋がってできたシュートなんだ。それでこれが二回目の成功だから誰も知らないよ」
「一日で完成させたのか?」
「完成……というか、全く意図しないところでいきなり爆誕したって感じかな…?」
『シュートってそういうもんだろ?』
「全然違うよ…」
基山の苦笑いに首を傾げる。
『ようたも彼奴も一人のときはなんか色々やってたけど、一緒にシュートするときはパってしてたけどなァ…?』
「パってって…ええと、来栖くんはあんまりシュートの練習はしたことないの?」
『ねぇな?楽しそうって思ったときに混ざったらできるもんだろ?』
「すっごく感覚派…鬼道くんが悩んでる理由がわかったよ…」
『基山もそうじゃねぇの?』
「昨日のあれはトップスピードのときに嵐の風が…………、衝動で完成させてるから、なんて言っても一緒かな…?」
言語化をしようとしてた基山が俺を見て苦笑いで言葉を濁す。聞いていた不動もまたこのパターンかと息を吐いていて、二人の顔を見ながら手を叩いた。
『あ、』
「「あ?」」
『基山、不動、お前ら日本語上手だよな』
「え?」
「はぁ?」
目を丸くした二人の手を取る。
『手伝ってくれ』
「え、?」
「は、」
走り出せば目を白黒させながらついてくる。
見えてる方向に迷わず進んで、グラウンド、佐久間と円堂と練習中だったマントに近づく。
「あ!来栖…あれ?ヒロトと不動??」
「なにやってるんだ?」
「二人を引っ張ってきてなにを…」
『不動と基山いたらいけるかなって思って』
「なにを…?」
『ステラ』
「…アルディートステラのことか?」
『な、不動、基山』
「………はぁ〜…本当にこの3歳児は…」
「ええと、来栖くん、説明してもらってもいいかなぁ…?」
なんでか深いため息をこぼす不動と困惑顔の基山。佐久間がおろおろとしてて、円堂はにかっと笑う。
「たしかに!来栖の感覚をわかる不動がヒロトに繋げば鬼道のシュート完成しそうだな!」
『ん!』
大きく頷けば基山がああ、なるほどと零して、鬼道を見据える。
「僕もさっき知ったんだけど、来栖くん本当に根っからの感覚派で、シュート作成どころかシュート練習をしたことがないみたい」
「え、」
「こいつ、ノリで勝手に混ざって土壇場本番でシュート爆誕させるタイプだった。全部感覚でやってんから再現性の精度はわかんねぇけど、さっきいけてたから一回成功させちまえばいい。だからその感覚をお前が理解するか、来栖が理解するか、そのどっちかがなきゃアルディートステラはできねぇ」
「……………」
「それで言語化できそうな僕と不動くんを連れてきてくれたみたいなんだけど…鬼道くん、これからは練習に混ざってもいいかな?」
目を丸くした鬼道が口元を緩めて、頷く。
「ああ、こちらこそ。ちょうど行き詰まっていたんだ。助言をしてもらえるとありがたい」
「うん。がんばろうね」
「そんな頻繁には付き合ってやんねぇから、さっさと完成させろよ」
「ああ」
不動と基山、それから佐久間も付き合ってくれるらしく、もちろん最初から混ざる気満々の円堂が声を上げる。
「よし!来い!」
「いくぞ」
『んー』
走り出す。
ボールは鬼道が持っていて、ようたのように大きく蹴り上げて、あ、と思ったときにはもうタイミングがずれててボールが抜けていき、誰にも触れられることなく力なく落ちる。
『こんなかんじ』
「うーん…」
「…………」
「最初とまったく変わらないな…」
わりと序盤から手伝ってる佐久間は代わり映えのない精度に困り眉で、基山と不動は真剣な顔をしてる。
大前提としてセンタリングがもうようたとなにか違う。そうすると飛ぶタイミングも合わないし、ボールを蹴るどころの話じゃなくなる。
「栄垣からのアドバイスはこれだ。それを元に俺が行ったこと、来栖に気をつけてもらっているのはこっちに』
いつの間にか鬼道が用意してたメモを並べて、わけられてるそれを基山と不動は目を通していく。便乗して少し読んでみて首を傾げる。
「ここの栄垣くんが言っている歩数の話なんだけど…」
「そこは毎回来栖が違うんだ」
「そ、そうなの…?」
「じゃあこっちのテンポ」
「それも来栖が微妙に違うんだよな…。前に見せてもらったたアルディートステラのときも…」
並んでる文字の意味はわかるけど、理解はできない。なんだかもやもやする頭の中になにがおかしいのか考えようとしても言葉にできなくてもどかしい。
『
「、え?今なんて…」
『
佐久間が聞き返してくるけど、違和感の理由がわからない。
昨日から使いっぱなしの頭にすっきりしないなと、俺と同じように文字を見てわからん!と笑ってる円堂の服を引く。
「ん?どうした?来栖?」
『ゴール前いろ』
「お!わかった!!」
すぐさま駆け出した円堂が定位置に向かうから、転がってるボールを拾って感覚確かめながら歩き出す。
『
「え?」
『
「星が…?」
『
「…………」
『
彼奴が言ってたことを思い出して、ぽんっとボールを上へ。それから、叩き落とす。
「っ?!」
散ったそれに円堂は目を見開いて、ボールがぶつかる。
受け止めそこねたというよりも動揺が激しくて止めるのが間に合わなかったらしい様子に唸って、わぁ!!!と歓喜の声が響く。
「アシェですね!!!」
『ああ。おはよォ、立向居』
「おはようございます!わぁ〜!諧音さんが打つアシェってこんなグガって感じなんですか!!」
『たぶん?』
俺とはまた違った表現力で感覚を表す立向居に、このへんの会話は円堂じゃないとわからないんだよなと頬をかく。
「アシェってことは今日は甘味の気分なんですか??」
『なんかぐるぐるしてて』
「あー!だから甘味なんですね!」
「だから…?なにが理由でその甘味なんだ?」
「えっと、甘味シリーズは基本的にシンプルですけどその分勢いがすごいんです!だから撃つときに余分なこと考えずにスッキリしたいときとかに諧音さんは撃ってる感じがします!」
「はへー…!」
駆け寄ってきた円堂がぽかんとしてて、不動も目を瞬いてる。にこにこしてる立向居に対して、慌てた顔の佐久間が俺の服を掴んだ。
「来栖!お前さっきの!」
『ん?』
「さっきまで言ってたことほんとか?!!」
『?』
「星の話…、っ
『
「
帰ってきた響きに目を瞬いて、それから頷く。
『
「っ〜!!それを!先に!!言え!!!」
『???』
怒り始めた佐久間に首を傾げる。急に騒ぎ出したから隣で聞いてた鬼道と基山も目を瞬いてて、不動が息を吐いた。
「んで?この3歳児はなんだって?」
「アルディートステラに重要なのは高さだ!とにかくセンタリングを高く上げろって!」
「は?」
鬼道が目を丸くして、不動が額を押さえた。
「なるほどな。こいつも栄垣も言ってることはずっと単純だったわけだ」
「むずかしく考え過ぎちゃったみたいだね…」
「な…!?栄垣があれだけいろいろ言っていたのに?!」
「たぶんそれは補足だったんじゃないかな…?その後威力を増すためのアドバイスとか…」
「俺の今までの努力は一体…?」
膝をついて項垂れた鬼道にぱんっと手を叩く音がした。
「鬼道!来栖!手がかりが見つかったのならやってみようぜ!」
「あ、えっと、円堂さん、鬼道さん、時間が…」
「え!?もうそんな時間!??」
気づけばあたりから人はほとんど減っていて、残っているのは俺達くらい。向こう側から現れた木野が口の横に手をあてた。
「朝ごはんだよー!!」
「……」
木野に呼ばれては強行したら風丸がうるさい。仕方なくうなだれてる鬼道に手を差し出した。
『またあとで』
「、ああ!」
正しく掴んだから引っ張り上げて立たせる。手を離して歩き出せば佐久間が視界に入って、今までの試行錯誤の時間は…と頭をいたそうにしてた。
『
「お前…、その優しさをアルディートステラの練習のときの鬼道に分けてやってくれ…」
大きく息を吐いた佐久間に基山は苦笑いでついてきた。
「佐久間くんは語学堪能なんだね?」
「ああ…授業の一環でイタリア語を少しだけな…」
「帝国学園すごいな!」
「まぁ将来的にいろんな道にすすめるよう英語以外にも履修があるから…。鬼道はフランス語で、源田はポルトガル語を選択してたよな?」
「ああ。……なるほど、来栖がさっきから話していたのは…」
「イタリア語だったからなんとかわかったけど…そもそも、お前は日本語で話せ!」
『日本語のつもりだった…?』
「「「はぁー…」」」
不動はもちろん、佐久間と鬼道もため息をつく。寮についたところで木野が俺達を見比べて、俺に視線を戻す。
「みんな疲れてるね?一緒に遊んでたの?」
『んや?なんか知らねぇけどこいつらは疲れてるっぽい』
「言語の壁って大変ですよね…」
立向居の言葉になんとなく察したのか木野は曖昧に笑って、円堂を見た。
「キャプテンから見て、お星様は放てそう?」
「おう!絶対できる!」
「ふふ。じゃあ心配ないね」
「ああ。豪炎寺との勝負はもらったも同然だ」
「お前たちそんなことしてたのか…?」
「あほらし…」
朗らかな空気と疲れた空気が入り混じっているのに賑やかなそれらに、不思議と口元が緩んで、軽やかな笑い声が転がる。
「とても楽しそうですね!」
『今日の俺は気分がいいからなァ』
「ふふ。ご機嫌なら今日はたくさん遊べそうだね」
『ああ!』
立向居と木野も微笑んだところで、先頭の円堂が食堂の扉を開けた。
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