DC 原作沿い


志保ちゃんと明美ちゃんと出かけたあの日にトラブルはあったものの、二人と秘密を共有してお茶会をしたことで帰り際にはにこにこしてて安心した。

「貴方、普段からピアスつけてましたっけ?」

『気づいた!?』

あのグループの始末を押し付けてしまったバボくんは関わっていたからと結果報告に来てくれていて、ふいに目を瞬くから大きく頷く。

『あのね!あのね!これ明美ちゃんと志保ちゃんがくれたの!』

「おや、あの二人から?」

『うん!あのね!いつもありがとーってお礼なんだって!』

「そうですか」

俺の左耳に光ってるのは深く濃い紫色のピアスで、バボくんは目尻を下げてから良かったですねとサラリと返す。

あっさりとした言葉の割に微笑ましそうに見つめてくるから俺も髪をかけて、見えやすいように近づいた。

『俺がいない間に選んでくれたんだって!色は志保ちゃんで、形は明美ちゃんのおすすめなの!』

「…嬉しそうでなによりです」

視線を落として口元を緩める。

明美ちゃんみたいに見守るような視線。バボくんは目を閉じるとそのまま俺の額に手を伸ばして、構えられた指が額を弾いた。

『ん゛っ?!いたい!なんで!??』

「アホ面を晒してるからです。貴方こんなに油断しててよく今まで五体満足に生き延びれましたね?」

『アホ面じゃないよ!バボくんひどーい!』

「はぁ。もう少し緊張感を持って過ごしてくださいよ」

『仕事中じゃないのに緊張してたら疲れる!』

「パリジャンとは思えない腑抜けた発言ですね…」

呆れたように息を吐くバボくんは立ち上がると俺に背を向けた。

「あまり腑抜けていると僕がその座を奪ってしまいますからね」

『うええ…?俺の座…??』

その組織に見捨てられない程度の成果しか挙げられてない俺の座なんてわかりきった端っこの地位なのに、そんなのを狙おうなんて不思議だ。

バボくんのほうがよっぽど期待されてて高い地位にいるのになぁと目を瞬いていれば、バボくんは振り返って俺を見おろした。

「任務の失敗は死ですからね」

『…うん。仕事はちゃんとしないとね』

「ええ。僕は失敗者の始末なんてなんの徳にもならない仕事は請け負いませんからね」

『ゴミ掃除なんてバボくんに似合わないもんね!大丈夫!迷惑はかけないよ!』

「ならいいですけど」

すっと目線を外して背中を向ける。迷わず戸を押して出ていったバボくんに体を前に倒してテーブルに額を乗せた。

一人になった部屋の中は静かで、さっきまであんなにふわふわしてたのに腹の中がぞわぞわして、気持ち悪い。

『俺も、仕事がんばらないと…』

何も考えなくて済むように、目を瞑って意識を手放した。


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