イナイレ


今回も今回とて、案の定、晴天の今日は絶好のサッカー日和。どいつもこいつもすでにテンションはマックスだった。

移動中の船でスタメンに呼ばれた奴らがアウェーな空気でいっぱいのフィールドに向かっていく。

「諧音さん!隣いいですか!」

ひょいっと顔を覗かせた立向居にヤンデレ化しない条助を確認して、空いてる右側を叩けば表情も明るく立向居が隣に並ぶ。

立向居の視線が俺の手首に向いて、ふふっと嬉しそうに笑う。条助はそれに諧音は後輩にも好かれてすげーな!と肯定的で、なんだかんだ条助も立向居を気に入ってるのならと目を逸らした。


×


「来栖」

アップのために、席を立っていった立向居やヤンデレを見送って目をつむってれば俺を呼ぶ声がした。

そいつのために目を開けるのも億劫で、黙ってると足音が近づいて数歩分で止まる。

「…狸寝入りか?」

『別にィ』

これは話を聞いてやらないと帰りそうにない。

仕方なしに瞼を上げれば開けた視界の中、目の前に鬼道が腕を組んで立ってた。

『なに』

「俺のアップに付き合ってくれないか?」

唐突な誘いに眉を寄せるより早く嘲笑が出る。

『はっ、なんで俺がそんなことしてやんなきゃなんねーんだァ?』

視野を広げればいつもアップに付き合ってる円堂や豪炎寺、佐久間やらは遠くで各々が相手を見つけアップを始めてた。

俺を睨みつける佐久間の目や含みのある豪炎寺、風丸、不動の視線。基山にいたってはやけに俺達を見て目を丸くしてる。

『腰巾着見てーにくっついてるあのクソ眼帯だの円堂だのとアップすりゃいいだろ』

「俺は来栖に頼んでるんだ」

『俺は受けねぇって言ってんだがァ?』

「そこにいても暇だろう」

『しつけぇ』

口角を上げ余裕な表情を崩さない鬼道はゴーグルで目が見えなくても何か考えてるのは丸わかりで、気分が下がる。

『この間から妙に突っかかってくるなァ』

「そうかもな」

あっさり認めた鬼道に下がった気分は戻らず、つけずに手の中で遊んでたイヤホンをポケットにしまった。

その拍子に手首につけたばかりの色が見えて、息を吐く。

「あまり時間がない。それで、付き合ってくれるのか?」

『いいぜ』

「「え」」

動向をうかがってたやつらの短い声が溢れたのが聞こえる。鬼道はやけにいい笑顔をつくると、空いてるスペースを指した。

「…そうか、それならあっちが空いているから移動しよう」

ボールを小脇に抱えて歩き始めた鬼道に、立ち上がって首を回してから続く。集まる視線に答えることなく、近くに他の奴らがいない隅に移動した。

俺が2、3メートル離れたところで立ち止まったのを見た鬼道は、抱えてたボールを落とすと右足を乗せて固定する。

この策士はなにを語りだす気なんだろうか

蹴られ、飛んできたボールを受け止めて蹴り返す。

ワンテンポで随分と簡易的なアップに、視線が離れていき、ほとんどなくなったところで鬼道は足でボールを止め踏んだ。

足の甲で跳ね上げさせたボールを膝の上で二回、三回跳ねさせた鬼道は笑顔を崩すことなく地面にボールを落とし、蹴りながらこっちに向かってくる。

近くまでくれば左右にフェイントを入れ始め、ボールの取り合いをしたいらしい

ポケットに入れたままだった手を抜いて、身をかがめる。

視野を広げながら要所を見つめて、やけに空いていて取ってくださいと言わんばかりの左側に舌打ちをしてからボールを掠め取って右に抜けた。

「っ、」

よっぽど左に抜かせたかったのか、左からしか抜けないと思っていたのか、近づいたゴーグル越しに見開かれた目が見えてボールを踏みつける。

『で、話はなんだァ?』

「…………ふっ」

こぼれ落ちた浅い笑みに、あまりいい気分はしない。口角を上げ、薄く笑んでる鬼道は目を合わせて口をゆっくり開いた。

「さすが、―――――だな」

砂が耳から入ったようにそこだけ聞き取りづらい言葉。

背筋を駆け抜けた寒気と足場が崩れるような浮遊感に、手のひらを握りしめた。

なにを、反応してるのか。
悟られるな、冷静に、なれ。

視界の端で笑う存在は幻覚なのはわかってる。

意識的に瞬きをして、表情を作る。

『へー…今までそんな素振りも見せなかったから知らねーのかと思ってたけどわざわざ調べたのかァ?』

「少しお前に歩み寄ってみようかと思ったんだが、…正直驚いた、まさかお前が―――――だったなんてな」

さっきとは違う単語ながらも俺の中にざらついて入ってくることに変わりはない。

どっちの言葉も聞きたくない。

『はっ、馬鹿らしい。んなの周りが勝手に囃し立ててただけだ』

遠くから道也の集合の掛け声が聞こえて、周りが違う意味で騒ぎ、動き始める。招集がかかってるのに目の前の鬼道は俺から視線を外さず動きもしない。

はやく、こいつとの会話を終わらせないといけない。

『神童もでかくなりゃあただの人になんだよ。俺は試合起用数最下位のつまんねー控え選手だって、お前も知ってんだろォ?』

ぎゅっと寄せられた眉根は何を考えてるんだか。

随分と言いづらそうにしてた鬼道は、ゆっくり息を吸った。

「……つまらない選手なんかじゃない。お前は、とても、…………その、今からだって、本気を出せばすぐに試合の起用も、スタメンだって、」

ああ、狙うなら、ここだ

『それで?』

「……それで、とは?」

『日本代表なんつーくだらねぇもんのスタメンになって、それで?』

「っ、日本代表のスタメンは名誉だろう!くだらなくなんて、」

胸ぐらを掴み寄せようと思っても腕が上がらず、一歩踏み込み少し下にある顔に視線を合わせる。

『くだらねぇよ。スタメンだったら飯食えんのか?生活できんのか?…生きてけんのかァ?』

ゴーグル越しの赤い目が揺れて、口を開いたり閉じたりを繰り返す。怒りと混乱で思考が追いついていないなら、今のうちに畳み掛ける。

『んなことで一生過ごしてけるのはひと握りの人間だけだ。…お前はアイツでわかってんだろォ?』

「………俺はそんな奴は知らない」

『おいおい、忘れたってのか?てめぇが大好きな影山ァ』

「っ、俺は!」

『サッカーごときで人生狂わされちゃあ世話ねぇよなァ。でもォ?お前は逆かァ、彼奴のサッカーのおかげでここまで来てんだから』

「っ黙れ!なんでお前が影山の名前を」

『もう一回、調べてみりゃわかるんじゃねぇのォ?』

視界の端に映ったものに話を切り上げ、呆然としてる鬼道から離れるために足を動かす。歩いてる間に舌打ちがこぼれて、気づけばベンチじゃなく控室に向かう道に入ってた。

目についた扉をあけて中に入り、息をつきながらずるずる座り込む。ひんやりとした床が、壁が、上がってる心拍を下げるのを手伝ってる。瞼を下ろせば、本当に真っ暗な闇に包まれた。

『……………―誰が、サッカーなんて』

酷い耳鳴りと頭痛が止まない。

鈍く蝕まれていかれてるような気がする。

吐き気はないものの、気分が良くない。

ポケットの中に入ってる携帯が揺れてても腕が動かず、ただそれを感じるだけで終わった。



×



「鬼道!何かされたのか!?」

血相を変えて走ってきた佐久間は彼奴が消えていった方を見て睨んでいる。

「どーしたんだ、鬼道?」

目を丸くして首を傾げた円堂に、特に何を言うわけでもなく読めない表情で佐久間と同じ方を見る豪炎寺と不動。何故か綱海からは刺さすような視線を向けられ、年下組は心配そうにオロオロしてる。

「鬼道くん」

目があったヒロトが眉尻を下げて声をかけてきて、いつの間にか止まってたらしい息を吐いた。

「ヒロト、…」

名前を呼んで、続けて何を言えばいいのかわからない。

来栖の無機質な目がよぎって、つばを飲み込む。

殺意のこもった視線ならまだしも、あんなに冷たい目を人ができるものなのか。

「鬼道くん?」

更に不安そうな顔をしたヒロトと、その後ろからこちらを窺う風丸が見えて、言葉がやっと零れた。

「…―俺は、間違えたのかもしれない」

「間違えた?」

「おそらくだが…核心に…―逆鱗に触れてしまった」

顔を顰めたヒロトはそれ以上何も聞いてくることなく、事態の飲み込めてない周りも来栖に憤っていて声の聞こえてない佐久間も続きを促さない。

思考がまざりすぎて気持ち悪い、頭が痛くなる。

監督の集合の声が響いて空気が変わった。

ベンチ近くに集まれば俺達を見た監督が眉を寄せる。

一人足りないことに気づいてるだろうに何も言うことなく、スタメンを発表した監督は視線をナイツオブクイーンに向けた。

飲み物を一口飲んで、靴ヒモを結び直し、試合の開始三分前になっても来栖の姿はない。

ついに来栖は開始時間になっても戻ってくることなく、試合中気づけば不意に消えてた綱海とベンチの端を陣取りイヤホンをつけて目をつむっていて、瞼が上がって俺を捉えることはなかった。







誇りを背負ってるだとか、期待を背負ってだとか、大層な御託を並べてるけど、

俺達は勝てば目一杯の賞賛とさらなる期待を、負ければ限りの罵倒と失望を送られるだけの、ただの道化だってことに気づいてないなんて、哀れな奴らだ。


×


「誇り…」

エドガーの言葉は、フィールド上にいる誰もが聞こえてたらしく隣の立向居が絶句して、条助が目を瞬かせる。

そっと目を逸らせば不動と一瞬目があって、すぐに逸らされた。

「諧音」

『あ?』

「平気か?」

観客の歓声だのでかき消されて立向居に聞こえない程度の大きさで掛けられた問いかけに俺よりも随分と日に焼けた肌の額を叩く。

『なんのことだァ?いいから黙って前見てろ』

話を終えるのとちょうど道也がベンチ組にアップを促すのは同時で流れが切れた。





アブソリュートナイツの弱点をついたものの、エドガーのエクスカリバーの完成形をまじまじと魅せつけられて一点取られたイナズマジャパン。

単純な話、エドガーのあれは俺と同じでカウンター型で攻撃は最大の防御を地で行く奴で、見かけによらず血の気が多いタイプなんだろう。

頬杖ついて視界を広げれば、ベンチ組の中で俺を除いて唯一アップしに行かず試合を真剣な顔して見つめてる不動が見えた。

不動は試合に出るために真面目に打開策を考えてるんだろう。

「来栖くん」

『……なんだよ』

近づいてきてた木野に、目線を向ければふわりと笑んで隣に座ってきた。

不動が物珍しいものを見たように一瞬目を見開いたものの、響いた歓声にフィールドに視線を戻した。

木野はゆっくり息を吸うと、フィールドを見つめる。

「私は来栖くんのこと、みんなに比べたらあまりよく知らないけど…もし昔の来栖くんのままだったら、来栖くんもみんなと一緒で負けず嫌いだと思うの」

『…何が言いてーんだァ?』

「来栖くんは、大切な人と勝ち取った誇りとか、人からの期待とか、そういうもの、とても大切にしてたから、今も大切なんじゃないかなって」

『はぁ…?』

急に近寄ってきて話し始める木野はこんな奴だったかと、少ない対談の中で考えてみるも全く人物像が咬み合わない。

やたらといい笑顔を浮かべた木野がこちらを見て、目が合う。

「ふふ、やっぱり覚えてないか。私、一之瀬くんと土門くんと西垣くんと幼馴染なの」

『、』

「だから私、アメリカと戦ったときのみんなのことも覚えてるんだよ」

『おまえ…』

「みんな、すごく強くて、きれいで、心の底から楽しそうで。だから私、教室で会ったときにとっても驚いたの」

もう二年ほど前。出席番号順に並んだ机、前は風丸だったけれど、隣は木野で、それは三ヶ月ほど変わらなかった。木野は風丸よりは静かだったけど、その他のクラスメイトよりは話をする、そんな仲でそれだけだったはずだ。

「ずーっと、ずーっと、いつサッカーするのかなって思ってたの」

つい最近まで騒がれていた連続校舎破壊事件に、フットボールフロンティア。帝国学園の強襲。何度だってサッカー部は苦難に見舞われて、そのたびに人数不足と戦力不足に喘いでて、木野はそれを一番近くでフォローしてた。

『………なんで、円堂たちに言わなかった?』

「こういうのは本人の気持ちの問題って私思ってるから。それに来栖くんが羽ばたくには両翼がいるでしょ?円堂くんは羽じゃなくて大地だから、円堂くんがそこにいても、風丸くんがいくら風を吹かしても、私が何か言っても飛ぶ気はなさそうだなって思ったから」

『…………』

「私はどうしたって同じ場所に立つことはできないから応援しかできないけど…助言はね、できるかなって…」

木野は目尻を下げて、やさしく俺を見つめる。

「怖くないよ、大丈夫、来栖くん」

『、』

「あんなにきれいに飛べるんだもん。来栖くんは今だって、飛べる」

『…………お、れには、もう、』

「今の貴方には片方の翼がないけど、それでも、来栖くんと一緒に飛ぼうとしてる人がいるよ。支えてくれて、背を押して、手を引いて、一緒に飛んでくれるの」

『…………』

「…ねぇ、本当の来栖くんは、サッカーしたいんじゃないの?貴方が諦めないなら…私は、応援するよ」

好き勝手に、言うだけ言って席を立った木野は、ハーフタイムを前に戻ってくる選手のためにドリンクとタオルを用意するマネージャーの輪に戻ってく。

さっきまでみんな横にいたのに、条助も立向居もいないベンチ。不動はフィールドを見つめているし、道也も冬花も傍に居なくて、途端に現状を理解して、ぽつんと一人残された俺がなんだか無性に――だとか思った。

そう気づいた瞬間にいてもたってもいられなくて、立ち上がる。物音に気づき振り返った道也や不動の視線を背中に受けたまま、口元を押さえてフィールドから逃げ出す。

走って、どこかの部屋に飛び込む。

胸を抑えたまま、ずるずると壁に背を預けながら床に座り込んだ。

大して走ってもないはずなのに息が上がっててる。バクバクと音を立ててる心臓と短く吐き出す息。背中を流れる汗は冷たくて手が震える。

立ち上がった拍子に無意識で掴んで持ってきてた携帯をいじって、保護メールを開こうと操作してることに気づいて止めた。携帯を投げると真っ暗な中で硬いものがぶつかる音だけが響いて真っ暗になる。

物に当たるとかアホらしい。

「ふふ、そんなことしたら携帯さんがかわいそうだよ」

ここにいるはずない声が聞こえた気がして、舌打ちをしようとしたはずなのに、気づけば小さく丸まり膝が額に当ってた。

「そうやって、カイトはすぐ投げ出しちゃうね」

ふわりと、柔らかい風が髪を撫でて、聞こえてはいけない声は楽しそうに、囁く。

「でも大丈夫だよ、オレがいれば」

『黙れ』

「オレがいつまでも守ってあげるからね」

『消えろ…っ』

「だからずーっと、オレと一緒じゃなきゃダメなんだよ」

『黙れってんだろ!うるせぇ!』

「…わがままだなぁ。そろそろ、観念しなよ」

優しいのに冷たくて、会話にもならなくて、俺の言葉は届かないし、彼奴の考えてることもわからない。

「オレとじゃなきゃ諧音は飛べないんだよ」

『っ、はっ、』

「オレが諧音を守って、オレが諧音を幸せにするよ」

あの時と同じそれに、目の前が滲む。

「ずっと一緒にいれば大丈夫。…ほら、こっちに、」

「来栖?」

聞こえてきた別の声、違う呼び方にぱっと顔を上げれば開いた扉から差し込んでる照明で照らされた不動の驚いた顔が見えた。

「お前、大丈夫かよ」

『…なんか用か』

「…………か、監督が探して来いって」

微妙な間の後に零された言葉に俯く。道也の心配性は相変わらずなんだし、訳もわからず駆り出されてるこいつは被害者だ。

ぱちんと音がして部屋の中が明るくなる。

不動が電気をつけたのはわかってたけど、急な光量に視界が眩んで、滲んでた目元を隠すように手で覆って、拭う。

「そんなとこ座って体調でもわりーのかよ」

『…別に』

一瞬視線を落とした不動はまた俺に合わせて口を開く。

「もう前半終わんから、戻ろうぜ」

『…勝手に戻れ』

「いいから、戻んぞ」

ぐっと腕を掴まれてすぐに払えば不動が眉を寄せてまた腕を掴まれた。もう一度振り払うには強く込められ過ぎてる力に舌打ちをして、不動を見据える。

『お前、人のこと避けてたと思えばしつけぇし、何がしてーんだよ』

「っ、それは」

明らかに動揺した不動に俺も眉を寄せた。

人のことを突き飛ばしてから一切目も合わせようとしなかったくせに今は妙に近い。俺もここ数分くらいは奇行に走ってた自信があるけれど、同等の挙動に不動を睨みつける。

しばらく静かになって、息を小さく吐いて、吸った。

「……――が、」

『あァ?』

口をもごつかせてなにか言葉を紡ぐ練習をした不動は、視線を合わせないで握る手に力を加えた。

「…―来栖が、心配だったから」

何でか知らないけど泣きそうな表情をしてる不動が視界を独占する。

「心配しちゃ、ワリィのかよ」

ヤケ気味に言われて返事をしそこねたのは、思った以上に健気な理由で、不安そうな表情が俺ん中の保護対象の冬花に重なったからかもしれない。

「来栖が変だったから心配して追っかけてきただけで、特にそれ以上の理由はねぇ、…戻んぞ」

さっきまで俺を蝕んでたなにかがなくなって、不動の痛すぎるくらいに力を込めて掴まれてる手が触れてる場所が、とても、熱い気がした。

すっかり伸びて視界の邪魔になってる前髪を空いてる左手で掴んで、顔を隠しながら息を吐く。

『…勝手な奴』

「っ、来栖にだけは言われたくねぇ!」

早く行くぞ!と勢い良く引かれた手に立ち上がって、不動と一緒にフィールドに戻るため歩き始めた。

響くのは俺達の足音だけで、大きな声がなにも聞こえないからハーフタイムに入ってるのかもしれない。

スパイクが床を踏みつける音がよく響いて、不動が俺を見る。

「本当に大丈夫かよ」

『別になんともねぇ。…何?そんな俺が心配なのかァ?』

茶化してみれば薄暗い廊下でもわかるくらいに顔を赤くして、視線を彷徨わせた。

「…っ、お、俺はお前が一番この中で強いと思ってんからその、勝つため来栖が不調だったら困るってそんな感じのやつで、俺が心配してんとかそんなんじゃねぇよ!」

支離滅裂な言葉を手当り次第に投げつけてくる不動。

『…お前もっとこう、一匹狼みたいなやつだったような気がすんだけどォ…?』

舌打ちをこぼした不動は早足で歩き出す。引っ張られるように進みながら前の不動の顔を確認する。

目元まで赤くなって照れてる様子に、いい奴を捕まえたんじゃないかなと、そう思った。


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