イナイレ
「染岡くん、佐久間くん、僕達の分も暴れてきてね」
「おう!」
「ああ」
「緑川…一緒に、行きたかったな」
「やれるだけのことはやった…後悔はしていない」
ぱんっと、薄くて軽い風船が割れた音が響いた。
僕や鬼道の目が向いて、そこにいた来栖くんが口を開く。
『お前らなんで最後の別れみてぇになってんだァ?』
「は、湿っぽいな。これで最後ってわけでもねーのによ」
座席に寝転んでる不動くんと同じようなことを言い、鼻で笑ってる。
「来栖、不動っ」
咎めようとしたらしい鬼道くんが声をあげたけど、続きは後ろに潜んで出番を待ってたらしい目金くんに遮られた。
「彼らの言うとおりですよ」
来栖くんも不動くんもどうでも良さそうに視線を逸らす。
「チームに合流すれば試合に出ることは可能です。世界大会でも選手の入れ替えは認められていますからね!」
きらっと目金くんの眼鏡が光って勢い良く言葉を発した。
話を聞いて、目を見開く。円堂くんが僕達を見た。
「…吹雪、緑川!待ってるぜ!世界と戦うためにはイナズマジャパンみんなの力が必要だからな!」
「がんばろうね!緑川くん!もう一度みんなとたたかうために!」
「ああ!頑張ろう!吹雪!」
基山くんも嬉しそうに笑って、染岡くんも待ってるぞと目を合わせる。
僕達の会話の向こうで、乃ノ実さんの持ってきてくれたお弁当に壁山くんを筆頭に声援をあげて、円堂くんもお礼を告げに向かう。
辺りを見渡す。弟子の子と喋る飛鷹くんや、お母さんと話してる虎丸くん、妹さんと家政婦さんと話す豪炎寺くんを視認して、それから、一つの集団を見た。
「ちょ、そんな長いとか聞いてねーし!俺一人でゲーセン行けと?!」
『腕でも磨いとけよ、ヘタクソ』
「そっかぁー、かいちゃんいないなんてさびしいなぁ」
『その痕隠してから来いっての』
「ライオコット島だっけ?なに用意してけばいい?」
『ついてくる前提かよ。来んな』
「ふふ、相変わらずつれないねぇ、かいとぉ」
『お前もその手にあるパンフなんだよ』
年齢と性別のばらけてるその集団は来栖くんに呆れた目を向けられてた。
「わ、わたし、行けないけど、諧音くんの応援してるよ」
ショートカットで少し日焼け気味の女の子が困った感じで伝えれば、来栖くんは息を吐いてその子の頭を撫でる。
「あれ?あの子…」
「山風じゃん」
豪炎寺くんが首を傾げてから円堂くんが目を瞬いて見つめる。
同じ学校の子なのだろう。木野さんはにっこりと笑って二人に告げる。
「来栖くん、未紀ちゃんとずっと仲いいのよね」
「仲がいいっていうか…あの後から彼奴ら付き合ってるって聞いたけど…」
「ふふ、どうなんだろうね」
風丸くんがちらりとあちらを見て、木野さんは含みを持ったせて笑う。
「あの後って?」
「あー…まぁ、ううん、いろいろ」
「いろいろね」
言葉を濁す風丸くんに木野さんはそれ以上何も言わない。
不思議に思いつつ向こうに視線を戻せば話がついたのか、来栖くんが息を吐いたところだった。
『申し訳なさそうにすんな。こいつらだって来なくていい』
「「えー?」」
『うぜぇ。きょうじ、ゆあ、お前ら来たら二度と近寄らせねぇからな』
「「そんなっ!」」
「あー、俺は応援しつつ大人しくゲーセン通うことにしたわ」
「僕も、適当につないでかいちゃん待ってるぉ」
『だいきとゆきや見習っておとなしくしとけ』
「「むー」」
二人くらい納得してなくて、来栖くんはめんどくさいと盛大にため息をついて頭を掻いた。
『…気が向いたら呼んでやんから、それまで待て』
「わかった!」
「待ってるよ!」
『お前らもな』
「え、俺も?」
「僕も呼んでくれるのぉ?」
『めんどいからそーしてやる。みき、お前もだ』
「わ、私も?」
全員の顔を一瞥してから来栖くんは笑った。
『じゃ、いい子にしてろよォ』
立ち上がった来栖くんはひらひらと手を振り歩いて、いつの間に来たのかそこにいた監督に寄っていった。
まったくそちらを見ていた気がしなかったのに、どうやって気づいたのか。不思議で目を瞬いてるのは僕や鬼道くんぐらいらしく、円堂くんは監督!と大きな声を出して挨拶のために近寄った。
×
しばらく顔も見れないし、頭くらい撫でてもけれど、男の馬鹿たちはまだしも、雷門の同級生や誌面で顔の知られてるらしい音無らの前でしたら後がめんどくさくなりそうで普通に別れる。
俺の周りに人が多いせいか、じろじろと見られて視線が煩わしかったからさっささと道也の側によって注目の先を移した。
「全員揃ってるな」
道也が集合をかけ、それぞれが駆け足で寄ってくる。
その際に虎の母さん、鈴目と豪炎寺のとこの家政婦に頭を下げられ、優香に手を振られ、端っこで見守ってた唐須チャンに頑張れと口パクされた。
近くで揺れた茶髪に視線を向ける。
「来栖、がんばれよ」
『誰だァ?』
「半田!二年間とも同じクラスだろ!?」
『知らねぇわ』
まったく見覚えがない半田はきゃんきゃん吠えていて、仕方なさそうに息を吐いた風丸に宥められてた。
「今から搭乗する。全員ついてこい」
ぞろぞろと向かうそいつらに最後に大きく手を振ってる面子に軽く手を振って返す。
少し長い通路を進んで乗り込んだ飛行機に、事前に渡されていた搭乗券についている番号の座席に寄る。エコノミーの造りらしく、二列、三列、二列で通路を挟んでいる座席の、最後尾、窓際。余りらしく隣に誰も来ないようになっているのは座席を割り振ったであろう道也の配慮だろう。
窓の外は青一面。普段は上にある雲が下に存在することで前の席の二人は覗きこんで騒いでた。
飛行機に乗るのが初めての人間が多いらしく、特に虎が楽しそうに笑っている。
「かかかかかいと、ゆ、ゆれてるっ」
『離着陸以外そんなに揺れてねーだろォが』
飛行機が離陸して少し。ずっと震えていたと思えば降ろせと大騒ぎし始めたこいつは、空席だった俺の隣に縛り付けられた。
ぷるぷると震えて俺にくっついて賑やかすぎる。
ゲームが勝手にマナーモードでやりづらい。続けるのは諦めて違うものを取り出した。
『ガム食うかァ?』
「いいいいい」
『そ』
新しいガムを開けて口に入れて、顔を青くしてるそいつの額を叩いた。
「か、諧音?」
上がった視線。つけてたイヤホンを片方外して長さを最大まで伸ばして条助の耳にはめる。
「な、に?」
震えるのを忘れて目を丸くしてる姿を無視して携帯を取り出し、連動させてるイヤホンに音楽を流し始めた。
『うるせぇんだよ条助。少し黙ってればすぐつくってのォ。仕方ねぇから肩かしてやる。それまで目つぶってろ』
「か、諧音…っ、ありがと!」
頬に唇をつけ、その後に膝に頭を乗せてきたそいつはおとなしく目を閉じた。
『…膝貸すなんて言ってねぇんだけどォ?』
身動きも取れなくなって仕方なく俺も目を閉じることにした。
×
ぐっと揺れる感覚。咄嗟に膝の上に乗ってるものを落ちないように押さえて、目を開けた。
知らない間に眠ってたらしい。窓の外には地上と、それから建物がそびえてる。
音楽を止めるために携帯を出して、届いていたメールに気づく。
『……はっ』
中身を見て、思わず空気が漏れた。
一度目を瞑って気持ちを落ち着けて、目を開く。携帯をしまってから、人の膝の上で眠りこけてる条助に手を伸ばす。
『ついたぞ、起きろ』
「ん〜」
『…起きねぇともっかい離陸すんじゃねぇか?』
「は!」
ばっと起き上がった条助はきょろきょろとして、俺の向こう側にある窓に張り付いた。
「地上!!やった!諧音!地上だ!!」
嬉しそうに俺に抱きつく条助に息を吐く。
『おー、早く降りねぇとまた飛んじまうぞ』
「降りる降りる!降ろしてくれ!」
『とりあえずベルト外せばァ?』
手を伸ばしてロックを外す。解放されたことで勢い良く立ち上がった条助は地上ーっ!!と通路を駆けていってしまって、仕方なく自分の分と隣に置き去りにされた荷物を持って立ち上がった。
ついでに通路を挟んだ向こう側、未だ座ったままの眠ってる肩を掴んで揺さぶる。
「んん、」
『起きろ、不動』
「ん、?」
『お前も降りねぇと置いてかれる』
「くる、す…?」
『来栖だ来栖。ほら、もう誰もいねぇから早く行くぞ』
「あ、ああ、」
目元を擦って立ち上がった不動も荷物を持って、一緒に通路を抜ける。通路の先に全員揃っていて、目立つピンク色に近寄った。
『条助、荷物』
「あ!忘れてた!!サンキュ!諧音!」
受け取らず抱きついてきた条助に周りがテンション高いなぁと笑って、不動が目を丸くした固まる。
『はしゃいでねーで、来た荷物取りいってこいよ』
「おう!あ、諧音のも取ってくるな!」
『ん、頼んだ』
動き始めたコンベアーは人が群がっていて近寄る気にはなれない。条助に任せて壁際に寄れば不動も近寄ってきて目を合わせた。
『荷物取ってこねぇの?』
「混んでるし空いてから行く」
『違いねぇな』
どうせ全員分の荷物が降ろされて流れてくるまで時間がかかる。取り出した携帯に数時間前に別れた人間たちのメッセージが入ってたから返事を送って、それからさっき来てたあのメールを開き直す。
これは返事をするべきか。
「な、なぁ」
『あ?』
「その、…お前、英語話せるんだよな?」
『んー、まぁ困らない程度にはァ?』
「…なら、」
「諧音おおおお!」
『うるせぇ。人の名前叫ぶんじゃねぇ』
「おまたせ!!取ってきたぜ!!」
『ん。よくやったなァ。偉いぞ』
「おう!!」
褒められて笑う条助の両手にある荷物から片方を受け取って、代わりに持っていた荷物を返す。ぱたぱたと足音が寄ってきて立向居が俺達を見据えた。
「諧音さん!綱波さん!不動さん!荷物取ったらあっちに集合して点呼みたいです!」
「お!りょーかい!」
『ん』
「…………」
頷いた俺達にはどこか期待した目で俺を見上げるから、息を吐いて頭に手を乗せる。短く撫でれば立向居はへにゃりと笑って、相変わらず子犬みたいだ。
『あんまおせぇと文句言われそうだし、行くぞォ』
条助と立向居が和気あいあいと進みだして、俺も進む。止まったままの不動に振り返った。
『不動、なにぼーっとしてんだァ?』
「………今、行く」
『ああ』
一瞬視線を落として返事をする不動に違和感を覚えて、口を開くより早く向こう側から名前を叫ばれた。
「諧音ー!」
『だから人の名前を叫ぶな』
「はやくはやく!外行こうぜ!」
『テンション高すぎだろォ…』
「すごいですよ!外にお花がたくさんが飾ってあります!」
『そうかよォ…』
頭を押さえる。最初からこんなにテンションが高くて、こいつら夜にはバテてしまうんじゃないだろうか。
一瞬コンベアに寄って荷物を取った不動はさっきとは違い、きちんとついてきていたからそのまま進む。
いくつかのゲートを抜けて、降り立った場所はサッカーと南国で賑わう場所だった。
『まぶし…』
照りつけてくる太陽の光に目を細めても意味がないのはわかりきっていて、一度目を閉じた。
「バスが来たらそこに乗り込み、寮まで向かう。寮についた後だが___…」
向こう側から道也の声が聞こえる。
返事をしたいくつもの声は浮かれてる。道也が話終われば誰も彼も辺りを見て歓声を上げたりパンフレットでも覗いてるのか話し始めてた。
「おい、大丈夫か?」
『まぶしい、だけ…』
「たしかに直射日光やばいな」
不動の声に生返事をして、こんなことなら色付きの眼鏡か帽子でも用意してくればよかった。
「なぁ、キツイなら…」
「あ、きたきた!」
うるさい円堂の声がバスの到着を知らせる。それ以外の声も聞こえるから、息を吐いて動き出すために瞼をあげようとした。
「Kaito!」
目を開けるよりも早く、声をかけられ肩に触れられる。
懐かしい、香水の匂いがした。
開いた視界に飛び込んできたのは顔のドアップですぐに口が塞がれる。ふにりとした柔らかい感触。
さっきまでの賑やかさは嘘のようにイナジャパが静まりかえって嫌な空気が漂う。条助の目のハイライトが消えて、不動が固まって、道也が額を抑えてた。
『……』
ゆっくりと距離を置いた顔はご満悦と語っていて、更に頬にも唇を寄せてから離れた。
「
『
「
『
「
到頭まくし立てるように話し始めて会話にならなくなったから鳩尾を蹴り上げた。めり込んだ膝に全て言い切ることなく崩れ落ちる。
『ザマァ』
×
そのまま放置して荷物を持ちバスに乗り込もうとした来栖に、監督が深々とため息をついて呻いてるその人をバスに乗せた。
「もう少し周りを見て行動してくれ」
置き去りにして日本代表の悪評がついたり出場停止にされたら困る。ってことらしい。
来栖の隣に乗せられたその人はまだ腹を抱えていて、当の本人は知らん顔してガムを噛みながらゲームをしてる。
感覚的に1曲分。わかってしまうようになった自分が嫌だと思いながらクリアしたんだろうゲーム機を来栖がしまうと、隣から唸るような声が溢れて顔を上げた。
「諧音…お前…」
『うぜぇ、くたばれ』
片耳ずつイヤホンを外していく来栖は聞こえてきた声に雑に反応する。
来栖の言葉にか、さっきまで悠長に英語を喋ってたその人が日本語を喋ったからか、周りの声が小さくなり視線をちらほら向けた。
その人はむっとして、口を開く。
「ひどいじゃないか。俺様からの挨拶に蹴りで返すとかありえないだろう??」
お、俺様って言った?
あれ挨拶?
どこの国の人だよ
え、日本人?
突っ込みたいのか所々からこらえきれなかった心の声が聞こえてくる。
そもそも黒髪をオールバックにして、スーツを着てるなんてえらく大人っぽい。塔子もそうだったけどもっと貫禄のあるそれに、どんなことしたらそんな服着ることになるんだろうか。
『いい加減にしろよ、しょっぱなから他国語で話しかけやがって。つか、挨拶は言葉だけで交わすもんだろーが。そっちだって親しくなきゃ口になんてしてねぇだろォ』
「何がいけないんだ?諧音は俺と親しいだろう?」
『…はぁ。マジそういうとこきらいだわァ』
来栖はガムを噛みしめながら外を眺める。
言われた内容を理解できてないのかぱちぱちと瞬きをしたあとに視線が逸れていることにかその人は不服そうに足を組んで腕を組む。
「俺を無視するな」
『勝手に乗り込んでおいて何言ってんだァ?』
「…諧音は本当に冷たい。ひどい奴だ…」
『何を今更』
一切目を向けず交わされる会話に、いつ喧嘩になるかとヒヤヒヤする。
当の本人らはその危機感は伝わってないの会話を続けていて、またそれが怖い。
そわそわする俺達を尻目に、ふっと空気を柔らかくしたその人は来栖を見て目尻を下げた。
「日本代表…さすがじゃないか」
『お前に言われても嬉しくねぇっつーのォ』
「変わらないな。…人の賛辞は素直に受け取るべきだ。………彼奴は…一緒じゃないんだな」
『…………』
何も答えずにゆっくりまぶたをおろした来栖に、俺は違和感を感じて首を傾げ、その人は追求せずに来栖の頬に手を伸ばして殴られた。
「っ、」
『調子のんじゃねぇよ』
バイオレンス過ぎてそれ以上覗くのはやめようと目を逸らす。
外はイタリアエリアに入ったのか町並みが変わっていて、円堂の声にバスは止まった。
×
周りの視線が外に移る。
俺の座っている席は目的とは逆方面だから、隣に目をやった。
『こんなとこで何やってんの?』
「親とサッカー見に来てた…」
腹を押さえてうずくまったまま答えられ、ふーんと返事をする。
親と来てるなら、顔見せくらいするべきだろうか。
「ここ、泊まってるから顔出せよ」
スーツの合わせから取り出されたケースから引き抜かれたカードを見て眉根を寄せる。
『なんで名刺の裏に宿泊施設の名前まで書いてあんだァ?』
「……まぁ、諧音が元気にしていて俺はよかった」
『お前も無駄に元気そーだよなァ』
「俺様が体調不良なんてありえないだろう??」
『風邪ひいたら熱出してめんどくさくなる奴が何言ってんだ?』
「、それは昔の話だっ!」
声をつまらし眉根を寄せる姿に肩を揺らす。
笑われたことに咳払いをしたと思うと頬を掻き、俺を見つめる。
「諧音」
『なんだァ?』
「……いや、まだそうじゃないな。………なぁ、この日は時間あるか?」
差し出されたスケジュール帳を見れば二日後の日程で、予定通りなら初戦相手も決まっているかどうかの日付に反射で口を開く。
『暇だと思うけど?』
「まだわからないなら予定が分かり次第連絡をくれ」
『だりィなァ』
「絶対に、寄越せ」
念押しをされて息を吐く。連絡を約束させようとするのは俺が音信不通になったことが原因だろうし、この寂しがりやがどんな気持ちで俺を探してたのかなんて再会したときの笑顔でわかる。
誰の視線もないことを確認して、締められてるネクタイを引いた。
短く重ねて外した唇の端を上げる。
『
「……っ、ばかじゃないのか」
今までずっと気を張ってたのに、随分と緩んだ表情を浮かべた。ワックスで撫で付けられた前髪も、何十万もするスーツも似つかわない年相応な顔が、すごく落ち着く。
『似合わねぇ顔つくってんじゃねぇよ。普段からそうしてろォ』
「…俺様の表情崩せるのは昔からお前らだけだよ
笑ったせいが近づいて、撫でるように前髪が避けられて晒された額に唇が寄せられた。
「…本当に…また、会えて…、よかった」
言葉をつまらせて瞳に光を滲ませてるせいに小さく謝って、手を重ねる。それで落ちついたのか俯いたせいにバスが動き出して、窓の外を見る。
イタリアエリアで盛り上がってた連中は勢いはそのままに会話を続けているようで、こちらを窺う視線は少ないから、そのまま目を瞑って隣の肩に頭を乗せた。
×
「諧音、絶対に連絡するんだぞ」
『覚えてたらなァ』
イタリアエリアで少し時間をとったものの、無事に日本エリアの宿についた。
他の奴らが荷物を下ろす傍ら、スーツも髪も直したせいは作った表情で腕を組み息を吐いてる。
「無理はするな。なにかあったら言え。そうでなくとも連絡は毎日するように」
『勝手に決めんな』
息を吐いて視界の端に映り始めた車にまた息を吐く。
『迎え来てんぞォ』
「…本当だな。…仕方ない、帰るか」
車から降りてきた黒スーツに答えてるそれはまた英語でイナジャパ共が二度見して、せいは気にせず最初と同じように口と頬に唇を落とし、更に耳元に鼻先を擦り寄せる。
「I’m always here for you.」
すっと離れると、ぱっと笑った
「See you later, alligator!!」
まだ言ってんのかそれ
『See ya.』
満足気に車に乗り込んだ姿に息を吐いて横に置いていた荷物を持つ。
「諧音さんすごいです!英語ペラペラじゃないですか!」
「諧音さんさすがです!お知り合いたくさんいるんですね!」
後ろから目を輝かせてついてくる虎と立向居に適当に返事をして、イヤホンを耳にかけながら宿に入る。靴を脱いで持ち、事前に聞いていた割当済みの部屋に入った。