ヒロアカ 第二部
朝練を初めて四人でやった。
出久と勝己と人使は俺が居ない間に二回ほどやったことがあるみたいだったけど、俺を含めたのは初めてで、いつかにやった空中鬼ごっこの応用。
二対ニの鬼ごっこは出久の猛反対にあったものの仁義なきじゃんけん勝負で人使が俺のペアになり、片方が捕まっては助けを繰り返してれば引き分けで朝練が終わった。
「あ!緑谷さん!」
ぱぁっと目を輝かせてこちらに走ってきたのは上鳴くんで、嬉しそうなその顔になんだか子犬が駆け寄ってきてくれてるみたいで思わず笑みが零れた。
『こんにちは、上鳴くん』
「こんちは!心操もちは!」
「ああ、こんにちは…?」
明るい挨拶に元気な子だなぁと頷けばぱたぱたと後ろから足音が寄ってきて上鳴くんの横に並ぶ。
「置いてくなよー!」
「上鳴急に走り出してどうした??」
「あ、緑谷さん!こんちわっす!」
『うん、こんにちは』
ついてきたのは切島くんと、あまり見覚えのない黒髪の子でその後ろからゆったりとした歩調で勝己が現れて息を吐いた。
「出留見つけたからって走ってくなや。犬かてめぇは」
「だって日中会えんのってレアじゃん!」
『クラス違うとなかなか会えないもんね』
「階数違うからな」
人使があっさりと返してそれにしても上鳴くんとその後ろの二人を見て勝己を確認する。勝己はちらりと黒髪の子を見て頭を掻いた。足を進めて俺の背を叩くと目を合わせる。
「瀬呂範太」
『せろくん』
「ん。で、緑谷出留な。覚えろしょうゆ顔」
「、あ、俺?」
黒髪の子は驚いたみたいに肩をゆらしてそれから笑う。
「こんにちは、はじめまして!瀬呂範太です!緑谷のお兄さんですよね!いつもお話うかがってます!」
『はじめまして。緑谷出留です。挨拶が遅くなってこめんね?これからも出久も勝己と仲良くしてあげてくれると嬉しいな?』
「はい!もちろんです!」
ぱっと笑ってくれた瀬呂くんは一歩後ろから周りをしっかりと見れるタイプらしい。勝己と切島くんと上鳴くんと瀬呂くん。若干タイプが違うからこそ仲良くできてるんだろう四人に、勝己が良好な交友関係を築けてるようで嬉しくなる。
「切島ー!ペン忘れてるー!」
「うげっ、まじか!芦戸サンキュ!」
軽やかに掛け寄ってくる足音。大きく振ってる手には細長い袋が握られていて筆箱らしい。
切島くんにそれを差し出したところで芦戸さんはあ!と目を丸くした。
「お兄さん!おはよ!」
『おはよう、芦戸さん』
「お兄さんひさしぶりだね!元気だった!?」
『うん、元気だよ。芦戸さんも元気そうでよかった』
「アタシはいつでも元気100%だから!」
力こぶを作った芦戸さんはそのまま隣の人使にもうえーいと笑いかけて、その勢いに押されてる人使は挨拶もそこそこにすっと俺の後ろに隠れた。
『ははっ、どうしたの?』
「陽キャオーラが強すぎて直視してたら焼かれそう」
「えー?アタシ別に陽キャじゃないよー!」
「芦戸はむっちゃ陽キャじゃね?あと上鳴も陽キャ」
「うえ、俺も?!」
「わかる」
瀬呂くんの言葉に人使が同意を零す。勝己は付き合ってらんねーと足を進めようとして、きょとんとしてた芦戸さんがあ!と大きく声を出した。
「そういえばお兄さん!この間お惣菜ちょっともらったの!すっごく美味しかったよ!ごちそうさまです!!」
『ほんと?芦戸さんの口にもあったならよかった』
「もーすっごくおいしくて!鶏肉もやわらかかったし、ピーマンの和えたやつの味付けもすっごく好きだった!!」
『そ、そっか。…ありがと』
「あんなに美味しい料理食べれるなんてほんと羨ましい!」
『…え、えっと、』
がんがん話してくれる芦戸さんの笑顔に視線を泳がせるしかなくて、段々と熱くなってくる顔に俯いた。
『あ、えっと、褒めてくれてありがとう。…その、もしよかったら今日の夜ご飯出久とか人使も一緒だから、芦戸さんもどうかな』
「え!いいの!??」
『うん。ほんと素人の手料理だからよかったらなんだけど…』
「食べる!食べたい食べたーい!!」
ぴょんぴょんと跳ねた芦戸さんは俺の手を取って上下に振って、勢いに目を瞬いてしまえば視界の端で勝己があからさまに呆れた顔をして人使が苦笑いを浮かべた。
「お兄さん!ほんとにいいの?!」
『もちろん』
「っ〜やったーっ!!」
こうも全身を使って喜びを顕にされると嬉しい。
『芦戸さんはなにが好きなの?』
「おにくー!」
『ははっ、そっかぁ』
「だからこの間の鶏肉もすごく好きだったし、あ!でもヤオモモの食べてたお芋のも美味しそうだったなって思った!」
『あれ?八百万さんも?』
「うん!あの時はアタシとヤオモモと上鳴が居たの!」
『そうだったんだね』
良質なものをずっと食べている八百万さんまで他人の手料理を口にしたなんて意外だ。
「緑谷さんっ!」
大きな声に芦戸さんがきょとんとして俺も目を瞬く。
「あああの!俺も!料理食べたいです!」
『ん、いーよ』
「やったぁ!!」
「…アホ面、てめぇ便乗してんじゃねぇぞ」
「出留、大丈夫なのか?」
『うん』
飛び跳ねた上鳴くんの首根っこを掴んで目を見開く勝己に、心配そうに俺を見つめる人使。
芦戸さんと切島くんはおろおろしてて、瀬呂くんは不安そうに表情をかためてる。
二人の言葉の意味はわかってるから人使の背を二回叩いて笑って、勝己の頭をなでた。
『みんなで食べたほうが楽しいでしょ?…あ、せっかくなら先生にA組のキッチン借りられるか聞いてみようかな』
「はぁ?そこまでする必要ねぇわ」
『勝己と轟くんも毎回食べ終わってから帰るの大変でしょ?みんながC組に来る申請するより行き来も楽だし、昼休みに確認してみる』
「んなことしたら余計なのまで釣れんだろうが!」
『クラスメイトな?』
髪を撫でて退かし、寄ってる眉間の皺に指を置く。どうにも深いそれをなぞって解いたところで目を合わせた。
『勝己の好きなもんいっぱい用意するね?』
「………ちっ。予定にねぇ奴の分は用意すんな、放っとけ」
『んー、検討しとく』
とんとんと額を撫でて前髪を戻す。みんなの心配そうな顔に斜め上を見て、次回に入ったそれにあ、と声が漏れた。
「どうした?」
『そろそろ予鈴鳴るね』
「「え」」
「やば!」
「遅刻する?!」
俺と同じように飾ってある時計が目に入ったらしいみんなが慌て始めて、勝己の頭を二回撫でてから手を下ろした。
『また後でね』
「………俺も手伝う」
『ほんと?助かる。ありがとう』
ふくれた頬が落ち着いた。そわそわしてるみんなに向かって勝己の背を押した。
『いってらっしゃい。頑張ってね』
「…ん」
「うっす!」
「お兄さん!また後でねー!」
「晩御飯楽しみにしてます!!」
「緑谷さんと心操も勉強頑張ってください」
「ああ、ありがとう。出留、行こう」
『うん』
大きく手を振ってくれるみんなに手を振って、急ぎ足で教室に向かう。
美術の授業を二単元分終わらせれば放課後は先生と人使と訓練だ。
荷物をすべて片したところでいつもの荷物を持って訓練室に向かう。
捕縛帯とペルソナコードを纏った人使とまずは準備体操の鬼ごっこをして、時折反撃していく。体育祭が終わったばかりの訓練を始めた時から比べたら随分と早く鋭く動けるようになって、迷いもミスも少なくなった人使の動きに負けないよう動いて、ぶっ倒れるとまではいかずとも床に座り込んだ人使に準備体操は終わりになった。
「あー!」
『さっき惜しかったね』
「捕まえられない!悔しい!!」
ジタバタとする人使に笑っていれば足音が近づいてきて人使が起き上がる。
「本当によく成長してる。さっきは惜しかったぞ、心操」
「ぐっ、ありがとうございます…」
人使の悔しそうな顔に先生は笑みを溢して、そういえばと顔を上げた。
『先生、一つ相談したいことがあるんですけど今いいですか?』
「…珍しいな。…なんだ、言ってみろ」
『今日の食事、もし可能ならA組寮のキッチン借りたいんです』
「…C組の寮内でなにかあったのか?」
『あ、トラブルとかじゃないです』
眉根を寄せた先生に慌てて言葉を並べる。
『今日は出久と芦戸さんと上鳴くんも一緒にご飯する予定で、それならC組に来てもらうよりもA組に俺が行ったほうが早いと思って』
「芦戸と上鳴?」
目を瞬いた先生はすぐに横を見る。人使はこくりと頷いた。
「移動時間中に顔を合わせたんですけどそのときに前に作り置きを食べた二人が出留の料理絶賛して、今日の夜ご飯みんなで食べるから良かったらって流れになりました」
「ああ、たしかに食ってたな彼奴ら…」
頭を抑えた先生は心当たりがあるらしい。担任をしてるクラスの寮なら足を運ぶことがあってその時に見たんだろう。
迷うような目の後に険しい顔のまま口を開いた。
「お前が用意する上に、わざわざ都合を考えてやるのはおかしな話じゃないか?」
『そうですか?食べに来てくれる人数分の申請かけるくらいなら向こうで作ってたそのまま食べたほうが手間は少ないでしょう?』
「……………しかし…寮内で調理するとなれば他の生徒も気にかけるだろう」
「あ、そのやりとり爆豪ともしてます。料理の支度は俺と爆豪も手伝う予定です。片付けはまだ決まってないですけど皆にやってもらう形がいいんじゃないかって提案しようかと。爆豪が他の奴は放っとけって言ってました」
「………はあ。そうか」
先生の折れた空気に人使を見て、目があったからありがとうと言っておく。俺一人じゃ利用許可は降りなかった可能性が高い。
『お時間くださってありがとうございました。訓練時間削ってすみません、今日もよろしくお願いします』
「……ああ。心操、待たせたな。始めようか」
「はい!お願いします!」
人使との訓練はいつもどおり組手や鬼ごっこ、それから捕縛帯の操縦。俺に対しても容赦なく指示が飛んでくるからそれに応えていれば二時間が経っていて、先生の終了の合図について人使は床に座り込んだ。
「お疲れ様でした…」
『お疲れ様でした。はい、飲み物』
「ありがと…」
ボトルを渡したところで人使は水分補給をして息を吐く。
情報を更新した先生はタブレットから顔を上げて、目があったところで首を傾げた。
『先生、今日の夜ご飯もう決まってますか?』
「、…今日はこの後仕事が入っていて適当に済ませる予定だ」
『あ、そうなんですか。頑張ってください』
「ああ。詳細が分かり次第インターンも兼ねて共有をするからそのつもりで頼む」
『はい』
キッチンの許可は取ってあるからと言付けて訓練室を離れていった先生に体力が回復したらしい人使が立ち上がって、二人で一度寮に帰る。
汗を流して、用意しておいた荷物を持ってA組に向かう。腕にかけた袋に詰まってるそれに人使は同じように鍋を持ってくれていて大きく息を吐いた。
「手伝うって言ったのになんでもう準備してあるんだ…」
『出久が一緒の予定だったからたくさん作っとこうと思ってさ。昨日のうちから用意してたのあるんだよね』
「手伝いたかったのに…」
不服そうな人使は朝から何を作るのかと張り切っていたから肩透かしを喰らった気分なんだろう。
寂しそうにも見える表情と一緒にA組の寮にたどり着いて、扉に手をかける。
『用意してるのは煮込む系のものだけだからさ。今日大量に必要な炒め物とかは人使にたくさん任せる予定。…そんな風に落ち込んでる暇ないくらいこき使うよ?ちゃぁんとついてきてよね、相棒』
「、ああ!まかせてくれ!」
扉を開けようとすれば先に開いて、目を瞬くより早く中から迎え入れた。
「兄ちゃん!!」
『出久!迎えに来てくれてありがと!』
「待ちきれなかったんだもん!」
『あーっ!うちの子かわいい!!お腹は空いてる??』
「もうぺこぺこだよ!兄ちゃんのご飯が楽しみで仕方なかったんだ!」
『そっか〜!すぐに用意するからね〜!』
「楽しみ!!心操くんもよろしくね!」
「ああ」
出久の笑顔に頬を緩めて、三人で中に入る。
放課後ゆえかまばらながらも人のいるロビー内に、中にいたA組の子たちは顔を上げた。
「あー!待ってたよおにーさん!心操!お疲れ様!いらっしゃい!!」
『おまたせ』
「おつかれさま」
「あれ?お兄さん??」
「お兄様に心操さん…?」
「緑谷さんと心操、そんなに荷物持ってどうしたんだ?」
「家出??」
不思議そうなのはたまたま一緒にいたらしい麗日さんと八百万さん、それからたしか尾白くんで、声には出さなかったものの目を瞬いてる常闇くんや耳郎さんもいる。
人使はちらりと出久を見て、自慢気に出久と芦戸さんは揃って胸を張った。
「今日は兄ちゃんと心操くんがご飯用意してくれるんだよ!」
「お兄さんと心操プレゼンツの晩餐会なんだぁ!!」
「「晩餐会??」」
目を丸くした尾白くんと常闇くん。八百万さんと耳郎さんは顔を見合わせて、麗日さんはえ、と言葉を零した。
「デクくんのお兄さんのご飯て、あのデクくんと爆豪くんが胃袋をガッツリ掴まれてるっていうあの??」
「そう!あの美味しすぎる料理!アタシと上鳴も胃袋掴まれてるからお願いして食べさせてもらうことになったの!!」
「な、なんやて!!?」
かっと目を見開いた麗日さんに八百万さんがそっと近寄ってきて、申し訳なさそうに自分の両手を繋いで俺を見上げた。
「お、お兄様。先日は私もご相伴に預からせていただきましたの。勝手にいただいてしまって申し訳ありませんでした」
『うん、芦戸さんから聞いたよ。味大丈夫だった?』
「大丈夫どころかとても美味しかったですわ!!あのお味を我が家でも食べられないかとお願いしている最中ですの!!」
『んん、普通の手料理だからね?八百万さん家の食卓に出すのはちょっと…』
「いいえ!私、お兄様のお料理をいただいてとても感動いたしましたの!あんなにお芋とお肉が合うなんて初めて知りました!深みのあるお味で、お醤油とお砂糖以外にもなにが入っているのかと…はぁ。あの味…もう一ついただいておけばよかったですわ…!」
『、』
先日は上鳴くん、今日は芦戸さん、それから八百万さんと相対して言葉をぶつけられると体温が上がる。
どこを見たらいいのかわからなくて俯けば服がつままれて、出久が嬉しそうに笑ってた。
「八百万さんまでそんなに褒めてくれるとすごく嬉しい!!」
「緑谷本当に嬉しそう…」
「うん!だって僕の兄ちゃんが褒められてるんだもん!嬉しくないわけがないだろ?!」
頬を赤らめて大きな声で弾けんばかりの笑顔をうかべてる出久にみんながブラコンしてるなぁと笑って、そわそわしてる麗日さんと耳郎さん、思い出してるのか上の空の八百万さんに体温が落ち着いたから顔を上げた。
『もしよかったら一緒に夜ご飯食べない?』
「あー!兄ちゃん!」
「、出留」
両サイドから非難がましい目が刺さって思わず笑う。
『流石に今から一人分フルは用意できないけど…おかずとか、一緒に食べられたらどうかなって』
「丸々よりはいいかもしれないけど…」
『せっかくこっち来たし、みんなから普段の出久と勝己の話も聞けたらいいなって。だめかな?』
「んんっ!!もう!!!」
『もちろんみんなが良かったらだけどね?』
目の輝いてる麗日さん。八百万さんと耳郎さんが申し訳なさそうながらも嬉しそうに口を開いた。
「うまっ。なんやこれ、うんまっ!!」
『気に入ってもらえたなら良かったよ』
「兄ちゃんのご飯すっごく美味しいよね!!」
「うん!ほんとどれもこれもおいしい!」
「んん!おいしー!こんな美味しいの食べれるなんて爆豪と轟、羨ましすぎる!!」
「どうして緑谷の兄ちゃんは姉ちゃんじゃねぇんだっ!?」
「姉さんなら求婚してる…!」
「お兄さんみたいな料理上手、気立てよし、成績良し、スタイル良しの姉なんて奇跡みたいな存在がいたとしてもアンタらだけは選ばないだろうから安心しな」
「本当の事でもひでぇよ!耳郎!」
たまたま会ったみんなに料理の話になって、それならみんなでご飯でもとなったと、俺が伝える前に出久から連絡が行ってたらしい勝己は帰ってきて早々飽きれたみたいな顔で俺の頭を叩いた。
手伝うと言ってくれてた人使はもちろん、帰ってきた勝己とも一緒に料理を用意して、それから食べ始めるなり褒められる。
元々気に入っていてくれたらしい上鳴くんと芦戸さんと八百万さんだけでなく耳郎さんに麗日さんも口元を緩ませて、おかずをそっと横から一口食べた峰田くんや瀬呂くんも目を見張ってくれた。
いつのまにか葉隠さんや蛙吹さんも居てみんなでおかずを分けて食べてくれてる。
隣の出久と勝己ももぐもぐと食べすすめてくれていて、向かいに座る轟くん、それから人使が米のおかわりをよそった。
「出留の料理を毎日食べてた緑谷が羨ましいな」
「ふふっ!兄弟の特権だよ!」
『最近は人使も食べてるんだから同じじゃない?』
「僕ももっと兄ちゃんのご飯食べたい!」
『じゃあ今度弁当作るな?』
「わーい!」
手放しで喜ぶ出久の髪を撫でて、そうすればばたばたと足音が聞こえてきたから迷わずに来れたのかと顔を上げる。
「緑谷さん!」
『発目さん、お疲れ様』
「ご飯いただきに来ました!まだありますか!」
『用意してあるから大丈夫だよ。はい、発目さんの席はここね』
キラキラとした目で素早く腰掛けた発目さんに飯と汁物をよそって配膳する。箸を取るなりいただきますと食べ始めた発目さんはなかなかのハイペースで、お茶を注いだコップを置いて顔を上げればA組の子たちがぽかんとした顔でこちらを見てた。
「サポート科の発目さんじゃないか…?」
『うん、発目さんだね』
「もしかして緑谷さん、サポート科まで見てんの?」
『そんなまさか』
「発目さんは胃袋をすっかり掴まれて、思い出した頃に突撃してくるんだ」
「はい!緑谷さんのご飯はとっても美味しいですから!私も食べれるなら美味しいものを食べたいですからね!おかげでベイビーたちも絶好調ですくすく育っております!」
「その言い方は色々と誤解を招いてしまうのではありませんか?発目さん…」
戸惑う八百万さんに発目さんは気にせずご飯を食べて、慣れてる人使も同じようにせっせと飯を食う。
あまり周りを気にしないタイプらしい轟くんは目の前の食事に集中しているようで出久と勝己が俺を見てから目を合わせ、仕方なさそうに首を横に振ると食事を再開させた。
「兄ちゃんのご飯が一番好き!」
『ほんと?ありがと、出久』
笑顔の出久を抱きしめて頭を撫でる。
「俺も、あの肉のやつ好きだ」
『おー、また作るからな』
何故か張り合ってきた轟くんに笑う。
全て食べきって、片付けくらいはと勢い良く手を上げてくれたみんなの中で、妙にやる気に満ち溢れてた麗日さんと八百万さん、それから上鳴くんに手伝いを頼んだ。
「あ、あの、お兄様!」
『ん?』
洗い物をしながら声をかけてきたのは八百万さんで、その隣には麗日さんも並ぶ。首を傾げれば両手を握りしめた状態で前のめりになった二人が口を開いた。
「お料理をご教授いただけないでしょうか!」
『料理?』
「はい!お兄様の作ってくださるお料理に私!本当に感動いたしましたの!手料理の美味しさというのは素晴らしいですわ!以前お夜食にいただいた甘辛煮を自らの手で作ってみたいのです!」
「うちも!お兄さんの作ったご飯ほんっと美味しくて一生食べてたい!私もあんなふうにご飯作ってオカンとオトンに食べさせてあげたいの!」
「俺も俺も!料理できるとか絶対将来役立つ!忙しいのは承知なんで!ほんと!一回でいいから!お願いします!緑谷さん!教えてください!」
『……そこまで言ってもらえると、嬉しいや』
三人の熱量に目を瞬いて、頭を掻き笑う。
『…うん。……俺で良ければ…俺も、みんなと一緒に料理したい』
「っ〜!」
「「「ありがとうございます!」」」
三人の揃った声に頬を掻いて、声が聞こえてたらしい出久と勝己が目をつりあげて飛び込んできた。
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