DC 原作沿い


最近俺の家に会えるようになったライくんとバボくんとスーくんは、同じぐらいのタイミングで同じくらいの功績を残し同じお酒がもとの名前をもらったからかセット扱いが多いらしい。

俺はいつも単独での任務だし、お迎えはアイくんが基本で遊びに行くのはベルねぇさんやキャンねぇ、コルにぃであまり関わる予定がないから三人が仲良しでも仲良くなくてもあまり気にならない。

それがなぜか、顔合わせをしたときからバボくんには怖く、スーくんは生易しく、ライくんはじっと見てきてきて、三人態度は違えどそれぞれがかまってくるから視線に疲れるようになってしまった。

疲れを癒やすために三人が居ない間にソファに横になって、うとうとしていれば足音の後に扉が開いた。

「パリジャーン!」

にこにこしながら手を振って近寄ってくるスーくん。隣にはあの二人の姿はなく珍しく一人らしい。

「お疲れ様!」

『俺今日は何もしてないから疲れてないよー。スーくんはお仕事だったんでしょ?お疲れ様ー』

「ありがと!」

にこにこ笑顔のスーくんはこれ、と持ってた袋から箱を差し出してくる。店名が緑色の英字で書かれた白色の箱は薄く平たい。

見たことのない包装にベルねぇさんとかが用意してくれる食べ物の中にはなかったやつだたなと思いつつ顔を上げた。

『いいの?』

「もちろん」

開けてみてと微笑まれるから頷いてフタを止めてる簡易テープを剥す。そっと開いた箱の中には円形のものが6つ入ってて、いくつかは真ん中に穴が空いてた。

ふわりと鼻に届いた甘い香りに目を瞬く。

『ドーナツ!』

「うん。甘いもの好きでしょ?」

『好き!』

味によって色も見た目も違う6つのドーナツに口元を緩めて、真ん中の飾り気が少ない淡い茶色のドーナツを取って、ふと首を傾げる。

『スーくんに甘いの好きって言ったっけ?』

「あー、ベルモットから聞いて…」

『ベルねぇさんからか!』

ベルねぇさんは俺のことで知らないことはないだろう。お土産を用意するにあたって好き嫌いを確認してきてからくれるなんてスーくんは気がとてもきく。

『スーくん!ありがと!いただきます!』

頬張って、そうすれば中からとろりとしたソースが溢れてくる。カスタードクリームが溢れないように口を閉じて甘さを堪能する。

チョコレートがかかっていたり砂糖が乗っていたりと見た目からあからさまに甘いものもあるけれど、これは見た目がとてもシンプルなのにたっぷりのカスタードクリームが入っていて俺の一番のお気に入りだ。

『…………あれ?』

手を、止める。

向かいにいたスーくんはにこにこと俺を見ていて、目が合うなりどうした?と首がかしげられた。

スーくんの目の奥、何か言いたげな色を見つけて、心臓がぎゅっと締められるから首を横に振る。

『………んー、やっぱなんでもない…』

「大丈夫か?」

『大丈夫ー』

再びドーナツを食べて、少し悩む。初めて見る店の包装だったと思ったけど、もしかして中身だけは食べたことがあったのだろうか。

残りのドーナツを眺めてから顔を上げる。

『スーくんも食べようよ』

「パリジャンに買ってきたやつだから全部食べていいんだぞ?」

『んん、じゃあ食べすぎると夜ご飯食べられなくて怒られるから、ひとつ手伝ってー』

「そういうことなら。どれ食べていい?」

『んーと、』

箱の中のドーナツを見ようとしたところで三回音が響く。返事を待たずに扉が開いた。

「…………」

「お、バーボン」

『バボくんお疲れ様ー』

現れたしかめっ面のバボくんはゆっくりと警戒するように寄ってきてスーくんの隣に座る。俺の手元にあるドーナツを見て一瞬目を細めて、スーくんを見た。

「賄賂ですか?」

「ははっ、こわいなぁ。お土産を渡してただけだよ」

俺に取り入ったところで上にいくポイントは稼げなさそうだけどなと思いつつ、箱からひとつドーナツを取って差し出す。

『スーくんあげるー』

「、ありがと」

目を見開いて、それから笑ったスーくんに首を傾げる。

『これきらい?』

「いいや、むしろ一番好きなやつだったから驚いちゃって…!」

『ふーん?そうなんだー』

穴のないドーナツ。チョコレートがかかったまん丸のドーナツは中に俺と同じカスタードクリームが入ってる。とっても甘いそれを美味しそうにスーくんがかじって、なんとなく横を見るとバボくんは小難しい顔をしてたと思えば視線に気づいて表情を変えた。

「どうしました?」

『バボくんの方こそどうしたの?怖い顔してたけど…』

「怖い顔ですか…?………こんなところでドーナツを頬張ってる脳天気な同僚と先輩に呆れてるだけですよ」

「そんな脳天気かな?」

「ええ。まったく」

『糖分は大切だよー。バボくんも食べなよ。スーくんが買ってきてくれやつすっごく美味しいよ!』

「はあ。スコッチが買ってきて渡されたのなら、それは貴方の分でしょう?」

『じゃあ夜ご飯入らないと怒られるから、バボくんも1個手伝ってよ!』

「………そういうことら仕方ありませんね。どれを食べていいんですか?」

『んー』

残りの4つから、穴が空いているドーナツを取って差し出す。

『バボくんはこれー』

「…………なぜこれを?」

『え?なんとなく?』

「そうですか」

『食べれない?』

「いいえ。食べれます。いただきますね」

渡したのはチョコレートがかかっていて、その上に砕かれたナッツがまぶされたドーナツで、バボくんは俺がドーナツを引っ込めるよりも早く受け取ると口を開けてパクリと口に入れる。

大きな口で半分ほど一気に食べたバボくんは甘めの見かけによらずワイルドに食べていて、前にフレンチに行ったときはもっとちまちま食べてたかやびっくりした。

スーくんは逆にゆっくりと、少しずつ食べていて、なんとなく反対な二人の言動にぱちぱちとまばたきをして、人は見かけによらないって言うし、そういうこともあるかとまたドーナツを口に入れた。


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