DC 原作沿い



休みを過ごして元気満タンな俺に、ジンくんはサボってた分の仕事をしてこいなんてぽいっと建物の前に俺を置いていった。

二日間ご飯を食べて寝てお風呂に入って、ついさっきまでその延長線上で一緒にベッドでぬくぬくしてたのに、落差で風邪を引きそうだ。

車の中で渡されたのは俺の仕事バッグとパーカーで、仕方なく眼鏡をかけて銃のセットをした。

降ろされたのはよくわからないビルで、妙に強靭な警備員が二人立ってるのが見える。事前情報がほとんどない状態で仕事してこいは鬼畜すぎて、ジンくんは仕事を失敗してほしいのかもしれない。

仕事用の携帯を取り出してGPSで現在地を確認して、ビルの名前を確認する。所有してる代表者名が見覚えがあって、俺の調子が悪くなる前にキャンねぇとコルにぃ撃ったトップと同じ苗字だった。

基本は製薬会社ではあるけど、うちの会社の参加の一つらしく薬品開発のための拠点のいくつかあるうちの一つがここだ。

この間処分したトップは薬品の情報を横流ししてて、それに気づいて処刑したけど、ついでに兄弟も見せしめに処刑しろってことらしい。

そうなれば俺が目指すのは社長室とそのデータの消去なわけだけど、準備時間が少なすぎて驚きだ。

まずはぐるりと散歩する気持ちで建物の周りを一周する。大きな出入り口は最初に見たところと裏側の二ヶ所。窓は多少あるもののどれもだいたい三階以上の場所からで、それもフィックス窓が多い。

とりあえずと調べものを終わらせた携帯でジンくんに発信する。運転中だからか3回目のコール音で音が途切れた。

『ジンくん、これ俺一人でやったほうがいい?』

「任務が完遂すればなんでもいい」

『ういーす』

ぷつりと切れた通話にどうしようかなと近くにあった建物に入って、ファミレスに入る。デザートを頼んで待ってる間に周りを眺める。

まだ正午を回ってない時計に休憩中の会社員は少なく見えた。

基本的にオフィスビルが立ち並んでると何件か地下や一階部分の名ファミレスやカフェがあって、そこで社員が休憩を取ることが多い。

「おまたせいたしました〜」

運ばれてきたプリンとティラミスの盛り合わせにスプーンをとって口に運ぶ。冷たくて甘いプリンを堪能しつつ、どうしたものかなと考える。

援軍は呼んだほうが注意が分配できて成功率は上がるけど、俺もきちんと把握してない仕事を割り当てるのは流石に相手が可哀想だ。

半分凍ってるティラミスも食べきったところで口を拭いて、人の増えてきた室内を眺める。

一人でひっそりと、手軽に食べれそうなパスタを頬張ってるちょっと若そうな人間に目星をつけて口元を緩めた。

伝票を持って歩き出す。ちょうどドリンクバーにお冷のおかわりを取りに行ってるから、席に置かれた残り少ないパスタに横を抜ける際に必要なものをかけて離れた。

会計を終わらせて、ちょうど食べ終わったらしく水を飲んで立ち上がったその人がレジに向かうのを確認する。

そのまま一番近いトイレに向かって携帯をいじっていれば少し駆け足気味の足音が近づいてきて、扉が空いた瞬間に持ってた布を鼻先に寄せた。

ぐらりと揺れた体を支えて服を剥ぐ。借りた制服を纏って、髪を結び上からウィッグを被る。寝かせたその人は故障中の張り紙を貼ったトイレの中に入れておいて、鏡の前に立つ。

カラコンを仕込んで、テープとラインで目の形を変えれば鏡の中には俺がいなくなった。

社員証を持って目当てのビルに向かう。見るからに鍛えてそうな、ただの製薬会社のビルのガードマンには強すぎる警備員の横を抜けて、その先にある大きめの出入り口には社員証を翳して入るタイプのゲートが五つ並んでたからそのうちの一つにカードをかざす。

ちらりと見た左側には出入りを確認しているらしい少し高齢の男性がこちらを見ていて、その奥、ガラス張りのそこには大量の監視カメラの映像が映されたスクリーンが並んでた。

今は見るのは間に合わないから眼鏡でしっかり写す。それから左折して、確認しておいた場所にあるエレベーターに乗り込んだ。

階数案内にラウンジと書かれていた六階のボタンを押せばゆっくりとエレベーターは動き始め、微かな浮遊感を伴って止まる。予想通りにラウンジは休憩室として利用されているようでちらほら飲食している人やイヤホンやヘッドホンをつけてうつ伏せになり仮眠を取ってる人がいる。

俺も休憩するような雰囲気で椅子に座って携帯を取り出す。メガネに触れてから画像を確認しつつ、ある程度の確認が済んたところで立ち上がった。

従業員用の充電コーナーへ足を進めて、必要なものをコンセントに刺す。その先を携帯にさして操作していく。

いくつかあるロックをすり抜けてどんどん潜っていき、必要な情報を確認してコードを抜いた。

飛ばした情報は眼鏡に連動されていて少し考える。仕事は何時にしてもいいけどトイレに置いてきてしまった人が起きたら仕事がし辛くなるだろう。

休憩室から出て歩き出す。周辺の情報と照らし合わせながら人と会わないよう進んで、たまに携帯を触って更新を止めてを続ければあっさりと目的の部屋の前についた。

屈んで覗きこんだ鍵穴に専用の線を通して動かし、小さな音を立てて施錠が解けたからノブを回して中に入った。

すぐに戸を閉めて鍵をかける。わかってたけど誰もいないようです人の気配はない。

中に進んで業務に使うんだろうパソコンの前に立って、これも持ってきておいた専用の機械をパソコンに刺す。

電源を入れれば後は勝手に動いてくれるから、目的の人間が来るまでとても暇だ。とりあえず部屋の中をぐるっと見て回って扉の近くに引っ張ってきた椅子に座る。

携帯を触りながら待っていればこちらに近づいてくる人影が見えて、やっとだと持ってきていた物を取り出した。

人影は部屋の前に止まり、鍵を挿して回す。がちゃりと施錠が外れて扉が開いた。

内開きの扉のため開けられた扉の影になった俺にやはり相手は気づかず、後ろ手に戸を閉めて、鍵をかけるために振り返ったところで目を見開いた。

「お、」

構えたそれの引き金を引く。チュンっと小さな音を響かせ放たれた弾はまっすぐと目の前の人間の喉の真ん中を貫いて赤色が散った。

倒れた身体は痙攣していて横を抜ける。椅子を戻してパソコンに挿してた物を抜いて、部屋を出るために扉に向かう際に転がったそれを見ればもうぴくりとも動いてなかったから迷わず出ていく。

行き道と同様にいくつか遠隔の操作をしつつ元の場所まで戻り、正面玄関から建物を出た。

携帯を耳にあてる。

三回コール音が響いて途切れた。

「俺だ」

『あ!ジンくんお疲れ様!終わったよー!』

「早かったな」

『早いほうがいいのかなって思ったから。今日俺のお迎えはある?』

「ねぇ。勝手に帰ってこい」

『ええ…?ここからすごい距離あるのに…?』

「帰巣本能くらい持ってんだろ?」

『それなりにあるけど…』

「門限越えんじゃねぇぞ」

『ういーす』

何を言っても迎えはなさそうだから諦めて返事をすれば鼻で笑われて通話が切れた。

歩きながら携帯を触る。みんなの位置を確認してみるけど一番近い人でも県を跨いでいたから、もう公共設備を使うしかない。

まずは近くにいたタクシーを拾い、近くの駅へ。駅のトイレで簡単に着替えてメイクを変え、電車に乗る。

帰りたい場所と反対方向の電車に乗って降りて、駅を出て、近くのデパートのトイレでまた着てるものを変えて今度は目的地方面の電車に乗った。

平日の三時過ぎは人もまばららしく、立っていると目立ちそうだったから空の目立つ座席の一つに腰掛けた。

車内には休日でこれから出かける、はたまた帰宅中の私服の人間や、買い物帰りらしく荷物を持った女性が多いように見えた。

窓から差し込む光は夜のほう長く始めるこの時期に合わせてか微かに橙色で、もう少しすれば陽が落ちる。

門限までに間に合うだろうか。到着予定を逆算しているうちにまぁなんとかなるだろうと思考を止めて、電車の微かな揺れに後押しされるように瞼をおろした。



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