イナイレ
とにかく、あの様子では来栖はこないだろう。
つまり、引き摺っていくしかない
明後日の選抜試合のためにも人数を揃えなくてはならないし、あの万年体育見学者らしい来栖がサッカーする姿というのは気になる。
混乱が収まった風丸に聞けば、確実という程ではないが心当たりぐらいはあるらしい。
そうして二箇所、三箇所周り、最後に俺達が来たのは駅前にあるゲームセンターだった。
「本当にここにいるのか?」
「ゲームショップと本屋にもいなかったからここくらいしか…」
ガラス製の重い扉を押し開ける。途端に耳に雪崩れ込んでくる雑音とこもった空気が体を包んで不快だった。
「本当にいるんだろうな!」
まわりの音に負けないようにと風丸へと投げかける声も大きくなる。俺と同じように風丸も眉をひそめながら大声で返す。
「多分!」
見渡すがこの出入口付近にはいないようで、奥へと進んでいく。今日が平日だからか、人は比較的少ないよう、見つけるのは容易かった。
「「………」」
来栖は床にあるパネルを踏む形のダンスゲームのようなものをしていた。
画面に現れているのは次に踏むパネルの指示らしく、同時に踏んだりする場面も多いのか跳ねたりと機敏に動く。初めて見るゲームではあるものの、来栖がうまいことだけはわかる。
どうやら終わったようで、スコア表示がされて来栖の動きが止まった。
そのまま来栖は画面と向き合いながら声を発した。
『なに、用?』
こいつ後ろに目でもあるのか?振り返りもしないでよく気づいた。
手元の画面で次の曲を選んでいるのか画面が切り替わっていく。一応話を聞くつもりさあるらしいから息を吸った。
「明後日の試合、お前にきてもらわないと困る」
『………』
特に返答をすることもなく選曲を終えたらしく来栖はまた踊り始める。画面には次々とマーカーが現れ消えていく。それに合わせて来栖はまた足元のパネルを踏みながら踊っていた。
シカトともとれるそれに唖然としていればわざとらしく息を吐く。
『俺はいかねーぞ』
振り返ることなく先程の返事をした。
「それじゃ困るんだよ俺達!」
『はっ。それこそ俺には関係ねぇ話だなァ』
今まで聞いたこともないくらいに冷たく、はっきりと答える。体は動かしたまま気にかける様子もない。
「お前に関係があるから俺達はここに来たんだ。このままだと俺達のチームは選ばれない。日本代表になれない」
『…………』
マーカーが一瞬消え、来栖はほんの一瞬止まって、また流れ始めたマーカーにあわせて激しく動き出す。
『…てめぇが選ばれようと選ばれまいと、お前のチームの奴が全員落ちようと、俺には本当、笑っちまうくらいに関係のないことだ』
冷静に、冷酷に、言葉を返してくる。
「なにいってんだ来栖!俺達の代表がかかってるんだぞ!」
即座に風丸が食って掛かれば、また来栖は溜め息をつく。
『それって俺に関係あることかァ?俺は俺に利益となることしかしたくねぇんだよ』
「っ、俺達がどれだけ!!」
顔を赤くして眉根を寄せた風丸が来栖の背中に向かって叫んだ。それでも来栖が首を縦に振ることはないし、鼻で笑ってゲームを続けてる。
なんだこいつは。もとから社交性協調性にはかける奴だとは思ってたが……こんな奴だったのか?
怒りから荒くなりそうな言葉を一度飲み込んで、拳を握り息を吐いた。
「…ならば、利益になれば来るのか?」
『そうだなァ。考えてやらないこともねぇ』
何時の間にか曲が終わったのか、来栖は横にあったスケートボードを持ってこちらを見て笑っていた。
「何が望みだっていうんだ」
にぃっと口の端を上げて、来栖は―……