イナイレ
2週間後の13時体育館だっけか。
地面を蹴りスケボーを走らす。口の中にはいつもの葡萄味のガム。耳にはイヤホンをつけてるから音楽が流れ込んでくる。
体育館の前でスケボーから降りて、跳ねあげたボードを小脇に抱える。
時計を見たら約束の時間を30秒過ぎていた。
少しゆっくりしすぎたか
両耳につけているイヤホンを左から外しながら体育館の扉を開ける。
重い扉を開けたその先には、人がいた。
鬼 「来栖?」
諧『あ?』
まず手前にゴーグルとその子には眼帯ロン毛。それから睨み合ってる見覚えのないモヒカン。更に風丸やバンダナ。体育館内の構成は雷門中サッカー部と+αで、揃いも揃って入ってきた俺を怪訝そうに見つめてる。
風 「何しに来たんだ?」
諧『は…?お前こそ、』
響 「やっと来たか」
俺が聞き返そうとした言葉を、小太りのサングラスをかけた監督のおっさんが遮った。
呼んだのは道也のはずなのにこのおっさんが待ってました的な雰囲気醸し出してる理由がわからない。
目を瞬いて眉根を寄せると、一人がまさかと言葉を零した。
豪 「来栖も代表候補なのか?」
驚愕まじりに上がった声。
“代表候補”。それとここにいるメンツ。
当たり前のように導かれた答えに目の前が真っ赤になる。
道也の野郎…っ
円 「そうだったのか!?一緒に頑張ろうな来栖!!」
瞳を輝かせ勝手に手を握ってくる円堂。それを振り払えば円堂は目を丸くしてよろけた。
一同 「「く、来栖?」」
俺の行動に目を丸くする雷門メンバー。
普段は無口、無愛想、無視の俺が行動をするなんて珍しいし、一緒にいることの多い風丸でも固まっていて、だが、猫なんか被ってる場合じゃない。
諧『なんだ代表って。そんなの聞いてねぇ』
こいつらがいるってことはあれだろ
諧『サッカーなんてもん、俺にしろっつーのかァ?』
おそらく監督であろうそいつを睨む。サングラスをかけているせいで目の見えないおっさんはなにが考えてるのかわからない。
響 「選抜戦は二日後だ」
諧『はっ。どうでもいいわァ。俺には関係ない』
外してしまったイヤホンを左耳につけながら体育館を出ていった。
×
来栖が出ていった体育館の空気は先程の不動がボールを蹴ってきた時よりもどこかはりつめていた。
立 「え、えっと、あのぉ…」
吹 「今の子も代表候補なの?」
壁 「わかんないっすけど…」
栗 「あの人って風丸さんのお友達でヤンスよね」
後輩や雷門以外の吹雪達は来栖のあの言動に困惑している。
かくゆう俺をはじめとした、天然サッカー馬鹿の円堂でさえも状況がわからずに思考回路停止状態だ。
回転しない頭を動かし、口を開く。
鬼 「……結局、来栖も代表候補なんですか?」
最優先で確認しなくてはならない事だ。
返答はわかりきっていたが響木さんは特に気にすることなく頷いてみせる。
風 「あの根暗オタク来栖が!?」
弾かれたように叫ぶ風丸は目が丸くなっていて、友達のくせに大概酷い発言に後ろの円堂と豪炎寺が流石にひいている。
緑 「彼も雷門の生徒じゃないのか?」
豪 「生徒には生徒だな」
基 「サッカー部じゃないの?」
円 「来栖は…ん〜、運動してるとこみたことないなぁ…」
なんでそんな奴が代表候補に…?
俺達が訝しげにしているのはわかっているはずなのに響木さんはお構い無しに話をしだす。
響 「チームは鬼道と同じだ。どちらのチームも、候補者が理由もなく不参加の場合そのチーム全員を失格にする」
鬼「え、」
不動に来栖。ありえない組み合わせ。それどころか理解しきれない条件に目を見開いて頭を押さえる。
響木監督が何を考えているのか、まったく理解ができない。
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