DC 原作沿い
スーくんの仕事が完遂したことにより、俺の仕事はまたなくなって、暇を持て余すことになった。
ずっと遊びに連れて行ってくれるアイくんと同じように、最近はキャンねぇとコルにぃ、カルにぃくんも遊びまでは行けなくても誰かの送迎がてらや仕事のついでにドライブに連れて行ってくれるようになり、なんだかんだ一人で過ごす時間は少なくなった。
とはいえ、やっぱり待機時間は一人だから暇で、毎日誰かが遊んでくれるわけじゃないから今日もうとうとしていればノック音を耳が拾う。
あまり強く響かなかった音に気のせいかと目を瞑ろうとすればまた音がして、顔を上げる。あくびを溢しながら歩いて扉を開けた。
「寝てたのね」
『キューちゃん?』
寝癖でもついていのか俺の頭に手を伸ばして呆れたみたいに息を吐きながら毛先を摘んで流す。
「貴方、この後の予定は?」
『なんにもないよー』
「そう。ならちょうどいいわね」
『?』
「パリジャン、三時間寄越しなさい」
『ん?いいよー?』
「…そう。なら行きましょう」
『なにかいる?』
「…そのままでいいわ」
『ケータイと財布だけ取ってくるね!』
「ええ」
一瞬俺の格好を見て頷いた。ドレスコードはないらしいからキューちゃんを待たせないようすぐさま財布と携帯を取って部屋を出る。キューちゃんは指先に巻きつけてた髪を解くと歩き出したから追いかけた。
『どこか行くのー?』
「外に出るわ」
『何しに行くのー?』
「気分転換」
仕事の息抜きに付き合う感じだろうか。キューちゃんは車庫にたどり着くなり運転席に乗り込んで、少し悩んでから助手席の扉を開ける。乗り込めば間違ってなかったのかシートベルトとだけ言われたから右から引っ張って左の腰に差し込んだ。
『準備万端!』
「はい、よくできました」
エンジンがかかって、キューちゃんは起動したナビを操作したと思うとハンドルを握ってアクセルを踏む。スムーズに動き出した車は空の下に出て、時折流れるナビの案内に従って曲がったり走ったりを繰り返してた。
前の任務中も運転は集中する派らしいキューちゃんに特に話しかけず外を眺める。どこに向かっているのか、普段自分で外出をしないから目的地を楽しみにしていればナビがピピッと音を立てた。
ゆっくりと減速していく車はそのまま駐車場の中に入り、滞りなく停車させるとキューちゃんがシートベルトを外した。一度携帯を取り出して少し操作したと思うと顔を上げて、目が合う。
「行くわよ」
『うん!』
シートベルトを外して車から降りる。見上げた建物に目を瞬いて隣を見た。
『なにするの?』
「息抜きよ」
『キューちゃん秘密主義すぎない??』
さっきと同じ回答に首を傾げる。
キューちゃんは迷うことなくずんずん進んでいって、エレベーターに乗り込むから遅れないように俺も入って、キューちゃんは迷い無く最上階に向かうボタンを押した。
高速エレベーターだから一気に上がって、ふわりとした浮遊感の後に止まる。降りればエレベーターホールのすぐ傍に見覚えのある顔がいて、目を瞬いた。
「おはよう」
「おはよう。待たせてごめんなさい」
「今ばかりだから気にしないで。……どうしたの?パリジャン?」
『キーちゃん??』
「ええ、キールだけど…なんでそんなに驚いてるの?」
『なんにも聞いてなかったからかな??』
首を傾げる俺にキーちゃんはあらと驚いて、それからくすくすと笑った。キューちゃんは息を吐くと視線を逸らす。
「時間ね。行きましょ」
「そうね」
二人が歩いて進むから俺も後ろについていく。一分も歩いてたどり着いた扉の前には三つ揃えを纏った男性が立っていて、目が合うなり微笑まれた。
「いらっしゃいませ」
「予約しておいたキュールです」
「お待ちしておりました」
先を行くキューちゃんに声をかけるのは諦め、ねぇねぇとキーちゃんの服をつまむ。
『ここレストランだよね?ご飯食べるの?』
「そうよ?…本当になにもキュラソーから聞いてない?」
『うん。息抜きしにいくよって連れてきてくれた』
「息抜き…」
間違ってはないけどと眉根を寄せて微妙な顔をしたキーちゃんは気を取り直すように首を横に振って、あれと指す。つられるようにそちらを見て目を丸くした。
「今日はアフタヌーンティーよ」
『アフタヌーンティー…!』
特徴的な三段の銀色のラックを見つけてテンションが上がる。誘導された席はキーちゃんの隣で、向かいにキューちゃんが座った。
『アフタヌーンティー!俺したことない!』
「私も本格的なのは初めてなの。楽しみね」
『ん!』
キーちゃんの言葉に大きく頷く。白色のテーブルクロスが引かれたテーブルはナプキンとお皿、横にはナイフとフォークが添えられていてそわそわする。
そっと現れたウエイターがカップを置いて、ポットから温かい紅茶を注ぐ。三人分置かれて、続けてラックが届く。小さめに切ってあるサンドイッチにクリームとジャムが添えられたスコーンにプリンやゼリー。
カラフルに何種類も並んでるマカロンとケーキは別に届いた大きなお皿に乗せられていて周りには生花があしらわれてる。
小さくてキラキラしてるそれらに言葉を失っていればキーちゃんが笑い声を転がした。
「ふふ。こんなに喜んでくれると誘ってよかわったわね、キュラソー」
「暇そうだったから連れてきただけよ」
『キューちゃん!キーちゃん!ありがとう!』
キューちゃんは咳払いを一つして、いただきましょとサンドイッチを取る。キーちゃんはマカロンを掴んだから俺はスコーンを持った。
まずはそのままと一口かじる。
『んんっ!さくさく!おいしい!!』
「そんなにおいしいなら次はスコーンを食べようかしら」
『うん!キーちゃん!マカロンおいしい?』
「ええ。とても美味しいわ」
『じゃあ俺も次マカロンにしよ!』
その前にスコーンにクロテッドクリームとジャムをたっぷりつけて口に入れる。さっきまでのバターの香りを楽しめたスコーンとは違って甘さと濃厚さが出たスコーンに口元をゆるめて、赤色のマカロンを拾った。
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