DC 原作沿い
今日はなんと、キューちゃんとキーちゃんとのご飯会だ。キューちゃんからようやくオーケーをもらえて実現したご飯会はキーちゃんと初めて会ってすでに三ヶ月経っていて、二人には久々に会う。
ウキウキしながら手土産を持って指定されたアパートに向かい、たどりついたからチャイムを押した。
少しして空いた扉からキーちゃんが顔を覗かせてどうぞと言われたらから中に入った。
『おじゃまします!』
「いらっしゃい。そろそろキュラソーの準備も終わると思うわ」
『いいにおいする!』
「たのしみね」
『ん!』
キーちゃんが先導してくれてたぶんリビングに向かう。外食の案もあったけど、何かあったら困るからとご飯会になり、その会場がキーちゃんのお家なのは成り行きだった。
どうしても俺の家は嫌で自宅に招くのも嫌派のキューちゃんに、どこでも大丈夫なキーちゃんと俺。消去法でキーちゃんのお家になったから手土産を差し出す。
『これ!お邪魔します!』
「丁寧にありがとう。後でみんなで食べましょうか」
『うん!』
キューちゃんの料理の腕はすっかり組織の中ではお墨付きで、キューちゃんの手料理の後にアイくんの用意してくれたデザートを食せるなんて今日はパーティーかもしれない。
キーちゃんがここに居てねと教えてくれたからリビングのソファーに座る。膝を合わせるように足を揃えてお行儀よく座っていればキーちゃんがカトラリーを並べて、その奥からキューちゃんが静かに現れた。
「じっとしてられたのね」
『ん!』
キューちゃんが目を細めるから頷く。前回の海外任務中、料理をしてくれるキューちゃんの手伝いをしようとして、塩と砂糖を入れ間違えたりみりんと酢を間違えて大惨事を起こしたためキューちゃんの居るときはキッチン不可侵条約を結んでいる。
キューちゃんが大きめの片手鍋を二つ、鍋敷きの上に置いて蓋を外す。
ふわりと醤油ベースの香りが届いた。
『煮魚!お味噌汁!』
「たくさん食べるように」
『はーい!』
疑心暗鬼になりやすい関係で余計なことを考えないようにするためか、キューちゃんの作ってくれる料理は大皿に用意されてそれを好きなだけ取るスタイルだ。
みんな同じように取ってるし、同じものを食べているから不安が少なく済むスタイルは本来なら箸休め用に小鉢で用意することの多い白和えやお漬物にも適用されてる。
取皿も適当に、人数よりも二枚多く用意されてるからそこから好きなものを取って、お箸も同じように好きなのを取った。
『いただきます!』
「いただきます」
「どうぞ」
キーちゃんも同じように好きなものをよそい、まずは白和えを口に運ぶ。目を丸くしてから飲み込んで、キューちゃんを見た。
「聞いてはいたけど、キュラソー、本当に料理が上手なのね」
「普通よ」
『キューちゃんのご飯美味しいよね!たくさん食べられる!』
ジンくんとコルにぃは偏食なのか、人の作ったものは食べない主義。キャンねぇとアイくんはその時のお腹と相談で、ウォくんは毎回タイミングが合わなくて食べられずにしょんぼりしてる。
キーちゃんもキューちゃんの料理にがっつり胃袋を掴まれたようで、丁寧にお箸を使いながら一つずつおいしそうに食していって、キューちゃんは減っていく料理に口元を緩めて、俺を見るなり眉根を寄せる。
「箸が止まってるわよ。まさかもう満腹なんてことはないわよね?」
『まだ食べれるよー!』
「なら良かったわ」
食べられるときにきちんと食べなさいと言われて空になってたお椀にお味噌汁を追加する。
お魚を一匹、それから白和えと具のたくさん入ったお味噌汁を二杯。お茶碗によそってくれた米は雑穀米で歯ごたえがあったから一杯でだいぶ腹は満たされていて、最後に残っていたお米二口分を運び入れて飲み込んだ。
『ごちそうさまでした!』
「はい、お粗末さま。きちんと食べきれて良かったわ」
キューちゃんとキーちゃんもちょうど食べ終わって口元を拭っている。三人分の料理はぴったり作られていてどれも皿の底が見えてた。
重ねて片付ける。皿洗いくらいは手伝える俺に、洗うのがキューちゃん、拭くのが俺、仕舞うのがキーちゃんと分担して、終わりが見えたところで、そうだとキーちゃんがこちらを見た。
「キュラソー、まだお腹に余裕ある?」
「ええ、少しなら…?」
「パリジャンが持ってきてくれたデザート食べましょ」
『デザート!』
「ふふ、食いつくのが早いわね」
冷蔵庫からキーちゃんが箱を取り出して開く。キューちゃんと一緒に覗き込めば、小ぶりのケーキが六つ入っていて、どれもキラキラしてた。
『フルーツケーキだー!おいしそ!!』
「パリジャンが持ってきたのに中身知らなかっての?」
『ん!アイくんが買ってくれたの!』
「え、アイリッシュが…?」
驚いた顔のキーちゃんに首を傾げる。アイくんはよく俺と買い食いをしにいって甘いものとしょっぱいものも食べるからこういうケーキも詳しい。
食後に食べるのを見越してか手のひらよりも小さめのフルーツケーキのサイズ感はとてもちょうどいい。
いちご、もも、キウイ、オレンジ、ぶどう、ブルーベリーと色味もばらけて鮮やかで、見た目からおいしいのがわかる。
「パリジャン、どれがいいの?」
『んーん!キーちゃんとキューちゃんから選んで!』
「いいの?」
『うん!』
キューちゃんもお先にどうぞと流すからキーちゃんがまずはオレンジを取る。キューちゃんが続けてブルーベリーを取った。
『俺はももにするー!』
皿に乗せて、合わせるようにキーちゃんが紅茶を入れてくれからまた椅子に座りご飯会の続きを始める。
おいしいフルーツケーキと紅茶。キーちゃんとキューちゃんのおだやかな空気感に、ずっとお茶会は明美ちゃんと志保ちゃんとしかしたことがなかったから新鮮で楽しい。
『今度は五人でお茶会しよ!』
「ふふ、それはそれで楽しそうね」
キーちゃんが笑ってくれたから期待を込めて隣を見る。眉根を寄せたキューちゃんはぷいっと顔を逸らした。
「機会があったらね」
キューちゃんのこの言い方は、機会を作れってことだろう。
『ん!誘うね!!』
とてもうれしくて思わず大きな声を出せば、キューちゃんに近所迷惑でしょうと額を弾かれた。
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