DC 原作沿い


テーブルに並ぶのはこの間見た人気店のケーキで、買うのには通販なしの現地のみ、開店待ちから順番並びが必要なタイプのエシャレットケーキだ。今日の朝に買ってきてくれたらしく、昼から志保ちゃんと明美ちゃんとのお茶会なのを知ってたのか持って行けと渡してくれた。

『カルにぃくんがね!買ってきてくれたんだー!』

「ふふ、良かったわね」

明美ちゃんがふやけた笑みを浮かべて頷いてくれ、志保ちゃんは何故か呆れたように息を吐く。

「貴方、そんなに保護者包囲網強めてどうする気なの?」

『包囲網?』

瞬きをすればもう一度ため息がつかれて、包丁がケーキに入れられる。きれいに切り分けてくれて、明美ちゃん、俺と用意した皿に乗せてくれた。

「お兄さんが増えたのね」

『うん!』

「楽しそうでよかったわ」

明美ちゃんがいただきますとケーキを一口食べて頬を緩ませる。志保ちゃんも続けて食すと目を細めた。

「おいしい…」

「志保も気に入ったみたいだし、今度カルバドスにはお礼しないといけないわね!」

「ちょっとお姉ちゃん」

「どうやったら会えるかしら?」

うーんと悩み始めた明美ちゃんに志保ちゃんは眉根を寄せる。それから俺を見つめてくるからへらっと笑った。

『カルにぃくんには俺がお礼するから大丈夫だよー。明美ちゃんお仕事忙しいんだし、彼氏さんに誤解されたら大変だから無理しないで?』

「んん、でも…」

『あ、というかそう!彼氏さん!俺まだ会ったことない!』

海外に飛んだりなんだりしていたからすっかり忘れていた存在を口にする。志保ちゃんがむっと唇をへの字にして、明美ちゃんが恥ずかしそうに頬に手を当てた。

「パリくん知ってたの?」

『うん!ちょっとだけ話聞いた!ねーねー、どんな人?』

「ええ!話さないとだめ?」

『明美ちゃんの好きな人、気になるなー』

じっと見つめれば根負けしたみたいに明美ちゃんは笑って両手の指を絡めて視線を逸らす。

「大くんって言うんだけど、普段は寡黙で落ち着いてて、大人って感じでね、でも、すごく情熱的で…これすごくはずかしいわ…!」

『そっかー!明美ちゃんはその大くんってはひとがだいすきなんだねー!』

「う、うん!」

顔を赤くして頷く明美ちゃんに志保ちゃんがなにか言いたげに口を開こうとして結ぶ。

「志保とパリくんにも会ってもらいたいから、今度絶対に時間合わせてもらうね!」

『たのしみー!どんな人なんだろうね!志保ちゃん!』

「さぁね」

そっぽ向いた志保ちゃんはフォークをとって、ケーキに突き刺した。



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