DC 原作沿い
「仕事だ」
移動中に渡された情報を読み込む。今回は中枢寄りだった構成員の一人が知ってはいけない情報を知ってしまって、それの人物を確保、場合によっては処理してこいとのお達しだった。
珍しく送迎役をしてくれてるジンくんの運転に、見終わった情報を置いて外を眺める。
「やる気がねぇな」
『そんなことないよー?』
ミラー越しにこっちを見てたらしいジンくんが怖い声を出してきて、首を横に振った。
『この子の記憶、どうするのかなって思って』
「すべて消去だろうな」
『…せっかく培ったのに、もったいないねー』
たまにある記憶の消去は、該当の記憶だけを消すなんて都合のいい代物じゃなく、今までの全部を消すか、存在が消されるかの二択だ。
目が覚める前の頃の記憶が存在しない俺にはわからないけど、生きてきた記憶がなくなるのはきっと寂しいし、記憶を捨ててしまうのももったいない。
『ねぇジンくん、俺の名前ってなんだったんだろうね』
「余計なことを考えんな。テメェはパリジャン以外の何者でもねぇ」
『んー、そっか。うん、そうだよね』
頷いて、もう一回頷く。
『俺はパリジャンだよね』
「ああ」
『うん!』
車が止まる。目的地についたらしいからシートベルトを外して扉に手を掛ければ視線を感じて振り返ればジンくんがこちらを見ていて首を傾げた。
ジンくんは右手を上げて、人差し指を動かして引き寄せるようなジェスチャーをしたから腰を浮かせて顔を寄せれば額が突かれた。
「仕事を増やしたくねぇ」
『ん?』
「パリジャン、しくじるな」
『はーい』
笑えば満足そうに手をおろして発車する。ジンくんの車が見えなくなったところで振ってた手を下げて顔を上げる。
『今日もお仕事がんばりますかー』
応援されたのなら、それに答えるのが社会人だ。
『がんばれ!おれ!』
一度大きく伸びて歩き出す。
それではさっさと今回のターゲットを探しに行こう。
白髪の女性ならばすぐ見つかるだろうし、仕事は楽そうだ。
仕事用の眼鏡をかけて、スイッチを入れた。
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