DC 原作沿い
今日もやることはない。うとうとしていればどんっと背中に重みが走って、勢いで顎が机に叩きつけられた。
ふわりとした鼻に届く洗礼された薫りに振り返らなくてもすぐに誰かわかって、顎を抑えながら顔を上げる。
『いたい…』
「はぁい?目が覚めた?」
『…超痛い…おきた〜…』
「おはよう、子犬ちゃん」
『おはよー。ベルねぇさん』
目を合わせればにっこりと微笑まれて、それから、あらまぁと目を瞬かれる。視界を遮るような前髪を指先で跳ねるように退かすと口元に左手を添えた。
「今日はせっかくのオフだから買い物と思ったけど…その野暮ったい髪型はないわね。……そうね、うん、行くわよ」
『わかったー!どこ行くのー?』
「子犬ちゃん磨き。さぁおいで、わんちゃん」
『わん!』
首元のチョーカーについた鎖を指先で突かれて、おいでと言われればすぐにくっついていくしかない。
立ち上がって後ろに付き添うように歩く。通路をいくつも抜けて出た先にはベルねぇさんの愛車があって、開けてもらった助手席に乗り込む。シートベルトをしっかりしめれば隣のベルねぇさんがはいとペットボトルとお菓子をくれて、サングラスをかけた。
「つくまで1時間くらいよ」
『はーい』
ベルねぇさんは車に乗った俺が飽きないよう、いつも飲み物と食べ物をくれる。乗り物酔いをしない質の俺はお菓子を食べつつベルねぇさんの話を聞く。
運転中のベルねぇさんが運転に集中できるよう無駄に俺から話しかけて邪魔したりはしないけど、ベルねぇさんから話しかけてくれるならちゃんと話を聞くし返事もする。
ベルねぇさんと話していればあっという間に1時間が経って車が止まった。
「おいで、子犬ちゃん」
『わんわんっ』
ついたのはよくわからないけどホテルみたいなきらびやかなところで、白色の壁はシミ一つないし、ガラスも指紋一つなくきらきら光ってる。
天井にあるのは大小それぞれ部屋に合わせたジャンでリアでカーペットの敷かれたふかふかの床を踏みしめながらベルねぇさんについていく。
「この子犬を綺麗にしてちょうだい」
「かしこまりました」
『ベルねぇさん。きれいにしてもまた伸びるよ?』
「伸びたらまた切れば良いのよ」
案内された椅子に座る。これから断髪される予定の前髪を撫でてったベルねぇさんは口角を上げた。
「お腹は空いてる?」
『ちょっとー』
「それなら着替えきったらレストランがいいわね」
『レストラン?』
「楽しみにしてなさい。それじゃあ子犬ちゃん、ちゃんと言うことをきいて綺麗にしてもらってくるのよ」
『わんわん!』
よくわからないけどベルねぇさんに言われたことは絶対だ。
頷いて返事をすれば頭が撫でられて、この後はドレスアップが終わり次第おいしいごはんらしい。