暗殺教室


次の日、俺は店主にぼかしながら説明して店をやめた。

あとから思えば、清水は俺のことを知ってたんだと思う。

これは決して自惚れとかじゃなく、それは言葉に散りばめられてたり、来店時に俺を見て目を一瞬細めたことにだったりによる俺なりの考えた結果だ。

けどまぁ、俺が何度も思うことはいつも一つで、あの時であってなければ…だ。

「清水くん、一緒にかーえーろっ!」

マイナスどころかまず出発地点の違う俺は、既知だったカルマみたいに馴れ馴れしく声をかけることも

「ばーか、清水は俺が先約してんだよ、ゲーセン行こーぜ!」

木村みたいに明るく友達らしく遊びに誘うことも

「そそ!で、明日は清水俺とデートだから!」

前原みたいに大好きオーラを振りまいてくっつくこともできない。

距離感を掴み兼ねて、清水がE組にきて早五ヶ月も経つ。

関係は顔見知りのクラスメイトくらいのはずだ。

体育祭の時も特に俺のバイトに驚くでもだからといってなにかアクションを起こしてくるでもなくただ、いつも通り普通の清水がいただけだった。

変に関係がある手前、うまく話しかけられず、近寄れないもどかしさにいつも眉をひそめるだけだ。

「磯貝くん?」

「え、どうした?」

いつの間に隣にいたのか、渚が俺の顔を見てきてた。

「帰りみんなでゲーセン行くことになったんだけど、磯貝くんは?」

ちらっと清水を見れば木村とカルマを宥めてる清水の姿。

カルマが引かなかったのか

「……あー…ごめん、俺バイト。」

「あ、そうなんだ。そっか…じゃあ仕方ないね、また今度!」

にこりと笑う渚に曖昧に笑って俺は鞄をひっつかみ外に出た。





何度も、何度も、もしもを想像する。

もしも、襲われなかったら

もしも、忘れ物をしなかったら

もしも、清水が店に来なかったら

もしも、俺がその店で働いてなかったら

都合のいい幻想からからんからんと鳴った音で強制的に現実に引きずり戻された。

「いらっしゃいませ…あ」

反射的に顔を上げれば、そこにはうちの学校の制服。

三年にもなった俺はそこそこ顔が知られているし、次は確実良くて停学、悪くて退学の処分が下る。

嫌だなーと思いながら近づいた。

客が顔を上げる。

『…やぁ、こんにちは、かな?』

にこりとした笑顔はいつぞやかに見た清水の笑顔で、目を丸くする俺に清水は今日終わるのがあまりにも遅くなるなら危ないから一緒に帰ろうかと笑って、一人だから店の端にでもいいかなと首を傾げられた。

「あ、ええと、こ、こちらへどうぞ?」

混乱する頭で案内して、少し隔離されて静かな場所に案内する。

清水は今日は何を飲むのだろうか

上着を脱いだ清水は未だ横に立つ俺に笑ってからキャラメルラテはあるか聞いてくる。頷いてキッチンに戻る。

用意されたキャラメルラテを持って席に行けば清水は本を読んでいて顔を上げた。

「お、お待たせしました…」

バイトでこんなにパニクるのなんていつぶりだろう。

緊張のあまりかたかた揺れてソーサーが音を立ててる。

なんて情けない

「あ、あの、清水」

やさしく俺の言葉を待つみたいに黙ったまま笑いかける清水に息をゆっくり吸って、思わず下を向いた。

「く、九時、までだから…その、…一緒に帰って、くれないかな…?」









あとがき
唐突に始まってぶっつんと終わるお話でした。

他キャラと違い、目立ったアプローチをかけるわけでもなく、毛嫌いするわけでも関わらないわけでもない、妙に意識してしまって清水くんに一線引いてる磯貝くん。

こう、もたもたというか、諦めきれてない磯貝くんが普段から清水くんの行動に一喜一憂したりしてるんだよっ!ってほおおおおんの少しでも伝わったら嬉しいです。

ちなみにこれ、磯貝くんが変態に襲われたあとの詳しい?お話はR話になりますので、興味がある18歳以上の方はよろしければ合わせてそちらもどうぞ。




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