誰そ彼の邂逅
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夏休み明け。
壱華は成長した朝顔の鉢を抱えた長次と共に学園に向かっていた。
普段と変わりなく会話をし時折笑顔を見せてはいるが、内心ではこの世の終わりかという程に絶賛落ち込み中だ。
夏休み前に山本シナより、明けには房中術の実技をするので初体験を済ませておくよう指示されていた。
その為に遊里 に近い大きな食事処のバイトを入れ、男から誘われるのを待ったのだ。
結論を言えば誘い自体は何回かあった。
だが、いざとなると怖気づいてしまい結局はその場にも行けずバイト期間は終了してしまった。
一体何をやっているのか─────
あまりの情けなさに涙も出ない壱華は、なぜ男に生まれなかったのかと現実逃避している始末。
男ならば遊里へ行き童貞を脱したのにと、できそうにもないことを簡単に考える。
壱華が例え男だったとしても、中身が同じでは行動も変わらないのに。
そんなことを考えてしまう程、彼女は追い詰められていた。
兎 にも角 にも非常にまずい状況である。
実技にしても技術に長けた知り合いなどおらず、そうなると学園が用意した者が充てがわれるのだ。
いや顔見知りだとしても気まずくて耐えられない。
そこまで考えた壱華は問題はそこじゃないと我に返る。
未通女 でいきなり実技など高度にも程があるだろう。
(無理だよ、無理。無理無理無理…)
脳内の壱華は頭を抱え地面にめり込んでいる。
だがもう時間はない。
学園が近付くと壱華は地獄へ向かうかのような面持ちに変化し、隣の長次を密かに心配させていた。
長次は姉の悩みを推察してはいるが、口出しできる問題ではないので黙っているしかなかった。
.
.
.
「宿題が入れ替わっていた?」
「二年生のが四年生に…とか?」
「逆ならできないわよね」
くのいち教室の始業挨拶で屋内鍛錬場に集められた壱華たちは、山本シナの話す内容に驚く。
どうやら夏休みの宿題が事務の小松田秀作のミスで混ざってしまい、一部正しく行き渡らなかったらしい。
そこまで聞いた壱華は、あの朝顔や虫採りはやはり一年生の宿題だったかと苦笑いした。
しかしそうなると、本来長次や文次郎がやるべきものは誰が、と疑問が湧く。
「くのいち教室のは私が全て管理していたので事なきを得ました。皆さんから提出されたものは後ほど確認します。忍たま側の宿題ですが、照合した際に一年は組の山村喜三太の宿題が六年生用と判明しました。他にも入れ替わりはありましたが、問題は…」
周囲がざわつき、まずいのではないかとくのたま達は顔を見合わせる。
何せ上級生の宿題、特に五、六年生はかなり難度の高いものばかりだからだ。
「その宿題は、オーマガトキ城主の褌 を奪ってくるというものです。オーマガトキは今現在タソガレドキと戦の最中であり、非常に劣勢で危険な状態です。彼が未だ姿を見せないのは、オーマガトキに囚われていると思われます。学園長先生の指示で救出部隊が組織されました。まずは一年は組の……」
シナの説明に辺りが静まり返り、くのたまたちは真剣に聞いている。
救出部隊のメンバーは宿題をやってこなかった生徒に委ねられ、きり丸、しんべヱ、三年生の神崎左門、四年生の平滝夜叉丸、五年生の不破雷蔵と鉢屋三郎、六年生の善法寺伊作の七人だ。
引率の教師二人と共にオーマガトキへ向かう。
壱華はあの伊作が宿題をやらなかったのが信じられず追及すると、どうやら当の戦場に赴き、タソガレドキの軍旗を取ってくるという宿題はこなしていた。
だが兵の救護の為にこれを裂いて包帯とし、旗一本分は持ち帰るも失格となった。
伊作らしいといえばらしい。
実はこの事件、喜三太の救出に留まらず裏で大きな問題が発生していた。
学園長の客人である手潟潔斎 はオーマガトキ領で、タソガレドキに近い園田村の長老だ。
オーマガトキが負けるとの確信から密かにタソガレドキに通じ、庇 いの制札 (村での乱暴狼藉や略奪を禁じる書面)を貰おうとしたものの、要求された金品を渡しても約束が果たされず、さらに要求をしてくる始末だという。
困った手潟は学園長へ相談にやって来たのだ。
戦線はひと月前にぶつかって以降、タソガレドキが圧倒的優位であるにも関わらず謎の膠着状態が続いており、明らかにおかしい。
これは裏で何かあるなと学園長は推察している。
そして喜三太救出と共に園田村の問題解決の為、作戦が練られた。
壱華は成長した朝顔の鉢を抱えた長次と共に学園に向かっていた。
普段と変わりなく会話をし時折笑顔を見せてはいるが、内心ではこの世の終わりかという程に絶賛落ち込み中だ。
夏休み前に山本シナより、明けには房中術の実技をするので初体験を済ませておくよう指示されていた。
その為に
結論を言えば誘い自体は何回かあった。
だが、いざとなると怖気づいてしまい結局はその場にも行けずバイト期間は終了してしまった。
一体何をやっているのか─────
あまりの情けなさに涙も出ない壱華は、なぜ男に生まれなかったのかと現実逃避している始末。
男ならば遊里へ行き童貞を脱したのにと、できそうにもないことを簡単に考える。
壱華が例え男だったとしても、中身が同じでは行動も変わらないのに。
そんなことを考えてしまう程、彼女は追い詰められていた。
実技にしても技術に長けた知り合いなどおらず、そうなると学園が用意した者が充てがわれるのだ。
いや顔見知りだとしても気まずくて耐えられない。
そこまで考えた壱華は問題はそこじゃないと我に返る。
(無理だよ、無理。無理無理無理…)
脳内の壱華は頭を抱え地面にめり込んでいる。
だがもう時間はない。
学園が近付くと壱華は地獄へ向かうかのような面持ちに変化し、隣の長次を密かに心配させていた。
長次は姉の悩みを推察してはいるが、口出しできる問題ではないので黙っているしかなかった。
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「宿題が入れ替わっていた?」
「二年生のが四年生に…とか?」
「逆ならできないわよね」
くのいち教室の始業挨拶で屋内鍛錬場に集められた壱華たちは、山本シナの話す内容に驚く。
どうやら夏休みの宿題が事務の小松田秀作のミスで混ざってしまい、一部正しく行き渡らなかったらしい。
そこまで聞いた壱華は、あの朝顔や虫採りはやはり一年生の宿題だったかと苦笑いした。
しかしそうなると、本来長次や文次郎がやるべきものは誰が、と疑問が湧く。
「くのいち教室のは私が全て管理していたので事なきを得ました。皆さんから提出されたものは後ほど確認します。忍たま側の宿題ですが、照合した際に一年は組の山村喜三太の宿題が六年生用と判明しました。他にも入れ替わりはありましたが、問題は…」
周囲がざわつき、まずいのではないかとくのたま達は顔を見合わせる。
何せ上級生の宿題、特に五、六年生はかなり難度の高いものばかりだからだ。
「その宿題は、オーマガトキ城主の
シナの説明に辺りが静まり返り、くのたまたちは真剣に聞いている。
救出部隊のメンバーは宿題をやってこなかった生徒に委ねられ、きり丸、しんべヱ、三年生の神崎左門、四年生の平滝夜叉丸、五年生の不破雷蔵と鉢屋三郎、六年生の善法寺伊作の七人だ。
引率の教師二人と共にオーマガトキへ向かう。
壱華はあの伊作が宿題をやらなかったのが信じられず追及すると、どうやら当の戦場に赴き、タソガレドキの軍旗を取ってくるという宿題はこなしていた。
だが兵の救護の為にこれを裂いて包帯とし、旗一本分は持ち帰るも失格となった。
伊作らしいといえばらしい。
実はこの事件、喜三太の救出に留まらず裏で大きな問題が発生していた。
学園長の客人である
オーマガトキが負けるとの確信から密かにタソガレドキに通じ、
困った手潟は学園長へ相談にやって来たのだ。
戦線はひと月前にぶつかって以降、タソガレドキが圧倒的優位であるにも関わらず謎の膠着状態が続いており、明らかにおかしい。
これは裏で何かあるなと学園長は推察している。
そして喜三太救出と共に園田村の問題解決の為、作戦が練られた。
