長次の姉はくのたま六年生
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忍術学園・門前───
私服に身を包む卒業生に向かい合う在校生たちの姿があった。
中在家壱華はくのたまの先輩を前に涙が止まらない。
「先輩ー!いつでも学園に寄って私と手合わせしてください…!どうかお元気で」
「壱華、あなた泣きすぎ」
「どうして卒業する私たちより泣いてるのよ」
「また必ず会いましょう」
三人のくのたま卒業生は苦笑しながら壱華の肩を優しく撫でる。
かわいい後輩との別れは寂しいが、生きていればいずれまた会えるのだから。
「最上級生になるんだから、ほら顔を上げて前を向くの。私たちに続くのはあなたたちなんだからね」
「「はい!」」
壱華とその隣のくのたまにバトンを渡すように強い眼差しを向ける。
「ううっ、私、先輩たちのように来年必ず卒業します!そしてくノ一として頑張ります!」
「ええ。二人とも期待してるわよ。名残惜しいけど、私たちはもう行くわ。壱華、勘兵衛に挨拶しなくていいの?」
その言葉に、壱華は忍たまの在校生と別れの挨拶をしている男を見て目をカッ開く。
「します!では先輩方、卒業おめでとうございます。頑張ってください!」
90度に頭を下げると、次の瞬間もの凄い勢いで勘兵衛と呼ばれた男の前に移動する。
「若王寺 先輩!」
「おぉ壱華」
割り込むように現れた壱華に、その場にいた全員が視線を向けた。
「私もですが長次が大変お世話になりました。多大なるご支援とご厚情 をいただき、心より感謝申し上げます。今の長次があるのは若王寺先輩がいらしたからこそです。図書委員長として常に弟を導いていただいたこと、多岐にわたるご指導誠にありがとうございました!今後のご活躍を心よりお祈り申し上げます」
まさに感恩戴徳 、彼女は泣き顔そのままにこれまた深々と90度を超えて頭を下げた。
勘兵衛は驚くも、こんなやりとりもこれで最後かと思えば寂しさも芽生える。
「ああ…!俺の方こそ世話になったな。長次も壱華も頑張れよ」
「「はい!」」
長次は姉の隣に並びしかと返事をした。
普段はもそもそ喋る男だが、尊敬する先輩との別れはしっかり声が出ている。
その場に三人しかいないような感動的な別れの場面、ギャラリーと化してしまった他の面々は一様に同じ顔をしていた。
勘兵衛と並んで本日の主役なのに蚊帳の外状態の卒業生・桜木清右衛門は、僅かに口元を引き攣らせた。
「…壱華、私もいるんだが?」
忘れていないよな、と笑みを張り付けた菩薩夜叉こと清右衛門。
それを何度も目にしてきた体育委員会後輩の小平太は、染み付いた習慣でビシッと背筋が伸びる。
「桜木先輩もお世話になりました。どうぞお元気で」
"温度差えげつない"
これはこの場にいる皆の心の声である。
先ほどの勘兵衛への挨拶と比べ清右衛門には随分とあっさりで、明らかに熱量が違う。
「フッ…お前もな」
そろそろ行くかと表面上笑みを絶やさない清右衛門だが、内心面白くない。
とはいえ仕方のないことで、勘兵衛に比べたら彼は中在家姉弟と関わりが薄いからだ。
ちなみに薄いと言ってもごく普通であり、勘兵衛が特別なだけである。
「「「「「「「「ありがとうございました。お元気で!」」」」」」」」
在校生の忍たま六人とくのたま二人は一斉に頭を下げ、卒業生は手を振り学園を巣立って行った。
彼らの姿が見えなくなると、忍たまたちは再び学園内に戻り壱華も門を潜ろうとした。
毎年この見送りだけは事務の小松田にサインを求められることはない。
壱華はふと振り返り卒業生が去って行った方向を見つめる。
一年後、自分も同じように学園を去る時はどんな気持ちなのだろう。
まだ見ぬ未来に漠然とした不安と期待が込み上げ、拳を握り締めた壱華は足早に門を潜った。
「壱華、シナ先生が待ってるよ。行こう」
「うん…!」
同期のくのたまと肩を並べ走る。
新たな一年の始まりだ。
これはある一人のくのたまの物語である────
私服に身を包む卒業生に向かい合う在校生たちの姿があった。
中在家壱華はくのたまの先輩を前に涙が止まらない。
「先輩ー!いつでも学園に寄って私と手合わせしてください…!どうかお元気で」
「壱華、あなた泣きすぎ」
「どうして卒業する私たちより泣いてるのよ」
「また必ず会いましょう」
三人のくのたま卒業生は苦笑しながら壱華の肩を優しく撫でる。
かわいい後輩との別れは寂しいが、生きていればいずれまた会えるのだから。
「最上級生になるんだから、ほら顔を上げて前を向くの。私たちに続くのはあなたたちなんだからね」
「「はい!」」
壱華とその隣のくのたまにバトンを渡すように強い眼差しを向ける。
「ううっ、私、先輩たちのように来年必ず卒業します!そしてくノ一として頑張ります!」
「ええ。二人とも期待してるわよ。名残惜しいけど、私たちはもう行くわ。壱華、勘兵衛に挨拶しなくていいの?」
その言葉に、壱華は忍たまの在校生と別れの挨拶をしている男を見て目をカッ開く。
「します!では先輩方、卒業おめでとうございます。頑張ってください!」
90度に頭を下げると、次の瞬間もの凄い勢いで勘兵衛と呼ばれた男の前に移動する。
「
「おぉ壱華」
割り込むように現れた壱華に、その場にいた全員が視線を向けた。
「私もですが長次が大変お世話になりました。多大なるご支援とご
まさに
勘兵衛は驚くも、こんなやりとりもこれで最後かと思えば寂しさも芽生える。
「ああ…!俺の方こそ世話になったな。長次も壱華も頑張れよ」
「「はい!」」
長次は姉の隣に並びしかと返事をした。
普段はもそもそ喋る男だが、尊敬する先輩との別れはしっかり声が出ている。
その場に三人しかいないような感動的な別れの場面、ギャラリーと化してしまった他の面々は一様に同じ顔をしていた。
勘兵衛と並んで本日の主役なのに蚊帳の外状態の卒業生・桜木清右衛門は、僅かに口元を引き攣らせた。
「…壱華、私もいるんだが?」
忘れていないよな、と笑みを張り付けた菩薩夜叉こと清右衛門。
それを何度も目にしてきた体育委員会後輩の小平太は、染み付いた習慣でビシッと背筋が伸びる。
「桜木先輩もお世話になりました。どうぞお元気で」
"温度差えげつない"
これはこの場にいる皆の心の声である。
先ほどの勘兵衛への挨拶と比べ清右衛門には随分とあっさりで、明らかに熱量が違う。
「フッ…お前もな」
そろそろ行くかと表面上笑みを絶やさない清右衛門だが、内心面白くない。
とはいえ仕方のないことで、勘兵衛に比べたら彼は中在家姉弟と関わりが薄いからだ。
ちなみに薄いと言ってもごく普通であり、勘兵衛が特別なだけである。
「「「「「「「「ありがとうございました。お元気で!」」」」」」」」
在校生の忍たま六人とくのたま二人は一斉に頭を下げ、卒業生は手を振り学園を巣立って行った。
彼らの姿が見えなくなると、忍たまたちは再び学園内に戻り壱華も門を潜ろうとした。
毎年この見送りだけは事務の小松田にサインを求められることはない。
壱華はふと振り返り卒業生が去って行った方向を見つめる。
一年後、自分も同じように学園を去る時はどんな気持ちなのだろう。
まだ見ぬ未来に漠然とした不安と期待が込み上げ、拳を握り締めた壱華は足早に門を潜った。
「壱華、シナ先生が待ってるよ。行こう」
「うん…!」
同期のくのたまと肩を並べ走る。
新たな一年の始まりだ。
これはある一人のくのたまの物語である────
