柱たちの胸
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一方、石垣にヒョイっと飛び乗った清治は、その向こう側のひどい惨状を見て愕然とした。五人の隊士たちが血だらけになって、あちらこちらでうめき声を上げているのである。
「すめ……ら……ぎィ……ッ!」
一人が清治に気付き、声を振り絞るように清治の名を呼んだが、安堵したのか刀を握ったまま力尽きて気を失った。
「どうしたんですか! 何があったんですか!」
すぐに駆け寄って、一人一人声をかけて行くが、誰一人として状況を説明できる者はいない。生きているか、死んでいるかの判断もつかない。
(みんな揃って東京に帰るって言っとったのに……。これやと……アカンか)
ここに派遣された隊士はまだ駆け出しの者が多い。辛くて苦しい鍛錬を経てみんな隊士になったのに、こんなにあっけなく死んでしまうのかと思うと悔しくて仕方がない。ほんの数分前はみんな元気だった。一体この数分の間に何があったのか。何か声が聞こえたような気もしたが、笑い声だと思っていた。
その声がまさか悲鳴だったのかもしれないと思うと、すぐに異変に気付かなかった事が悔やまれる。
「みんな、大丈夫だ! すぐに隠が来て手当てしてくれる! それまで呼吸を使って血の巡りを緩やかにするんだ!」
返事がなくても、清治は必死で呼びかけた。
「血の巡りか……。こいつらにそんな小細工ができるとは思わんのう」
「‼ 誰だッ‼」
木が茂る裏山の大きな一本の木の後ろから、背の低い男が顔を覗かせる。
「もう虫の息じゃわい。鱗滝の奴、せめて一思いに殺してしまえば良かったんじゃ」
男は草を掻き分けて近づいてくる。清治はその顔に見覚えがあった。前髪は掻き上げて逆立ち、太い眉に吊り上がったような鋭い目。左目の下にはくっきりとした切り傷の跡があり、三角の鱗模様の枯れ草色の羽織を羽織っている。
「まさか……。でもそんなはずは……」
顔や出で立ちは桑島そのものだが、髭はなく、髪も白髪ではなく真っ黒で、歳も壮年期のように見える。右脚も義足ではない。知っている桑島とは何か違う。
「……お前は誰だ!」
「知っとるじゃろう。知らんとは言わせんぞ」
「クッ……。俺が知ってる方とは違う!」
「そうじゃろうなぁ。鬼となってすっかり若返ったわい。失った脚も生えて元通り、何と具合のいいもんじゃ」
大きな桑島の目が清治を睨みつける。その瞳は鬼特有の猫の目のような瞳孔をしている。
「嘘をつけ。何が『若返った』だよ。お前は桑島先生のふりをしているだけだろ‼」
「ハッハッハ……。ならば見事避けてみい」
────シィィィィィィ……
────雷の呼吸 壱ノ型 霹靂一閃
「‼」
眩しい光に目が眩む。清治は目を見開いたままだったが目には何も映らず、刀の柄に手を掛けたまま抜こうとした瞬間にはもう桑島は背後にいた。とにかく速い。清治が知っている雷の呼吸よりもはるかに技が速い。
「どうじゃ」
羽織の左の袖がバッサリ斬られ、だらんとぶら下がっている。
「お前も全ての型が使えるという話じゃが、比べてどうじゃ? その様子ではお前は一歩も動けず、わしの軌跡も追えんかったようじゃな」
「くそっ……!」
清治はギリギリと歯を食いしばった。
「すめ……ら……ぎィ……ッ!」
一人が清治に気付き、声を振り絞るように清治の名を呼んだが、安堵したのか刀を握ったまま力尽きて気を失った。
「どうしたんですか! 何があったんですか!」
すぐに駆け寄って、一人一人声をかけて行くが、誰一人として状況を説明できる者はいない。生きているか、死んでいるかの判断もつかない。
(みんな揃って東京に帰るって言っとったのに……。これやと……アカンか)
ここに派遣された隊士はまだ駆け出しの者が多い。辛くて苦しい鍛錬を経てみんな隊士になったのに、こんなにあっけなく死んでしまうのかと思うと悔しくて仕方がない。ほんの数分前はみんな元気だった。一体この数分の間に何があったのか。何か声が聞こえたような気もしたが、笑い声だと思っていた。
その声がまさか悲鳴だったのかもしれないと思うと、すぐに異変に気付かなかった事が悔やまれる。
「みんな、大丈夫だ! すぐに隠が来て手当てしてくれる! それまで呼吸を使って血の巡りを緩やかにするんだ!」
返事がなくても、清治は必死で呼びかけた。
「血の巡りか……。こいつらにそんな小細工ができるとは思わんのう」
「‼ 誰だッ‼」
木が茂る裏山の大きな一本の木の後ろから、背の低い男が顔を覗かせる。
「もう虫の息じゃわい。鱗滝の奴、せめて一思いに殺してしまえば良かったんじゃ」
男は草を掻き分けて近づいてくる。清治はその顔に見覚えがあった。前髪は掻き上げて逆立ち、太い眉に吊り上がったような鋭い目。左目の下にはくっきりとした切り傷の跡があり、三角の鱗模様の枯れ草色の羽織を羽織っている。
「まさか……。でもそんなはずは……」
顔や出で立ちは桑島そのものだが、髭はなく、髪も白髪ではなく真っ黒で、歳も壮年期のように見える。右脚も義足ではない。知っている桑島とは何か違う。
「……お前は誰だ!」
「知っとるじゃろう。知らんとは言わせんぞ」
「クッ……。俺が知ってる方とは違う!」
「そうじゃろうなぁ。鬼となってすっかり若返ったわい。失った脚も生えて元通り、何と具合のいいもんじゃ」
大きな桑島の目が清治を睨みつける。その瞳は鬼特有の猫の目のような瞳孔をしている。
「嘘をつけ。何が『若返った』だよ。お前は桑島先生のふりをしているだけだろ‼」
「ハッハッハ……。ならば見事避けてみい」
────シィィィィィィ……
────雷の呼吸 壱ノ型 霹靂一閃
「‼」
眩しい光に目が眩む。清治は目を見開いたままだったが目には何も映らず、刀の柄に手を掛けたまま抜こうとした瞬間にはもう桑島は背後にいた。とにかく速い。清治が知っている雷の呼吸よりもはるかに技が速い。
「どうじゃ」
羽織の左の袖がバッサリ斬られ、だらんとぶら下がっている。
「お前も全ての型が使えるという話じゃが、比べてどうじゃ? その様子ではお前は一歩も動けず、わしの軌跡も追えんかったようじゃな」
「くそっ……!」
清治はギリギリと歯を食いしばった。
