柱たちの胸
名前変換
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
雨が降っていたせいか、どんよりと薄暗い夕暮れ空は異様に黄色かった。その空を、風に乗って両翼を大きく広げ飛び、清治の目の前に降り立った鴉・烏龍 。着地と同時にサッと羽をしまう。老いた鴉とはいえ、まだまだ十分隊士に仕えられるほど颯然とした身のこなしだ。
彼は麓の優玄 らの様子を見に行っていた。
「アカンワ。意識ガナイママヤ。慌テテ針刺シテ、管カラ何カ入レトッタワ」
「……」
「点滴か。くそっ、思ったより毒が回ってたんだな」
清治が何か言う前に、報告に答えたのは獪岳の方だった。
「鬼のくせに。殺すんだったらもっと手っ取り早い方法があるだろ。それを真綿で首を絞めるようによぉ……」
「もしかすると、優玄さんが何のためにこの寺に来たのか、奴は勘付いたんじゃないですかね」
「親を殺して喰った蓮峰 を追いかけてここまで来たって事か?」
「はい。それに、いくら修験道のためって言っても、さすがにずっとみんなと一緒に食事をとらなかったり、昼間出歩かないってのは怪しまれます。他の僧侶があの人は厳格に修行をする人だと思っていても、おかしな人だなと多少は思うものですよ。だって野草みたいな物だけで生きてるなんておかしいでしょ。本当は他所で何か食ってるんじゃないかって思いますって。そんな事もあって焦ったはずですよ」
鬼は人間と違うからこそ、その違いを隠さなければならない。蓮峰は僧侶たちの動向を日頃から監視していたはずだ。都合のいい事に、傲慢で体格も良い蓮峰に誰も逆らおうとしなかったが、できるだけ僧侶たちの噂の種を自分以外に仕向ける必要があった。
「奴は自分が鬼だって疑われないようにするために、優玄さんを何かと曝 して注目させるように仕向けたんじゃないですか? 要は目逸らしですよ。決して反抗的ではないし、気が小さくてひ弱な優玄さんを標的にしたって感じですね。ダメな奴だと吹聴すれば、誰も優玄さんを信用しなくなります。そして一緒になっていじめる。そういう状況は都合が良かったんじゃないですかね」
「でもよ、だからって何で毒なんだよ。意味分かんねぇよ」
「さぁ。ただの趣味じゃないですか? たまに聞きませんか? 少しずつ毒を盛っていって、だんだん弱ってくるのを見て楽しんでるっていう頭のおかしい奴がいるって。タチが悪けりゃ観察日記までつけてるっていう……」
「聞かねぇよ、そんな話! お前はまだそんな歳のくせに、一体今まで何を見聞きしてきたんだよ。滋賀ってのはそんなに物騒な土地なのか?」
「違いますよ。これは東京に出て来てから聞いた話です。東京なんて日本一物騒な所でしょ。何しろ獪岳さんの生まれ故郷ですからね」
「何だとこの野郎! 俺は関係ねぇだろ!」
軽口はさておき、烏龍の話では優玄は解毒法に詳しい医者の元に急いで連れて行く事になったようだ。下山した住職と僧侶らは、隊士たちが寝泊まりしていた宿坊へと入り、そこでしばらく世話になると言う。
「じゃあ烏龍、俺たちはこれから、この跡地とここに続く山道を班ごとで手分けして警備すると伝えてくれ。それと宿坊の方も警備を怠らねぇように、特に火には注意しろって言ってくれよ」
「アイヨ班長。ジャア、マタ後デナ。スグ戻ル」
烏龍は隠たちの元へと戻って行った。計画にあったように、檜・柏・楠の三班はそれぞれ担当場所を決めて班員を配置する事にした。東側の山道を檜班、西側の山道を楠班、焼けた寺の敷地内を柏班が担当する事になり、それぞれ任務に就くために散って行った。
彼は麓の
「アカンワ。意識ガナイママヤ。慌テテ針刺シテ、管カラ何カ入レトッタワ」
「……」
「点滴か。くそっ、思ったより毒が回ってたんだな」
清治が何か言う前に、報告に答えたのは獪岳の方だった。
「鬼のくせに。殺すんだったらもっと手っ取り早い方法があるだろ。それを真綿で首を絞めるようによぉ……」
「もしかすると、優玄さんが何のためにこの寺に来たのか、奴は勘付いたんじゃないですかね」
「親を殺して喰った
「はい。それに、いくら修験道のためって言っても、さすがにずっとみんなと一緒に食事をとらなかったり、昼間出歩かないってのは怪しまれます。他の僧侶があの人は厳格に修行をする人だと思っていても、おかしな人だなと多少は思うものですよ。だって野草みたいな物だけで生きてるなんておかしいでしょ。本当は他所で何か食ってるんじゃないかって思いますって。そんな事もあって焦ったはずですよ」
鬼は人間と違うからこそ、その違いを隠さなければならない。蓮峰は僧侶たちの動向を日頃から監視していたはずだ。都合のいい事に、傲慢で体格も良い蓮峰に誰も逆らおうとしなかったが、できるだけ僧侶たちの噂の種を自分以外に仕向ける必要があった。
「奴は自分が鬼だって疑われないようにするために、優玄さんを何かと
「でもよ、だからって何で毒なんだよ。意味分かんねぇよ」
「さぁ。ただの趣味じゃないですか? たまに聞きませんか? 少しずつ毒を盛っていって、だんだん弱ってくるのを見て楽しんでるっていう頭のおかしい奴がいるって。タチが悪けりゃ観察日記までつけてるっていう……」
「聞かねぇよ、そんな話! お前はまだそんな歳のくせに、一体今まで何を見聞きしてきたんだよ。滋賀ってのはそんなに物騒な土地なのか?」
「違いますよ。これは東京に出て来てから聞いた話です。東京なんて日本一物騒な所でしょ。何しろ獪岳さんの生まれ故郷ですからね」
「何だとこの野郎! 俺は関係ねぇだろ!」
軽口はさておき、烏龍の話では優玄は解毒法に詳しい医者の元に急いで連れて行く事になったようだ。下山した住職と僧侶らは、隊士たちが寝泊まりしていた宿坊へと入り、そこでしばらく世話になると言う。
「じゃあ烏龍、俺たちはこれから、この跡地とここに続く山道を班ごとで手分けして警備すると伝えてくれ。それと宿坊の方も警備を怠らねぇように、特に火には注意しろって言ってくれよ」
「アイヨ班長。ジャア、マタ後デナ。スグ戻ル」
烏龍は隠たちの元へと戻って行った。計画にあったように、檜・柏・楠の三班はそれぞれ担当場所を決めて班員を配置する事にした。東側の山道を檜班、西側の山道を楠班、焼けた寺の敷地内を柏班が担当する事になり、それぞれ任務に就くために散って行った。
