隠滅の炎
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離れから戻った清治 と獪岳、そして優玄の三人は、住職の房へ向かった。優玄は廊下に膝をつき、頭を下げながら声を張り上げる。
「優玄がお詫びに参りました!」
住職からの返事はない。その代わりに、介抱して付き添っていた僧侶が返事をする。
「和尚 は気が滅入っておられる。下がれ」
「……! ですが──」
「うるさい! 下がれ!」
「優玄、どの面下げてここへ来たんや! お前を和尚に会わせるわけにはいかんぞ!」
突然襲われた住職の心情を慮って、僧侶たちが優玄を近づけまいとしている様子がよく分かる。優玄は住職を刺そうとした。その事は嘘でも間違いでもない。
謝りたいが、会わせてもらえない優玄は、泣きそうな目で清治らに訴える。襲われた衝撃が落ち着くまで優玄の顔を見たくないという住職の気持ちは理解できるが、事態は急を告げている。この寺に住む人間にとんでもない者が紛れ込んでいたという事実は、すぐにでも住職の耳に入れなければなるまい。
「住職、鬼殺隊の皇 です。こんな時に大変申し訳ないですけど、ぜひお聞きしてもらいたい事があるんです!」
「…………」
しばらく待っても問いかけに返事がないので、清治が目配せをすると獪岳は頷いた。
「住職さんよッ、このままじゃアンタらの命も危ないんだ! 話を聞いてくれ!」
少々荒っぽい口調だが、獪岳もまた呼びかける。
「殺されてもいいのか!? 鬼はこの寺の中にいたんだぞ! この吉野山で人をさらって喰ってる奴が! アンタらだっていつ襲われてもおかしくねぇんだぞ!」
この事件の核心を突くような事をほのめかすと、しばらくの間を置いて襖がスーッと開いた。
「鬼はこの寺の中に……やと?」
青ざめた顔の住職が顔を出して訊いた。
「それはホンマの話か……?」
「そうだ! だからオメェらっ、ゴチャゴチャ言ってねぇで俺らの話を聞けって言ってんだよ! さっきの優玄の事よりも、もっと大変な事なんだよ!」
獪岳の勢いに押されて住職は三人を房に入れ、静かに襖を閉めた。
蝋燭の火で照らされた夜明け前の薄暗い部屋に、住職と二人の僧侶、そして清治ら三人が向かい合って座る。優玄は顔を上げられないのか、潰れた蛙のようにずっとペタンと平伏したまま畳に額をつけていた。
「どういう事や」
「チッ、だからよぉッ──」
つい声を荒げてしまう獪岳に手をやって止め、清治はコホンと咳をした。
「俺から詳しく話しましょう。まずは優玄さんの事ですが、両親を亡くされた彼はそもそも出家したかったわけではなく、ある『鬼』を追ってこの寺へと辿り着いたんです」
「ある『鬼』やと……?」
普段の恵比寿顔からは一切の笑みが消えてしまっている。住職は清治の話に息を呑むようにじっと耳を傾けた。
「はい。この寺に住んでいる人喰い鬼です」
「優玄がお詫びに参りました!」
住職からの返事はない。その代わりに、介抱して付き添っていた僧侶が返事をする。
「
「……! ですが──」
「うるさい! 下がれ!」
「優玄、どの面下げてここへ来たんや! お前を和尚に会わせるわけにはいかんぞ!」
突然襲われた住職の心情を慮って、僧侶たちが優玄を近づけまいとしている様子がよく分かる。優玄は住職を刺そうとした。その事は嘘でも間違いでもない。
謝りたいが、会わせてもらえない優玄は、泣きそうな目で清治らに訴える。襲われた衝撃が落ち着くまで優玄の顔を見たくないという住職の気持ちは理解できるが、事態は急を告げている。この寺に住む人間にとんでもない者が紛れ込んでいたという事実は、すぐにでも住職の耳に入れなければなるまい。
「住職、鬼殺隊の
「…………」
しばらく待っても問いかけに返事がないので、清治が目配せをすると獪岳は頷いた。
「住職さんよッ、このままじゃアンタらの命も危ないんだ! 話を聞いてくれ!」
少々荒っぽい口調だが、獪岳もまた呼びかける。
「殺されてもいいのか!? 鬼はこの寺の中にいたんだぞ! この吉野山で人をさらって喰ってる奴が! アンタらだっていつ襲われてもおかしくねぇんだぞ!」
この事件の核心を突くような事をほのめかすと、しばらくの間を置いて襖がスーッと開いた。
「鬼はこの寺の中に……やと?」
青ざめた顔の住職が顔を出して訊いた。
「それはホンマの話か……?」
「そうだ! だからオメェらっ、ゴチャゴチャ言ってねぇで俺らの話を聞けって言ってんだよ! さっきの優玄の事よりも、もっと大変な事なんだよ!」
獪岳の勢いに押されて住職は三人を房に入れ、静かに襖を閉めた。
蝋燭の火で照らされた夜明け前の薄暗い部屋に、住職と二人の僧侶、そして清治ら三人が向かい合って座る。優玄は顔を上げられないのか、潰れた蛙のようにずっとペタンと平伏したまま畳に額をつけていた。
「どういう事や」
「チッ、だからよぉッ──」
つい声を荒げてしまう獪岳に手をやって止め、清治はコホンと咳をした。
「俺から詳しく話しましょう。まずは優玄さんの事ですが、両親を亡くされた彼はそもそも出家したかったわけではなく、ある『鬼』を追ってこの寺へと辿り着いたんです」
「ある『鬼』やと……?」
普段の恵比寿顔からは一切の笑みが消えてしまっている。住職は清治の話に息を呑むようにじっと耳を傾けた。
「はい。この寺に住んでいる人喰い鬼です」
