騙された者
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一番奥にある住職の房へと急いだ獪岳は、その途中の廊下で清治によって取り押さえられている優玄を見た。
優玄の手には刃渡り五寸ほどの懐剣が握られている。その手首を押さえ、集まった者たちの中に獪岳の顔を見つけた清治は、すぐに応援を頼んだ。
「獪岳さん、早く! 早くこの刀を取ってください!」
「優玄、わしや! わしやで! 何でこんな事をするんや~!」
腰を抜かしたようにひっくり返っている住職。まん丸の恵比寿顔が青ざめている。
呆然と立ち尽くす獪岳。ついさっきまで外で手合わせをしていた清治は、いつの間にここへ来たのだろう。あれから三分、いや一分ほどしか経っていないはずだ。
「ああっ、もう誰でもいいから早く! 優玄さん、落ち着いてくださいよ! 一体何をしてはるんですか!」
「うわぁぁぁぁぁっ! コイツは鬼やぁぁぁ‼ 鬼なんやぁぁぁっ‼ わあああああああああああっ‼」
気が狂ったように叫ぶ優玄。この混沌とした中で、呆気に取られている獪岳を除いて、班員たちは何とか優玄の手から懐剣を奪い取った。
「うわぁぁぁぁぁっ! 離せ‼ 離せぇぇぇぇっ‼」
「……チッ、仕方ない‼ 優玄さん、ちょっと失礼──」
暴れちぎる優玄の横首を、清治はストンと手刀で打つ。すると優玄は人形のように力なく倒れた。
「ゆっ……優玄。何でこんな事を……」
住職はヘナヘナと脱力して泣き始めた。
「大丈夫ですか。怪我はありませんか?」
「わ、分からん……。ああ……でも、ほれ、寝間着の襟が……」
心臓を狙ったか、ちょうど襟の合わせ目に刀の先が引っかかったような跡がある。
「失礼しますよ」
清治は住職の襟を開き、胸を確かめる。幸い厚着をしていたせいか、皮膚までは到達していなかった。
「獪岳さん、俺は住職から話を聞くので、みんなで優玄さんを別の場所に運んでください。空いている所はありませんか」
「優玄の房があるで。こっちや」
駆けつけていた僧侶の案内で、優玄は自室へと運ばれて行った。
「一体何があったんですか」
「わしは……わしは小便に目が覚めて厠に立ったんや。その帰りや。急にドタドタと足音がしたから振り向いたら、背後から優玄が叫びながらわしに……」
余程驚いたのか、住職はひっくり返ったまま体勢を直せずにいる。清治はその老体を支えてやり、背中を優しくさすってやった。
「大丈夫ですよ。もう大丈夫ですさかい」
「……何やわし、何か優玄に恨まれるような事したんか……?」
「そんな事ありませんよって。これは何かの間違いです。そうに違いありません」
「……わしが鬼やと言うとったが」
「いえ、違います。錯乱して、何か勘違いなさっておるようです」
「錯乱……どういう事や」
突然の事で混乱する住職。事情が分かるまで、一旦自分の房で休んでもらう事にした。
優玄の手には刃渡り五寸ほどの懐剣が握られている。その手首を押さえ、集まった者たちの中に獪岳の顔を見つけた清治は、すぐに応援を頼んだ。
「獪岳さん、早く! 早くこの刀を取ってください!」
「優玄、わしや! わしやで! 何でこんな事をするんや~!」
腰を抜かしたようにひっくり返っている住職。まん丸の恵比寿顔が青ざめている。
呆然と立ち尽くす獪岳。ついさっきまで外で手合わせをしていた清治は、いつの間にここへ来たのだろう。あれから三分、いや一分ほどしか経っていないはずだ。
「ああっ、もう誰でもいいから早く! 優玄さん、落ち着いてくださいよ! 一体何をしてはるんですか!」
「うわぁぁぁぁぁっ! コイツは鬼やぁぁぁ‼ 鬼なんやぁぁぁっ‼ わあああああああああああっ‼」
気が狂ったように叫ぶ優玄。この混沌とした中で、呆気に取られている獪岳を除いて、班員たちは何とか優玄の手から懐剣を奪い取った。
「うわぁぁぁぁぁっ! 離せ‼ 離せぇぇぇぇっ‼」
「……チッ、仕方ない‼ 優玄さん、ちょっと失礼──」
暴れちぎる優玄の横首を、清治はストンと手刀で打つ。すると優玄は人形のように力なく倒れた。
「ゆっ……優玄。何でこんな事を……」
住職はヘナヘナと脱力して泣き始めた。
「大丈夫ですか。怪我はありませんか?」
「わ、分からん……。ああ……でも、ほれ、寝間着の襟が……」
心臓を狙ったか、ちょうど襟の合わせ目に刀の先が引っかかったような跡がある。
「失礼しますよ」
清治は住職の襟を開き、胸を確かめる。幸い厚着をしていたせいか、皮膚までは到達していなかった。
「獪岳さん、俺は住職から話を聞くので、みんなで優玄さんを別の場所に運んでください。空いている所はありませんか」
「優玄の房があるで。こっちや」
駆けつけていた僧侶の案内で、優玄は自室へと運ばれて行った。
「一体何があったんですか」
「わしは……わしは小便に目が覚めて厠に立ったんや。その帰りや。急にドタドタと足音がしたから振り向いたら、背後から優玄が叫びながらわしに……」
余程驚いたのか、住職はひっくり返ったまま体勢を直せずにいる。清治はその老体を支えてやり、背中を優しくさすってやった。
「大丈夫ですよ。もう大丈夫ですさかい」
「……何やわし、何か優玄に恨まれるような事したんか……?」
「そんな事ありませんよって。これは何かの間違いです。そうに違いありません」
「……わしが鬼やと言うとったが」
「いえ、違います。錯乱して、何か勘違いなさっておるようです」
「錯乱……どういう事や」
突然の事で混乱する住職。事情が分かるまで、一旦自分の房で休んでもらう事にした。
