騙された者
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昨夜と同じように各班の担当場所で警備を行う事になった隊士たち。廃刀令からかなりの年月が過ぎた大正の世だが、この鬼殺隊という組織の中には好んで刀を振り回すような荒くれ者たちもいる。指令が入り、鬼を討伐しに意気込んではるばるやって来たはずなのに、この退屈な夜間任務を続ける事に納得がいかない者も当然ながらいた。
指示に忠実に従う者、反発する者は半々くらいか。幸い獪岳率いる柏班の人間は割と大人しい者が多かった。何しろ班長が怖すぎるのである。文句を一言でも言えば、どんな雷が落ちるか分からない。触らぬ神に祟りなしの精神で物を申さずお勤めに殉ずるのみだ。
冗談はさておき、班員八人中六人が水の呼吸の使い手という事が判明しているが、その同門の結束はずいぶんお固いようである。
「俺の育手は元・水柱の鱗滝左近次様の元で修業したんだぜ」
「俺の育手の同期もだ」
「俺はな、一度育手に連れられて狭霧山に行って、お会いした事があるんだ。頭なんか真っ白でさ、結構歳取ってるんだろうけど、まだまだ現役でいけそうなお方だったな」
「へぇ、いいなぁ。俺も一度お会いしたいよ」
「天狗のお面で顔を隠されているんだよな。何でなんだろう」
「顔に大きな傷でもあんのかな?」
数いる育手の中でも、かつて水柱として名を馳せた鱗滝の名はよく知られている。六人はその後、各々の師の自慢に花が咲いていた。柏班は雷と水ですっかり二つに分かれてしまったようである。雷の二人は自己主張が強くてやたらと主導権を握っているので、多数決の原理は通用せず、水の隊士たちは反論する余地もない。その上、この二人がいれば安心だと思っているのか、夜間任務中も気を緩めてお喋りばかりしている。
咎めるべきなのだろうが、雷二人も似たようなものである。さっきからずっとコソコソと話し込んでいるのだ。
「だからよぉ、優玄の事なんか別に関係ねぇだろ」
「関係ありますよ! 重要な証言者ですよ? 万が一あの懐剣で命を絶たれでもしたら大変ですよ!」
「そんな事より、鬼の事だろうが。いちいち人の事に首突っ込むなよ。おせっかいが過ぎるぞ」
清治 は先に優玄を救いたいと思っているが、そうではない獪岳と意見が分かれている。
「あの懐剣を取り上げたい。あんなに心が弱っている人が刃物なんて持ってるとろくな事にならない」
「ケッ、何でこう人の世話ばっかしたがんのかね。昼間だって隠の女に胡麻擦ってよぉ。何の得になるんだ」
「得しようなんて思ってませんよ。困っている人を助けるのが鬼殺隊でしょ」
「違うぜ。鬼を殺すのが鬼殺隊だ。勘違いすんなよ。鬼さえ殺せりゃあそれでいいんだよ。金も地位ももらえるしな。イチイチ人間なんか相手にすんじゃねぇよ、バカが」
また雲行きが怪しくなる。この利己的な考えは賛同できないが、清治はこれ以上の衝突を避けようと自分の持ち場へ向かった。
指示に忠実に従う者、反発する者は半々くらいか。幸い獪岳率いる柏班の人間は割と大人しい者が多かった。何しろ班長が怖すぎるのである。文句を一言でも言えば、どんな雷が落ちるか分からない。触らぬ神に祟りなしの精神で物を申さずお勤めに殉ずるのみだ。
冗談はさておき、班員八人中六人が水の呼吸の使い手という事が判明しているが、その同門の結束はずいぶんお固いようである。
「俺の育手は元・水柱の鱗滝左近次様の元で修業したんだぜ」
「俺の育手の同期もだ」
「俺はな、一度育手に連れられて狭霧山に行って、お会いした事があるんだ。頭なんか真っ白でさ、結構歳取ってるんだろうけど、まだまだ現役でいけそうなお方だったな」
「へぇ、いいなぁ。俺も一度お会いしたいよ」
「天狗のお面で顔を隠されているんだよな。何でなんだろう」
「顔に大きな傷でもあんのかな?」
数いる育手の中でも、かつて水柱として名を馳せた鱗滝の名はよく知られている。六人はその後、各々の師の自慢に花が咲いていた。柏班は雷と水ですっかり二つに分かれてしまったようである。雷の二人は自己主張が強くてやたらと主導権を握っているので、多数決の原理は通用せず、水の隊士たちは反論する余地もない。その上、この二人がいれば安心だと思っているのか、夜間任務中も気を緩めてお喋りばかりしている。
咎めるべきなのだろうが、雷二人も似たようなものである。さっきからずっとコソコソと話し込んでいるのだ。
「だからよぉ、優玄の事なんか別に関係ねぇだろ」
「関係ありますよ! 重要な証言者ですよ? 万が一あの懐剣で命を絶たれでもしたら大変ですよ!」
「そんな事より、鬼の事だろうが。いちいち人の事に首突っ込むなよ。おせっかいが過ぎるぞ」
「あの懐剣を取り上げたい。あんなに心が弱っている人が刃物なんて持ってるとろくな事にならない」
「ケッ、何でこう人の世話ばっかしたがんのかね。昼間だって隠の女に胡麻擦ってよぉ。何の得になるんだ」
「得しようなんて思ってませんよ。困っている人を助けるのが鬼殺隊でしょ」
「違うぜ。鬼を殺すのが鬼殺隊だ。勘違いすんなよ。鬼さえ殺せりゃあそれでいいんだよ。金も地位ももらえるしな。イチイチ人間なんか相手にすんじゃねぇよ、バカが」
また雲行きが怪しくなる。この利己的な考えは賛同できないが、清治はこれ以上の衝突を避けようと自分の持ち場へ向かった。
