吉野山
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結局何事も起こらず朝まで過ごした柏班の隊士たちは、みんな揃って点呼の為に下山し、昨日全体で集まった山道入り口の広場にやって来た。
他の班の隊士たちもぼちぼち集まり出し、情報交換が始まる。
「俺たちは麓の民宿にいたんだけどさ、どうも鬼天狗は女好きみたいで、よく露天風呂を覗いてるって話だったぜ」
「何だよ、本当の話だったのかよ。鬼のくせに助平だな」
「いや、分かんねえぞ。そこの宿は混浴なんだろ? 女を狙っていたとは限らねぇぞ」
「うわぁ……。まぁどっちにしろ助平に違いねぇな」
一晩中起きていたと言っても、若い隊士たちは元気なものである。昨日の日が暮れる頃には暗い顔をしていたが、夜が明ければ人間様の天下だと言わんばかりに安堵の顔を見せてケラケラ笑っている。
「獪岳さん、どうでしたか?」
「何もねぇよ。明け方に寺の坊主が一人帰って来たくらいで」
「寺の人が?」
「ああ。ほら、あの性格のキツそうな奴だ」
「蓮峰さんですか?」
「ああ、確かそんな名前だったな。よく見りゃ案外ガタイも良くて何かこう……坊さんっていうより武道家みてぇな奴なんだな、アイツ。どこ行ってたんだって訊いたら、修行だ何だって言いやがった。何の修行だっつったら、お前に関係ないだとよ。チッ、思い出したらまたムカついてきたぜ」
修験者の修行には夜間の鍛錬もある。夜通し瞑想を行ったり、真っ暗な山中を歩き回ったりするというものだが、それは目に見えないものの存在を感じ、深い悟りを得る為とされている。
「ふぅん……」
「何だよキヨ、何かあったのか?」
「いえ、何でもないです。あっ、隠さんが来ました。向こうに行きましょう」
清治は獪岳を促し、隠の女性の元へと向かった。
点呼を終え、早速各班からの報告をまとめたが、やはり大した情報はなかった。それどころか、直接目撃したという人物はおらず、どこどこの誰々の何々が見たとか聞いたとか、そんな曖昧なものばかりだった。また「~なのではないか」という主観的な考えで証言する者が多く、全くあてにならなかった。
「困りましたね……」
隠が呟くと、それを聞いた隊士たちは途端に肩を落とす。
「獪岳さん、同士討ちをさせるってどういう事でしょうかね」
「ああっ?」
「いや、これだけ何の話も出てこないって事は、姿を見た人は必ず殺されてるからって事なんでしょうね。ここの隊士たちはどんな風に同士討ちに至ったんでしょうか。それが分かれば、俺たちも防げるでしょうけど。でも同士討ちはその時だけで、俺たちの場合は違うかもしれませんよね」
清治は獪岳に訊くが、獪岳は口ごもるだけだ。
「そんなの……分かんねぇよ」
「血鬼術を使う鬼なんですかね?」
「だから分かんねぇって!」
「分かんないのは分かってます。だから一緒に考えてくださいよ。仲間じゃないですか」
「ヤダね」
「何でですか班長。頼りにしてんのに」
「勝手に頼るんじゃねぇよ。自分で何とかしろ」
フラフラと逃げる獪岳を、清治は「班長、班長」と呼んで追いかけ回した。
他の班の隊士たちもぼちぼち集まり出し、情報交換が始まる。
「俺たちは麓の民宿にいたんだけどさ、どうも鬼天狗は女好きみたいで、よく露天風呂を覗いてるって話だったぜ」
「何だよ、本当の話だったのかよ。鬼のくせに助平だな」
「いや、分かんねえぞ。そこの宿は混浴なんだろ? 女を狙っていたとは限らねぇぞ」
「うわぁ……。まぁどっちにしろ助平に違いねぇな」
一晩中起きていたと言っても、若い隊士たちは元気なものである。昨日の日が暮れる頃には暗い顔をしていたが、夜が明ければ人間様の天下だと言わんばかりに安堵の顔を見せてケラケラ笑っている。
「獪岳さん、どうでしたか?」
「何もねぇよ。明け方に寺の坊主が一人帰って来たくらいで」
「寺の人が?」
「ああ。ほら、あの性格のキツそうな奴だ」
「蓮峰さんですか?」
「ああ、確かそんな名前だったな。よく見りゃ案外ガタイも良くて何かこう……坊さんっていうより武道家みてぇな奴なんだな、アイツ。どこ行ってたんだって訊いたら、修行だ何だって言いやがった。何の修行だっつったら、お前に関係ないだとよ。チッ、思い出したらまたムカついてきたぜ」
修験者の修行には夜間の鍛錬もある。夜通し瞑想を行ったり、真っ暗な山中を歩き回ったりするというものだが、それは目に見えないものの存在を感じ、深い悟りを得る為とされている。
「ふぅん……」
「何だよキヨ、何かあったのか?」
「いえ、何でもないです。あっ、隠さんが来ました。向こうに行きましょう」
清治は獪岳を促し、隠の女性の元へと向かった。
点呼を終え、早速各班からの報告をまとめたが、やはり大した情報はなかった。それどころか、直接目撃したという人物はおらず、どこどこの誰々の何々が見たとか聞いたとか、そんな曖昧なものばかりだった。また「~なのではないか」という主観的な考えで証言する者が多く、全くあてにならなかった。
「困りましたね……」
隠が呟くと、それを聞いた隊士たちは途端に肩を落とす。
「獪岳さん、同士討ちをさせるってどういう事でしょうかね」
「ああっ?」
「いや、これだけ何の話も出てこないって事は、姿を見た人は必ず殺されてるからって事なんでしょうね。ここの隊士たちはどんな風に同士討ちに至ったんでしょうか。それが分かれば、俺たちも防げるでしょうけど。でも同士討ちはその時だけで、俺たちの場合は違うかもしれませんよね」
清治は獪岳に訊くが、獪岳は口ごもるだけだ。
「そんなの……分かんねぇよ」
「血鬼術を使う鬼なんですかね?」
「だから分かんねぇって!」
「分かんないのは分かってます。だから一緒に考えてくださいよ。仲間じゃないですか」
「ヤダね」
「何でですか班長。頼りにしてんのに」
「勝手に頼るんじゃねぇよ。自分で何とかしろ」
フラフラと逃げる獪岳を、清治は「班長、班長」と呼んで追いかけ回した。
