いざ、初任務へ!
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明け方、どうにもこうにも腹が減った清治は、藤の家紋の家ではなく蝶屋敷へと向かった。善逸の様子も気になるし、炭治郎や伊之助の顔も見ておきたい。
「おはようご……あれ、まだ開いてへんな」
まだ玄関戸は鍵がかかっていたので、庭に回って縁側へ行く。さすがに雨戸は開け放たれ、清治はそこで草履を脱いで上った。
「ギャアァァァァァァ! 痛い~、痛い~ッ‼」
静かな朝に響き渡る汚い声。それが誰の声か、清治にはすぐ分かった。
急いで病室に向かって中を覗くと、案の定自分の師範様がビービー泣き喚いている。
「おはようございます、師範。どうしたんですか、朝からみっともない声を出して」
「あっ、清治~! 痛いんだよぉぉぉッ! ものすごく!」
「痛いのは見りゃ分かりますけど、少し静かにした方が……」
「くしゃみしたら何て言うか、こう……雷に打たれたような? ビリビリ、バリバリ~って! そんな感じで全身に響いちゃってさぁっ!」
「俺にはその感覚がちょっとよく分かりませんが、とにかく安静にしててくださいよ。おしっこは大丈夫ですか?」
「おしっこ? そりゃしたいよ!」
「だったら尿瓶持って来ますよ。女の子に採ってもらうよりいいでしょ?」
清治は、廊下を歩いていたすみを捉まえて尿瓶の在り処を訊く。「後でこちらでしますからぁ~」と言われたが、善逸がもう我慢の限界を迎えて急いでいると嘘をつき、やっと借りる事ができた。
徹夜明けの空腹の身で、朝から男の尿を持って歩く清治。だが蝶屋敷の女の子たちも、きっと同じように昨夜はつきっきりで看護をしていたに違いない。
隠たちは吉原の対応で忙しく、蝶屋敷の応援に来られない。戦闘の爪痕を隠すので手一杯のようだ。さっきすみについでに聞いた話では、何者かが吉原遊郭のあちらこちらにダイナマイトを仕掛け、一気に爆発させたという事にしたらしい。
それも、犯人と思しき「若い男」は何を思ったか「女装」をして「遊女」として「近江屋」で雇ってもらおうとしていたが、あまりにも「デカい女」だった事を「不審」に思った「女衒」が声を掛けて正体を「見破って」追い出したらしい。現在、その「デカい女装男」を「重要参考人」として「指名手配」しているとの事。
それを聞いた時、清治の目は白目になった。すみは「そんな変な話、よく思いつきますよね」とケラケラ笑っていたが、事実と言えば事実である。ただ、ダイナマイトは仕掛けてない。
吉原での出来事を、誰がそんな話としてでっち上げたのか尋ねずともすぐ分かる。
(音柱め……。いや、もう柱やないんか。左目と左手を失くしはった言う事やけど、ずいぶんとお元気そうな事ですなぁ……)
京風の嫌味をはんなりと心の中で唱えてみる。後で見舞いではなくお礼参りに行かなければと思っている。
腹に据えかねる事ではあるが、何か一つ、原因はこれだという話を出せば民衆は納得する。さらに、より具体性のある話を盛り込めば、それ以上勘繰る気も起きなくなる。「おかしな奴がいたもんだな」で七十五日後にはすっかり忘れ去られるはずだ。
清治が善逸の病室へ戻ると、善逸はきよに体を拭かれているところだった。
「あっ、俺がしますよ」
「いえ、皇さんはどうぞ休んでいてください」
「でも、忙しいでしょ? 俺は暇なんで」
そう言って、無理矢理きよから手拭いを奪った。
「何だよー。どうせ拭いてもらうなら女の子の方が良かったのに。……きよちゃんみたいにもっと優しく拭いてくれよ」
「十分優しいでしょ。それに俺だって『きよちゃん』です」
「はぁぁぁぁっ!? んもー、お前じゃ情が感じられないよっ。泥の付いた大根や芋を洗うみたいにゴシゴシしないでよねっ!」
「似たようなもんでしょ」
「何だって!? ったたたたた! あーっ、足が滅茶苦茶痛いよぉぉぉお!」
きよはクスクス笑っている。きよに訊けば、炭治郎と伊之助はまだ意識不明のままで予断を許さないようである。顔を見たいと言ったが、今は面会謝絶で治療以外は出入りできないのだと言われてしまった。
鬼に心臓の辺りを刺された伊之助は、運良く(本人的には意図的に)心臓損傷を免れたものの、鬼の毒が体中に回って止血が上手くできず、非常に危ない状態にあると言う。伊之助の病室にはアオイがずっとつきっきりで看病しているので、通常の蝶屋敷の運営はすみ、きよ、なほの三人で回している。
「神崎さん、大丈夫ですかね」
「それが……。吉原からの一報が入って以来、飲まず食わず眠らずで。伊之助さんが運ばれて来てからは特に。一時たりとも傍を離れようとしません」
「そうなんですか……」
心の中で密かに伊之助の身を案じていたアオイ。その伊之助がひどい状態で運ばれてきた時は、驚いて気を失いそうになったのではないか。
「炭治郎さんの元にも先程カナヲさんがいらして、任務明けでしたので様子を聞いてすぐに帰って行かれました」
「カナヲさん?」
「花の呼吸の方で、炭治郎さんと同期の女の子です。この間音柱様に連れて行かれそうになった時に一緒にいらした方ですよ。ほら、一つ縛りの髪を耳の横で束ねている……」
「ああ、あの無口そうな人! 何ですか、炭治郎さんの恋人ですか?」
「えへへへへ、分かります? 何だかそういう匂いしますよね~?」
きよは恋バナになると俄然興味を持つ。そんな時、善逸はちり紙でズズーっと豪快に鼻をかんだ。
「わっ、びっくりした~」
「何だよ、鼻をかんで悪いかよ」
「別にいいですけど。そう言えば、師範の元には女の子の気配は全くないですよね。みんな心配してくれる人がいるのに……」
「うっさいな!」
「確か昨日……寝言で禰……何だっけな、禰何とか子ちゃんは俺がどうこうって言ってましたけど」
「はぁぁぁぁぁっ!? そんな事言ってないし……って痛ててててて!」
その話になると、ハッとしたきよは慌てて桶を抱えて「これで失礼します」と言って病室を出て行った。
「おはようご……あれ、まだ開いてへんな」
まだ玄関戸は鍵がかかっていたので、庭に回って縁側へ行く。さすがに雨戸は開け放たれ、清治はそこで草履を脱いで上った。
「ギャアァァァァァァ! 痛い~、痛い~ッ‼」
静かな朝に響き渡る汚い声。それが誰の声か、清治にはすぐ分かった。
急いで病室に向かって中を覗くと、案の定自分の師範様がビービー泣き喚いている。
「おはようございます、師範。どうしたんですか、朝からみっともない声を出して」
「あっ、清治~! 痛いんだよぉぉぉッ! ものすごく!」
「痛いのは見りゃ分かりますけど、少し静かにした方が……」
「くしゃみしたら何て言うか、こう……雷に打たれたような? ビリビリ、バリバリ~って! そんな感じで全身に響いちゃってさぁっ!」
「俺にはその感覚がちょっとよく分かりませんが、とにかく安静にしててくださいよ。おしっこは大丈夫ですか?」
「おしっこ? そりゃしたいよ!」
「だったら尿瓶持って来ますよ。女の子に採ってもらうよりいいでしょ?」
清治は、廊下を歩いていたすみを捉まえて尿瓶の在り処を訊く。「後でこちらでしますからぁ~」と言われたが、善逸がもう我慢の限界を迎えて急いでいると嘘をつき、やっと借りる事ができた。
徹夜明けの空腹の身で、朝から男の尿を持って歩く清治。だが蝶屋敷の女の子たちも、きっと同じように昨夜はつきっきりで看護をしていたに違いない。
隠たちは吉原の対応で忙しく、蝶屋敷の応援に来られない。戦闘の爪痕を隠すので手一杯のようだ。さっきすみについでに聞いた話では、何者かが吉原遊郭のあちらこちらにダイナマイトを仕掛け、一気に爆発させたという事にしたらしい。
それも、犯人と思しき「若い男」は何を思ったか「女装」をして「遊女」として「近江屋」で雇ってもらおうとしていたが、あまりにも「デカい女」だった事を「不審」に思った「女衒」が声を掛けて正体を「見破って」追い出したらしい。現在、その「デカい女装男」を「重要参考人」として「指名手配」しているとの事。
それを聞いた時、清治の目は白目になった。すみは「そんな変な話、よく思いつきますよね」とケラケラ笑っていたが、事実と言えば事実である。ただ、ダイナマイトは仕掛けてない。
吉原での出来事を、誰がそんな話としてでっち上げたのか尋ねずともすぐ分かる。
(音柱め……。いや、もう柱やないんか。左目と左手を失くしはった言う事やけど、ずいぶんとお元気そうな事ですなぁ……)
京風の嫌味をはんなりと心の中で唱えてみる。後で見舞いではなくお礼参りに行かなければと思っている。
腹に据えかねる事ではあるが、何か一つ、原因はこれだという話を出せば民衆は納得する。さらに、より具体性のある話を盛り込めば、それ以上勘繰る気も起きなくなる。「おかしな奴がいたもんだな」で七十五日後にはすっかり忘れ去られるはずだ。
清治が善逸の病室へ戻ると、善逸はきよに体を拭かれているところだった。
「あっ、俺がしますよ」
「いえ、皇さんはどうぞ休んでいてください」
「でも、忙しいでしょ? 俺は暇なんで」
そう言って、無理矢理きよから手拭いを奪った。
「何だよー。どうせ拭いてもらうなら女の子の方が良かったのに。……きよちゃんみたいにもっと優しく拭いてくれよ」
「十分優しいでしょ。それに俺だって『きよちゃん』です」
「はぁぁぁぁっ!? んもー、お前じゃ情が感じられないよっ。泥の付いた大根や芋を洗うみたいにゴシゴシしないでよねっ!」
「似たようなもんでしょ」
「何だって!? ったたたたた! あーっ、足が滅茶苦茶痛いよぉぉぉお!」
きよはクスクス笑っている。きよに訊けば、炭治郎と伊之助はまだ意識不明のままで予断を許さないようである。顔を見たいと言ったが、今は面会謝絶で治療以外は出入りできないのだと言われてしまった。
鬼に心臓の辺りを刺された伊之助は、運良く(本人的には意図的に)心臓損傷を免れたものの、鬼の毒が体中に回って止血が上手くできず、非常に危ない状態にあると言う。伊之助の病室にはアオイがずっとつきっきりで看病しているので、通常の蝶屋敷の運営はすみ、きよ、なほの三人で回している。
「神崎さん、大丈夫ですかね」
「それが……。吉原からの一報が入って以来、飲まず食わず眠らずで。伊之助さんが運ばれて来てからは特に。一時たりとも傍を離れようとしません」
「そうなんですか……」
心の中で密かに伊之助の身を案じていたアオイ。その伊之助がひどい状態で運ばれてきた時は、驚いて気を失いそうになったのではないか。
「炭治郎さんの元にも先程カナヲさんがいらして、任務明けでしたので様子を聞いてすぐに帰って行かれました」
「カナヲさん?」
「花の呼吸の方で、炭治郎さんと同期の女の子です。この間音柱様に連れて行かれそうになった時に一緒にいらした方ですよ。ほら、一つ縛りの髪を耳の横で束ねている……」
「ああ、あの無口そうな人! 何ですか、炭治郎さんの恋人ですか?」
「えへへへへ、分かります? 何だかそういう匂いしますよね~?」
きよは恋バナになると俄然興味を持つ。そんな時、善逸はちり紙でズズーっと豪快に鼻をかんだ。
「わっ、びっくりした~」
「何だよ、鼻をかんで悪いかよ」
「別にいいですけど。そう言えば、師範の元には女の子の気配は全くないですよね。みんな心配してくれる人がいるのに……」
「うっさいな!」
「確か昨日……寝言で禰……何だっけな、禰何とか子ちゃんは俺がどうこうって言ってましたけど」
「はぁぁぁぁぁっ!? そんな事言ってないし……って痛ててててて!」
その話になると、ハッとしたきよは慌てて桶を抱えて「これで失礼します」と言って病室を出て行った。
