いざ、初任務へ!
名前変換
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鬼は急所の頸を斬られて死んでしまったが、人間の方ではそれについての揉め事が起きていた。
「俺が先に斬ったんですよ!」
「はぁ? お前が下手こいたから俺が斬ってやったんだよ。ありがたく思え」
「何言ってんですか! 俺はちゃんと頸を斬りました! だからこれは俺の手柄です!」
「斬れてなかっただろうが! 大体な、人の獲物を横取りしようとするなんて生意気なんだよ、この泥棒が!」
「泥棒ですって⁉」
嫌な奴だ。面倒な奴だ。清治はそう思った。
「お前、階級は?」
「……癸」
「癸? 癸だって? ハーッハハハハハ! カスが!」
「かっ、カス⁉ 何て失礼な人だ!」
清治はカッとなって手が出そうになる。刀で袈裟斬りでもしてやれば気分スッキリ爽快になるだろうが、そんな事をすれば鬼殺隊を追い出されてしまう。いや、その前に殺人罪でお縄に就いてしまうだろう。
「おいカス、テメェの名前を言え」
「名前? ……皇清治ですけど」
「すめらぎ? 何だその名前は」
「何だって何ですか! ちゃんとした名前でしょうが! 滋賀の皇家って言ったら、歴史ある立派な真宗の寺の──」
「ちゃんとした名前ねぇ……。ケッ、洒落すぎててちょっとなぁ……」
「何が言いたいんですか? そういうアンタは? 普通は人に尋ねる前に自分から名乗るもんでしょう?」
「フンッ。怪しい奴にいきなり自ら名乗るバカがいるかッ。俺ァ獪岳だ」
「かっ、獪岳⁉ 獪岳ってアンタ……!」
清治は腰が抜けそうになるほど驚いた。桑島の弟子、そして善逸の兄弟子であるあの噂の獪岳と同じ名前だ。この傍若無人な喋り方からして、噂に聞く獪岳に違いない。
「獪岳って……苗字が獪で名前が岳って事ですか? 何だか清国……じゃなくて中華民国の人みたいな名前ですね」
「ちげーよ。俺には苗字がねぇんだよ」
「苗字がない? ないって何ですか、ないって。ないわけないでしょう!? アンタ、日本生まれ日本育ちの生粋の日本人なんでしょうが!」
「ねぇからねぇって言ってんだよ! 誰が付けたか知らねえけど、俺は気付いた時から獪岳って名前でしか呼ばれたことがねぇんだよ!」
つり上がった太い眉、稲妻のようにギザギザ散ざん切りの太いもみあげ、開襟した首元には勾玉がぶら下がっている。言っちゃ悪いがどう見ても歌舞伎の悪玉のような風貌だ。苗字を与えるとすれば悪玉獪岳なんかがぴったりだ。
口調も態度も格好も、まるで町のゴロツキである。こんな男でも実は立派な鬼殺隊で、鬼から人を助ける為に夜な夜な働いている……いる……いるの…………か?
(何や、聞いてるよりも余計に性格ひん曲がってそうな奴やな)
清治はムスッとして獪岳を睨む。同じような顔で獪岳も睨み返してきた。同じ呼吸とは言え、仲良くなれそうな気がしない。
「アンタ、桑島先生にちゃんと文出してくださいよ。先生が心配してましたよ」
「ああッ? 何でテメェが先生の事知ってんだよ」
「この羽織が目に入らないんですか!? この鱗模様! この三角の鱗模様が!」
清治は着ている羽織の袖を摘まんで大きく広げて見せる。何も「ははぁ~」とひれ伏せとまでは言わないが、何を言わんとしているかは察していただきたい。
「フンっ、お前も先生の教え子か」
「ええ、とっても短期間でしたけどね! アンタは何で羽織を着ないんですか? アンタもいただいたでしょう?」
「フン、あんなもん着れるかよ」
「着れるでしょう!? もしかして、桃色の羽織だった……とかで恥ずかしがってんじゃないでしょうね⁉」
「ちげーよ! お前はバカか!?」
「バカとかカスとかテメェとか、さっきからアンタ相当口が悪いですね。誰にでもそうなんですか?」
獪岳は答えない。……という事は、きっとそういう事なのだろう。
「カアッ、カアッ。獪岳、何シテル、サッサト次行クゾ」
「あっ、ああ。スマン電光丸」
「アア゛ン? 電光丸様・ダロォ……? グズグズスルナ、オセーンダヨ、クズ」
「クズって言うなっつってんだろ!」
「アア? クズニクズッテ言ッテ悪イカ?」
こちらも口が悪くて性格がひん曲がっているような鎹鴉に促され、獪岳はどこかへ行ってしまった。
「……電光丸って。なんちゅう名前や。しかも主に様付けさせて呼ばせとるなんて。一体どういう教育受けたんや、あの鴉」
うちの琵琶子の方がよっぽどかわいい鴉だと思った清治は、急に寂しさを感じる。桑島に任せた琵琶子の具合はどうだろう。まだ若い鴉である。人間で言えば十代半ばの娘くらいか。
吉原で目撃した戦いが相当に激しいものだったのだろう。せっかく話すのが少し上達したと言うのに、それを語る時にしどろもどろになっていた。ましてや上弦の鬼との血みどろの戦いを見たのである。いくら鴉であっても、何の感情も抱かずに冷静でいられるわけがない。早く伝えなければと思い、死に物狂いで飛んでやって来たのだろう。
清治もまた別の場所へ移動することにした。鬼を探しながらの鬼狩りは時間がかかって仕方がない。向こうから次々出てきてくれれば手間が省けるのだが。
自由気ままな狩人気分でいいと思うが、何か目的を持っての鬼狩りをしてみたい。例えば手配書きにあるような鬼を探して殺すという事だ。せっかく入隊できたと言うのに、今はまだ飼い殺しをされている状態なのである。
「俺が先に斬ったんですよ!」
「はぁ? お前が下手こいたから俺が斬ってやったんだよ。ありがたく思え」
「何言ってんですか! 俺はちゃんと頸を斬りました! だからこれは俺の手柄です!」
「斬れてなかっただろうが! 大体な、人の獲物を横取りしようとするなんて生意気なんだよ、この泥棒が!」
「泥棒ですって⁉」
嫌な奴だ。面倒な奴だ。清治はそう思った。
「お前、階級は?」
「……癸」
「癸? 癸だって? ハーッハハハハハ! カスが!」
「かっ、カス⁉ 何て失礼な人だ!」
清治はカッとなって手が出そうになる。刀で袈裟斬りでもしてやれば気分スッキリ爽快になるだろうが、そんな事をすれば鬼殺隊を追い出されてしまう。いや、その前に殺人罪でお縄に就いてしまうだろう。
「おいカス、テメェの名前を言え」
「名前? ……皇清治ですけど」
「すめらぎ? 何だその名前は」
「何だって何ですか! ちゃんとした名前でしょうが! 滋賀の皇家って言ったら、歴史ある立派な真宗の寺の──」
「ちゃんとした名前ねぇ……。ケッ、洒落すぎててちょっとなぁ……」
「何が言いたいんですか? そういうアンタは? 普通は人に尋ねる前に自分から名乗るもんでしょう?」
「フンッ。怪しい奴にいきなり自ら名乗るバカがいるかッ。俺ァ獪岳だ」
「かっ、獪岳⁉ 獪岳ってアンタ……!」
清治は腰が抜けそうになるほど驚いた。桑島の弟子、そして善逸の兄弟子であるあの噂の獪岳と同じ名前だ。この傍若無人な喋り方からして、噂に聞く獪岳に違いない。
「獪岳って……苗字が獪で名前が岳って事ですか? 何だか清国……じゃなくて中華民国の人みたいな名前ですね」
「ちげーよ。俺には苗字がねぇんだよ」
「苗字がない? ないって何ですか、ないって。ないわけないでしょう!? アンタ、日本生まれ日本育ちの生粋の日本人なんでしょうが!」
「ねぇからねぇって言ってんだよ! 誰が付けたか知らねえけど、俺は気付いた時から獪岳って名前でしか呼ばれたことがねぇんだよ!」
つり上がった太い眉、稲妻のようにギザギザ散ざん切りの太いもみあげ、開襟した首元には勾玉がぶら下がっている。言っちゃ悪いがどう見ても歌舞伎の悪玉のような風貌だ。苗字を与えるとすれば悪玉獪岳なんかがぴったりだ。
口調も態度も格好も、まるで町のゴロツキである。こんな男でも実は立派な鬼殺隊で、鬼から人を助ける為に夜な夜な働いている……いる……いるの…………か?
(何や、聞いてるよりも余計に性格ひん曲がってそうな奴やな)
清治はムスッとして獪岳を睨む。同じような顔で獪岳も睨み返してきた。同じ呼吸とは言え、仲良くなれそうな気がしない。
「アンタ、桑島先生にちゃんと文出してくださいよ。先生が心配してましたよ」
「ああッ? 何でテメェが先生の事知ってんだよ」
「この羽織が目に入らないんですか!? この鱗模様! この三角の鱗模様が!」
清治は着ている羽織の袖を摘まんで大きく広げて見せる。何も「ははぁ~」とひれ伏せとまでは言わないが、何を言わんとしているかは察していただきたい。
「フンっ、お前も先生の教え子か」
「ええ、とっても短期間でしたけどね! アンタは何で羽織を着ないんですか? アンタもいただいたでしょう?」
「フン、あんなもん着れるかよ」
「着れるでしょう!? もしかして、桃色の羽織だった……とかで恥ずかしがってんじゃないでしょうね⁉」
「ちげーよ! お前はバカか!?」
「バカとかカスとかテメェとか、さっきからアンタ相当口が悪いですね。誰にでもそうなんですか?」
獪岳は答えない。……という事は、きっとそういう事なのだろう。
「カアッ、カアッ。獪岳、何シテル、サッサト次行クゾ」
「あっ、ああ。スマン電光丸」
「アア゛ン? 電光丸様・ダロォ……? グズグズスルナ、オセーンダヨ、クズ」
「クズって言うなっつってんだろ!」
「アア? クズニクズッテ言ッテ悪イカ?」
こちらも口が悪くて性格がひん曲がっているような鎹鴉に促され、獪岳はどこかへ行ってしまった。
「……電光丸って。なんちゅう名前や。しかも主に様付けさせて呼ばせとるなんて。一体どういう教育受けたんや、あの鴉」
うちの琵琶子の方がよっぽどかわいい鴉だと思った清治は、急に寂しさを感じる。桑島に任せた琵琶子の具合はどうだろう。まだ若い鴉である。人間で言えば十代半ばの娘くらいか。
吉原で目撃した戦いが相当に激しいものだったのだろう。せっかく話すのが少し上達したと言うのに、それを語る時にしどろもどろになっていた。ましてや上弦の鬼との血みどろの戦いを見たのである。いくら鴉であっても、何の感情も抱かずに冷静でいられるわけがない。早く伝えなければと思い、死に物狂いで飛んでやって来たのだろう。
清治もまた別の場所へ移動することにした。鬼を探しながらの鬼狩りは時間がかかって仕方がない。向こうから次々出てきてくれれば手間が省けるのだが。
自由気ままな狩人気分でいいと思うが、何か目的を持っての鬼狩りをしてみたい。例えば手配書きにあるような鬼を探して殺すという事だ。せっかく入隊できたと言うのに、今はまだ飼い殺しをされている状態なのである。
