吉原炎上
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辺りは薄暗くなって手元も見えにくくなってきた。清治は一通り薪割りを終えると、作業を見飽きて井戸の桶に張られた水で水浴びをしている琵琶子を呼んだ。今から吉原に飛んでもらって、善逸のたちの様子を窺って来てもらうつもりである。
「吉原……? 何デ?」
琵琶子は嘴をポカンと開けたまま、首を傾げた。
「だからさ、師範が潜入捜査をしてるんだよ。音柱の嫁さんたちがどうなったか気になるんだよ。情報もないし」
「嫁サン……カ。女ノ心配スル清治サン嫌イ」
「はぁぁぁぁっ!?」
「黄色イ人ヲ見テ来ルノハイイケド、女ノ事ハ知ラナイヨ」
「だったらそれでもいいから見て来てよ。多分師範には会えないと思うから、もし長髪の白髪頭の腕の太いデカい男がいたら、その人に嫁さんたちは見つかったかどうか聞いて来て。いいか、デカい男だぞ、デカい男。俺よりもずーっとずーっとデカい男だぞ」
何か含みがあるのか、清治はしつこいくらいに繰り返した。
「分カッタヨ。清治サンノ頼ミナラ、アタシ行クヨ。明日ノ朝ニハ戻ッテ来ルヨ、だーりん」
「だ、だーりん⁉」
「しのぶサンニ教エテモラッタ異国ノ言葉。アノ人スゴイ、何デモ知ッテルヨ」
「異国の言葉ねぇ……。で、どういう意味なんだ?」
「……カッ!」
琵琶子は逃げるように飛んで行ってしまった。何だかよく分からないまま、清治は割った薪を縄で括り、薪小屋へと運ぶ。辺りには桑島が作る夕餉のいい匂いが漂い始めている。
(へへっ、今日は久しぶりの牛肉やで~)
頼まれて、町で食料品をあれこれ買って来たのだが、今日はそのうちの牛肉を使って牛鍋をすると言う。清治はそれが楽しみでならなかった。育ち盛りの清治には、肉は他の何よりもご馳走である。いつもなら懐と相談しながらできるだけ安い物を求め、しつこく値切ってやっと買うような買い方をするが、今日はたくさん金を渡されて、指を指してあれください、これもくださいと買い物をしてきた。人の金とは言えそんな潔い買い方をすると、とても気分が良かった。さすが元・柱の桑島である。日々質素な生活をしているが、柱であったかつてはいくらでも金を稼げたのだろう。
(俺もいつか柱になれたら……)
今はその日暮らしのような生活をしている清治だが、柱になれたらたくさん稼いで、東京で土地を買い、大きな家を建てて、お嫁さんをもらって、子供たちと賑やかに暮らしたい。ありきたりな夢かもしれないが、その為にはまずは強くならなければならない。そして将来の自分の家族が安心して暮らせるよう、鬼をこの世から完全になくさなければならない。
「痛っ‼ 棘刺さってしもた」
棘を抜くと赤い血が滲んでくる。その赤色を見ると何となく嫌な予感がして、清治は吉原の方角の空を見た。赤黒い夕焼けに照らされた何本もの筋雲が、まるで獣のひっかき傷のように跡を残して空を覆っている。
「何や気持ち悪い空やな」
今夜は何かが起こるのではないかと清治は不安になった。
「吉原……? 何デ?」
琵琶子は嘴をポカンと開けたまま、首を傾げた。
「だからさ、師範が潜入捜査をしてるんだよ。音柱の嫁さんたちがどうなったか気になるんだよ。情報もないし」
「嫁サン……カ。女ノ心配スル清治サン嫌イ」
「はぁぁぁぁっ!?」
「黄色イ人ヲ見テ来ルノハイイケド、女ノ事ハ知ラナイヨ」
「だったらそれでもいいから見て来てよ。多分師範には会えないと思うから、もし長髪の白髪頭の腕の太いデカい男がいたら、その人に嫁さんたちは見つかったかどうか聞いて来て。いいか、デカい男だぞ、デカい男。俺よりもずーっとずーっとデカい男だぞ」
何か含みがあるのか、清治はしつこいくらいに繰り返した。
「分カッタヨ。清治サンノ頼ミナラ、アタシ行クヨ。明日ノ朝ニハ戻ッテ来ルヨ、だーりん」
「だ、だーりん⁉」
「しのぶサンニ教エテモラッタ異国ノ言葉。アノ人スゴイ、何デモ知ッテルヨ」
「異国の言葉ねぇ……。で、どういう意味なんだ?」
「……カッ!」
琵琶子は逃げるように飛んで行ってしまった。何だかよく分からないまま、清治は割った薪を縄で括り、薪小屋へと運ぶ。辺りには桑島が作る夕餉のいい匂いが漂い始めている。
(へへっ、今日は久しぶりの牛肉やで~)
頼まれて、町で食料品をあれこれ買って来たのだが、今日はそのうちの牛肉を使って牛鍋をすると言う。清治はそれが楽しみでならなかった。育ち盛りの清治には、肉は他の何よりもご馳走である。いつもなら懐と相談しながらできるだけ安い物を求め、しつこく値切ってやっと買うような買い方をするが、今日はたくさん金を渡されて、指を指してあれください、これもくださいと買い物をしてきた。人の金とは言えそんな潔い買い方をすると、とても気分が良かった。さすが元・柱の桑島である。日々質素な生活をしているが、柱であったかつてはいくらでも金を稼げたのだろう。
(俺もいつか柱になれたら……)
今はその日暮らしのような生活をしている清治だが、柱になれたらたくさん稼いで、東京で土地を買い、大きな家を建てて、お嫁さんをもらって、子供たちと賑やかに暮らしたい。ありきたりな夢かもしれないが、その為にはまずは強くならなければならない。そして将来の自分の家族が安心して暮らせるよう、鬼をこの世から完全になくさなければならない。
「痛っ‼ 棘刺さってしもた」
棘を抜くと赤い血が滲んでくる。その赤色を見ると何となく嫌な予感がして、清治は吉原の方角の空を見た。赤黒い夕焼けに照らされた何本もの筋雲が、まるで獣のひっかき傷のように跡を残して空を覆っている。
「何や気持ち悪い空やな」
今夜は何かが起こるのではないかと清治は不安になった。
