雷親父
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年老いたとはいえ桑島の目は未だ健在のようで、清治の弱点を幾つも指摘し、悩んでいる事も教えてもないのにぴたりと言い当てた。
十四歳の清治の場合、やはり体は未発達の状態なので、成長に伴い日々状態が変化するという。
何よりも一番大切な事は、自分自身をよく知ろうとする事。そして変化に気付く事。今日の自分と明日の自分は同じではなく、人は決して停滞する事はない──。そんな風に教えられた清治は、毎日必ず刀に触れて自分の調子を知り、鍛錬を欠かさない事が何よりも大切なのだと肝に銘じた。
「まずは全ての基本、壱ノ型を見直そう。壱ノ型で重要なのは体のどこの部分じゃ」
「足、そして腕です」
「結構。では訊く。足についてじゃが、具体的にどの部分じゃ」
「太もも、ふくらはぎ……だと思います」
「そうじゃ。じゃがな、最も重要なのは土踏まずじゃ。これが鍛えられておらんと、瞬発力を最大限に生かす事ができんのじゃ」
土踏まずにはバネの役割があり、膝や腰への衝撃の吸収や分散、体幹の維持に重要な部分である。いくら脚部が鍛えられていても、この根っこに当たる土踏まずが完成されていなければ、筋力は十分に発揮できない。また、雷の呼吸で最も重要な直線的な動きの推進力も劣ってしまう。
「どうすれば鍛えられますか?」
「そうじゃな、まずは日頃から足の指をよく動かす事。足の下に手拭いを敷き、それに足を載せ、指だけで手繰り寄せる。青竹踏みも良いじゃろう。それから、任務や稽古以外で歩く時はつま先立ちで歩くようにする」
「そ、そんな簡単な事でいいんですか?」
「走り込みは毎日しておるじゃろうが、それは必ず続けることじゃ。足の指の力が強ければ速く走れる。分かっとると思うが、これは雷の呼吸において最も重要な事じゃな。他の呼吸との圧倒的な違いは速さであるし、そこを極めなければ、全ての型ができたとしても半端なままじゃ」
雷の呼吸と言われるからには、どの型にも速さが求められる。壱ノ型は全ての基本、弐ノ型以降は応用となる。これは身体能力でも同じで、体ができ上がっていないと、技ができても十分に威力を発揮できない。ここが清治が今思い悩んでいる箇所である。
「鬼は人間には非ず、その身体能力もはるかに人間を凌駕しておる。人が鬼に勝つには人を越えた技で立ち向かわなければならず、敵をよく観察して先を読み、鬼の意表を突かんとならん。もちろん自分がせんとする事を体現する能力も必要じゃ。清治、お前は柱になりたいか?」
「はいっ‼ もちろんです‼」
「うむ。これから先、いろんな柱と出会う事もあるじゃろう。中には気が合わん柱もおるじゃろうし、死ぬか生きるかの殺伐とした戦場では物言いに腹が立つ事もあるかもしれん。じゃがな、どんな柱であれ、運だけで成り上がった柱は誰一人としておらず、人を越えた者だけが柱となっておる。いいか、同じ呼吸の者ばかりを追い求めず、いろんな柱の技をよく見るのじゃ。よく見て、よく知る事。どんな時にどんな技を使うのか、普段はどんな鍛錬をしておるのか。そこには必ず自分にないものが見つかるはずじゃ。決して慢心するな。自分の弱点に気付いた者だけが強くなれるんじゃ」
桑島が現役の頃は一体どんな柱だったのか。その時の姿がこの目で見られたならばどんなに良かったか──。
いろんな呼吸に目を向けよと言われたものの、やはり真っ先に興味を持つのはこの桑島老の剣技である。
「清治、どんな鬼よりも強くなれ。親父の仇を討ちたければ、目標はそれしかあるまい」
「はいっ‼」
目を輝かせて返事をする清治を見て、桑島の目には光が戻ったようだった。桑島は山の中でたった一人で過ごし、忙しい弟子たちからはほとんど文も届かない張り合いのない日々を送っている。そんな中、ただの老人となり果てた桑島の元にやって来た清治は、まだこの世に生きている限り、後進を育て続けていかなければならない理由を桑島に思い出させたのかもしれない。
鬼を倒さなくなった今、できる事と言えばその能力を次へと伝える事である。体が衰えても、鬼殺の技と悪鬼滅殺の志は伝え遺す事ができる。
(わしにはまだまだ仕事が残っとる。どれ、もう一つ新芽を見届けてみようかの)
清治はその後、梯子を寝かせて利用したつま先の鍛錬法や、桑島が得意とする投げ縄を使って肩を鍛える方法、太刀筋の矯正などをしてもらい、全身汗びっしょりになるほど鍛錬に励んだ。
十四歳の清治の場合、やはり体は未発達の状態なので、成長に伴い日々状態が変化するという。
何よりも一番大切な事は、自分自身をよく知ろうとする事。そして変化に気付く事。今日の自分と明日の自分は同じではなく、人は決して停滞する事はない──。そんな風に教えられた清治は、毎日必ず刀に触れて自分の調子を知り、鍛錬を欠かさない事が何よりも大切なのだと肝に銘じた。
「まずは全ての基本、壱ノ型を見直そう。壱ノ型で重要なのは体のどこの部分じゃ」
「足、そして腕です」
「結構。では訊く。足についてじゃが、具体的にどの部分じゃ」
「太もも、ふくらはぎ……だと思います」
「そうじゃ。じゃがな、最も重要なのは土踏まずじゃ。これが鍛えられておらんと、瞬発力を最大限に生かす事ができんのじゃ」
土踏まずにはバネの役割があり、膝や腰への衝撃の吸収や分散、体幹の維持に重要な部分である。いくら脚部が鍛えられていても、この根っこに当たる土踏まずが完成されていなければ、筋力は十分に発揮できない。また、雷の呼吸で最も重要な直線的な動きの推進力も劣ってしまう。
「どうすれば鍛えられますか?」
「そうじゃな、まずは日頃から足の指をよく動かす事。足の下に手拭いを敷き、それに足を載せ、指だけで手繰り寄せる。青竹踏みも良いじゃろう。それから、任務や稽古以外で歩く時はつま先立ちで歩くようにする」
「そ、そんな簡単な事でいいんですか?」
「走り込みは毎日しておるじゃろうが、それは必ず続けることじゃ。足の指の力が強ければ速く走れる。分かっとると思うが、これは雷の呼吸において最も重要な事じゃな。他の呼吸との圧倒的な違いは速さであるし、そこを極めなければ、全ての型ができたとしても半端なままじゃ」
雷の呼吸と言われるからには、どの型にも速さが求められる。壱ノ型は全ての基本、弐ノ型以降は応用となる。これは身体能力でも同じで、体ができ上がっていないと、技ができても十分に威力を発揮できない。ここが清治が今思い悩んでいる箇所である。
「鬼は人間には非ず、その身体能力もはるかに人間を凌駕しておる。人が鬼に勝つには人を越えた技で立ち向かわなければならず、敵をよく観察して先を読み、鬼の意表を突かんとならん。もちろん自分がせんとする事を体現する能力も必要じゃ。清治、お前は柱になりたいか?」
「はいっ‼ もちろんです‼」
「うむ。これから先、いろんな柱と出会う事もあるじゃろう。中には気が合わん柱もおるじゃろうし、死ぬか生きるかの殺伐とした戦場では物言いに腹が立つ事もあるかもしれん。じゃがな、どんな柱であれ、運だけで成り上がった柱は誰一人としておらず、人を越えた者だけが柱となっておる。いいか、同じ呼吸の者ばかりを追い求めず、いろんな柱の技をよく見るのじゃ。よく見て、よく知る事。どんな時にどんな技を使うのか、普段はどんな鍛錬をしておるのか。そこには必ず自分にないものが見つかるはずじゃ。決して慢心するな。自分の弱点に気付いた者だけが強くなれるんじゃ」
桑島が現役の頃は一体どんな柱だったのか。その時の姿がこの目で見られたならばどんなに良かったか──。
いろんな呼吸に目を向けよと言われたものの、やはり真っ先に興味を持つのはこの桑島老の剣技である。
「清治、どんな鬼よりも強くなれ。親父の仇を討ちたければ、目標はそれしかあるまい」
「はいっ‼」
目を輝かせて返事をする清治を見て、桑島の目には光が戻ったようだった。桑島は山の中でたった一人で過ごし、忙しい弟子たちからはほとんど文も届かない張り合いのない日々を送っている。そんな中、ただの老人となり果てた桑島の元にやって来た清治は、まだこの世に生きている限り、後進を育て続けていかなければならない理由を桑島に思い出させたのかもしれない。
鬼を倒さなくなった今、できる事と言えばその能力を次へと伝える事である。体が衰えても、鬼殺の技と悪鬼滅殺の志は伝え遺す事ができる。
(わしにはまだまだ仕事が残っとる。どれ、もう一つ新芽を見届けてみようかの)
清治はその後、梯子を寝かせて利用したつま先の鍛錬法や、桑島が得意とする投げ縄を使って肩を鍛える方法、太刀筋の矯正などをしてもらい、全身汗びっしょりになるほど鍛錬に励んだ。
