人さらいの男
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「チュンチュン!」
師範を見送り、どこか物寂しい気持ちで蝶屋敷に入ろうとした瞬間、足元に一匹の雀がやって来た。
「ん? 何だ?」
「チュン!」
雀は何か言いたげに清治に訴える。
「ああ、もしかしてチュン太郎さんじゃないですか?」
アオイはいつも割烹着の衣嚢に忍ばせている米粒を手に載せて、チュン太郎の前へ持って行ってやる。いつもこうしてご主人様の様子を見に来たチュン太郎に、米粒を分けてやっているのだ。
「へぇ。師範の鎹鴉は雀なんですね。……そうか、これって稲妻と関係があるのかな。昔から、雷が鳴ると稲がよく育つって言いますし、雀は時々稲穂も食べちゃうけど、稲の害虫も食べてくれる存在でもある。雀が稲穂を喰い荒らすから捕って駆除したら、今度は蝗 が大量発生して稲が全滅したって話を聞いた事があります。この国は瑞穂の国、昔から雷は天恵として有難がられた。そういう点から見れば雀も然りですよね。雷に雀、うーん、まさに日本的な組み合わせだ」
顎に手を当てうんちくを傾けている清治を見て、アオイは引きつった顔をしていた。心底どうでも良かったらしい。と言っても、誰が善逸にはチュン太郎と決めた組み合わせなのか。善逸が最終選別を突破したのもたまたまなのだから、おそらくこちらも何の意図もないたまたまの事なのではないか。
「カアッ、カアッ!」
そこへ鴉がやって来る。
「あっ、琵琶子じゃないか。どうした、俺に任務の知らせか?」
琵琶子──。清治にあてがわれた鎹鴉の名前である。メスの鴉で、この間から鎹鴉としての任務に就いたばかりの新米鴉である。名前がないとの事だったので、清治が故郷の琵琶湖から取って名前を付けた。
「どうした琵琶子」
「……煉獄サンニ文。御礼ノ文ヲ書ク。忘レテル」
まだたどたどしい言葉を話すが、さして支障はない。
「そっか! ああ、確かにあの煉獄のオッサンに御礼の文を書かなきゃな。無事弟子になれましたってな。ちょっと待っててくれ。すぐ書くから今すぐ届けてくれよ」
清治は急いで屋敷へと入って行った。
「敬具……っと。よし! こんなもんだろう」
すみに紙と筆を借りた清治は、ずいぶん達筆な字で文を書き上げた。
「皇さん、字がお上手なんですね。素敵ですぅ」
「へへっ、まぁ。昔から写経してたし、親父が坊さんは字が綺麗じゃないとだめだって口酸っぱく言ってたんで」
「坊さん?」
「実家が寺なんですよ。ほら、坊さんって葬式で戒名とか書く事もあるし、まぁ必要な嗜みって事で」
綺麗な字で損をする事はない。すみに褒められ、照れて見せる。
「さぁ琵琶子、これを届けてくれ」
足に結んでやると、若い琵琶子は元気いっぱいに飛んで行った。
「さてと……やるかな。ちょっと道場を借りますよ」
「どうぞどうぞ」
清治は誰もいなくなった道場で、たった一人で鍛錬を始めた。
師範を見送り、どこか物寂しい気持ちで蝶屋敷に入ろうとした瞬間、足元に一匹の雀がやって来た。
「ん? 何だ?」
「チュン!」
雀は何か言いたげに清治に訴える。
「ああ、もしかしてチュン太郎さんじゃないですか?」
アオイはいつも割烹着の衣嚢に忍ばせている米粒を手に載せて、チュン太郎の前へ持って行ってやる。いつもこうしてご主人様の様子を見に来たチュン太郎に、米粒を分けてやっているのだ。
「へぇ。師範の鎹鴉は雀なんですね。……そうか、これって稲妻と関係があるのかな。昔から、雷が鳴ると稲がよく育つって言いますし、雀は時々稲穂も食べちゃうけど、稲の害虫も食べてくれる存在でもある。雀が稲穂を喰い荒らすから捕って駆除したら、今度は
顎に手を当てうんちくを傾けている清治を見て、アオイは引きつった顔をしていた。心底どうでも良かったらしい。と言っても、誰が善逸にはチュン太郎と決めた組み合わせなのか。善逸が最終選別を突破したのもたまたまなのだから、おそらくこちらも何の意図もないたまたまの事なのではないか。
「カアッ、カアッ!」
そこへ鴉がやって来る。
「あっ、琵琶子じゃないか。どうした、俺に任務の知らせか?」
琵琶子──。清治にあてがわれた鎹鴉の名前である。メスの鴉で、この間から鎹鴉としての任務に就いたばかりの新米鴉である。名前がないとの事だったので、清治が故郷の琵琶湖から取って名前を付けた。
「どうした琵琶子」
「……煉獄サンニ文。御礼ノ文ヲ書ク。忘レテル」
まだたどたどしい言葉を話すが、さして支障はない。
「そっか! ああ、確かにあの煉獄のオッサンに御礼の文を書かなきゃな。無事弟子になれましたってな。ちょっと待っててくれ。すぐ書くから今すぐ届けてくれよ」
清治は急いで屋敷へと入って行った。
「敬具……っと。よし! こんなもんだろう」
すみに紙と筆を借りた清治は、ずいぶん達筆な字で文を書き上げた。
「皇さん、字がお上手なんですね。素敵ですぅ」
「へへっ、まぁ。昔から写経してたし、親父が坊さんは字が綺麗じゃないとだめだって口酸っぱく言ってたんで」
「坊さん?」
「実家が寺なんですよ。ほら、坊さんって葬式で戒名とか書く事もあるし、まぁ必要な嗜みって事で」
綺麗な字で損をする事はない。すみに褒められ、照れて見せる。
「さぁ琵琶子、これを届けてくれ」
足に結んでやると、若い琵琶子は元気いっぱいに飛んで行った。
「さてと……やるかな。ちょっと道場を借りますよ」
「どうぞどうぞ」
清治は誰もいなくなった道場で、たった一人で鍛錬を始めた。
