人さらいの男
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道場からやって来た三人は、隠れてしばらく様子を見ていたが、どうも大男 がアオイを無理矢理どこかへ連れて行こうとしているらしい。これは伊之助にとって由々しき事態だ。
「おい、ヤベぇぞ。このままじゃ旨ぇ飯食えなくなるぜ。紋逸、一緒にあのデカブツから奪い返すぞ」
「ええっ、俺も?」
「当たりめーだろ! お前は向こうから行け。俺はこっちから行く!」
「……はいはい」
伊之助と善逸は二手に分かれ、塀に上って門の上の宇髄にそーっと近づく。隙を見て宇髄からアオイを取り返すつもりだ。
ところが、気付かれずに接近できたもののアオイに手を伸ばしたところで、急に炭治郎がとんでもない事を言い出した。
「任務なら、アオイさんの代わりに俺が行きます‼ 何でもします! だからアオイさんを解放してください!」
それを聞いて善逸は目をひん剥いて驚いた。
(はぁぁぁぁぁっ!? 何言ってんだよ炭治郎! 任務上がりで判断力鈍ってんじゃねぇの⁉ 判断が早すぎだろ! いくら育手の教育方針だとしても、人生にはじっくりと考える事も必要なんだぞ! 長男のくせに、こんなムッキムキのヤバそうな奴……自称 柱みてぇな怪しいぶっ飛んだオッサンに自らついて行くなんて、死んだ親父さんとお袋さんが草葉の陰で泣いてるぞ!)
善逸は目で炭治郎に訴えるが、炭治郎は全く気付かない。それどころが、あろう事か伊之助までもが乗り気になり「俺も行ってやってもいいぜ!」と賛同した。
(ちょ、おまっ……‼ 余計な事を……! そんなもん、炭治郎だけ行かせればいいだろうが! 何ウッキウキの顔してんだよ、この猪! その猪頭を被ってても、お前の表情は音で分かるんだからな!)
善逸は絶対に行きたくないと内心思いつつも、炭治郎と伊之助からは「お前も行くだろ?」と期待した目で見つめられる。善逸は得も言われぬ無言の圧力を感じて目を泳がせる。
「ちょっと待ってください! 師範が行くのであれば、俺も行きます!」
清治はビシっと手を上げて主張した。
(清治、お前もか~ッ! 誘われてもねぇのに自ら関わるんじゃねぇよ、こんな筋肉オバケに! どいつもこいつも何でこんなにアホばっかなんだよ! 俺は行くなんてまだ一言も 言ってねぇからな!? 俺は行かねぇんだから、お前も当然行く必要はねぇだろ!? 頼むから黙っててくれよ、余計な事を言うんじゃねぇッ!)
善逸が必死で目で訴えているが、清治は宇髄の方を見たきり目を離さずにいる。
「……誰だお前は。見ねぇ顔だな」
完全に初対面。宇髄は清治を訝しそうに見た。
「癸 の皇清治と言います!」
「みずのと だと~!? そんな雑魚は知らんし要らん!」
「だったらお見知りおきください‼ 俺は雷の呼吸を使ってて、こちらの善逸さんの弟子です! まだ下の下、あなたの仰るように雑魚ですからこそ師範の技を見て学ぶ必要があるんです! あなたが何と言おうと知りません! 俺も行きます!」
「はぁぁぁぁぁっ!?」
宇髄と清治は睨み合った。
「何が師範だ! こんな蒲公英 頭の分際で師範だと⁉ 百年、いや、二百万年早いわッ! 綿毛になってから名乗りやがれ! おい、そこの黄色い頭の師範とやら、このクソ生意気な弟子の躾くらいしっかりやっとけ、バカ野郎!」
宇髄が吠える中、アオイもなほも返却されて女の子たちは泣きながら抱き合って無事を喜び合い、急いで屋敷内へと逃げ帰った。それを鼻で笑い、宇髄は屋根の上からズンと地上に下り立つ。
(デケェ……)
絶対に行きたくない善逸は、宇髄の姿を見て青ざめた顔をしていた。とにかくこの男はデカい。デカすぎる。
(何食ったらこんなのになるんだよ。腕パンッパンじゃねぇか。袖はどこへ行ったんだ? まさかはち切れたんじゃねぇだろうな。ジャラジャラと光り物をやたらと着けやがってさ。装飾動物 か? 顔にも落書きして、頭おかしいんじゃね?)
蒲公英 頭と揶揄された分、善逸は心の中で地味な仕返しをする。
「で、どこ行くんだオッサン」
行く気満々の伊之助はせっかちに訊く。
「日本一色と欲に塗 れたド派手な場所……鬼の棲む 遊郭だよ」
「……あん? ユーカク?」
伊之助は全くピンと来ていない。
「ゆっ、遊郭ですって⁉ 何すか、男だけで行ってド派手に遊ぶんすか!?」
清治は大真面目な顔をして言う。炭治郎の顔は石のように固まり、善逸は死んだように白目を剥いている。
「バーカ、違ぇよ」
「あっ、さてはアンタ、柱だとか言いながら、裏では女衒 をやってるんでしょ! だからさっきも女の子たちを置屋に売り飛ばしてひと儲けしようと……。くぅぅぅぅ……何て人だ……! まさか鬼殺隊にそんな汚い奴がいただなんて! 鬼殺隊は正義の集団だと信じていたのに! いくら蝶屋敷のみんなが可愛い子ちゃん揃いだからって言ってもひどいです! 最低です! これはお館様の耳にも入れなきゃ。こっ、これは紛 う事なき、たっ、たたた……隊律違反ですッ!」
一応相手は柱という事もあり、強い口調で言いながらも威圧感に負けて、清治の声は震えている。
「はぁぁぁぁっ!? そんな事をこの天元様がするわけねぇだろうが!」
「でもずいぶん手慣れたような感じでしたけど!? いつもそうやって女の子をさらって売り飛ばしてるんでしょ! それでよく柱の看板背負ってますね!? 恥を知ってください‼」
「お前はさっきから何なんだよ! 正義漢ぶって出しゃばりやがってクソ生意気なんだよ! 去れ!」
「去りません! とにかく話してくださいよ! こんなゴツゴツの男たちを連れて、いかがわしい遊郭に何をしに行くんです⁉」
宇髄は白い歯を見せてニンマリと笑った。
「……潜入捜査だ。てめえらには女に化けて遊郭で働いてもらう。そんで情報を集めるんだ」
「おっ、女に化けるですって⁉」
「……マジかよ。メス猪になれってか!?」
「……」
「……」
全員顔を見合わせて絶句する。
「だから女にやらせようと思ってたんだよ。なのにお前らが茶々入れるからこうなったんだ。お前ら、責任もってちゃんとやれよ。だがそこの癸のお前、お前はダメだ!」
「何でですか!? 師範の行く先は俺も行きます!」
「要らねぇって言ってんだろうが!」
「女装でしたら、俺の顔はこーんな顔の師範よりも断然向いているはずです! 自分で言うのもアレですが、俺の顔は……そのぉ……結構いい方だと思うので!」
確かに歌舞伎で女形をやれそうなほどの端正な顔立ちである。これ見よがしに指されながらサラリと貶された善逸は、スンとした顔で清治を見ている。
「なので俺にやらせてください! 俺は男にも言い寄られる事もありますし、女装すれば一発ですよ! 声色も変えられます!」
「ダメだ! お前はダメだ!」
「何でですか!」
「デカすぎるんだよ! お前のようなデケェ女がいるかっ‼」
清治は善逸たちを一人ずつ見渡し、空を見て蝶屋敷の面々を思い浮かべる。確かにみんな自分よりも小さい。特に女の子たちは町の子も含めてみーんな小さい。それに比べて自分の丈は六尺とまではまだいかないまでも、もう少し伸びればそのくらいになるほどだ。町を歩けば今の時点でも周囲から頭一つ飛び抜けている。宇髄は言わずもがな、清治ですらも大男と呼ばれる背丈である。
「初っ端から怪しまれる奴は使えねぇんだよ! いいか? 騙すのは客だけじゃねぇんだ! 遣り手ババァをも騙してまずは雇ってもらわなきゃなんねぇんだよ! 確かに顔 は綺麗だが、お前だと怪しさ満点だ! ……というわけで、比較的小せぇコイツらを連れて行く。去れ!」
というわけで、清治は師範である善逸としばらく離れることになった。
「師範! 師範がいない間、しっかりと鍛錬をしておきます!」
「あ、ああ……」
「あと、二人で住む家も探しておきますから!」
「う、うん……頼むよ。できれば日当たりが良くて、お化け屋敷みたいなボロ家じゃない所で……」
「分かりました! いい歳して、師範はお化けが怖いんですもんね! では、お気をつけて行ってらっしゃい!」
清治は差し金のように直角に腰を曲げて挨拶をした。
「ほら小僧ども、そろそろ行くぞ。チンタラすんなよな。事は一刻を争うんだ」
言い終わるや否や、宇髄はビュンと走り去った。
「あっ、待ってください宇髄さん!」
炭治郎たちも駆け出す。だが、一瞬で宇髄の姿は見えなくなった。それを見た清治は感嘆の声を漏らした。
「……速ぇ。師範の足が最速だと思ってたけど、上には上がいるんだな……。さすが柱だ」
音柱・宇髄天元。清治はこの時、初めて「柱」と呼ばれる人間を見た。
「おい、ヤベぇぞ。このままじゃ旨ぇ飯食えなくなるぜ。紋逸、一緒にあのデカブツから奪い返すぞ」
「ええっ、俺も?」
「当たりめーだろ! お前は向こうから行け。俺はこっちから行く!」
「……はいはい」
伊之助と善逸は二手に分かれ、塀に上って門の上の宇髄にそーっと近づく。隙を見て宇髄からアオイを取り返すつもりだ。
ところが、気付かれずに接近できたもののアオイに手を伸ばしたところで、急に炭治郎がとんでもない事を言い出した。
「任務なら、アオイさんの代わりに俺が行きます‼ 何でもします! だからアオイさんを解放してください!」
それを聞いて善逸は目をひん剥いて驚いた。
(はぁぁぁぁぁっ!? 何言ってんだよ炭治郎! 任務上がりで判断力鈍ってんじゃねぇの⁉ 判断が早すぎだろ! いくら育手の教育方針だとしても、人生にはじっくりと考える事も必要なんだぞ! 長男のくせに、こんなムッキムキのヤバそうな奴……
善逸は目で炭治郎に訴えるが、炭治郎は全く気付かない。それどころが、あろう事か伊之助までもが乗り気になり「俺も行ってやってもいいぜ!」と賛同した。
(ちょ、おまっ……‼ 余計な事を……! そんなもん、炭治郎だけ行かせればいいだろうが! 何ウッキウキの顔してんだよ、この猪! その猪頭を被ってても、お前の表情は音で分かるんだからな!)
善逸は絶対に行きたくないと内心思いつつも、炭治郎と伊之助からは「お前も行くだろ?」と期待した目で見つめられる。善逸は得も言われぬ無言の圧力を感じて目を泳がせる。
「ちょっと待ってください! 師範が行くのであれば、俺も行きます!」
清治はビシっと手を上げて主張した。
(清治、お前もか~ッ! 誘われてもねぇのに自ら関わるんじゃねぇよ、こんな筋肉オバケに! どいつもこいつも何でこんなにアホばっかなんだよ! 俺は行くなんてまだ
善逸が必死で目で訴えているが、清治は宇髄の方を見たきり目を離さずにいる。
「……誰だお前は。見ねぇ顔だな」
完全に初対面。宇髄は清治を訝しそうに見た。
「
「
「だったらお見知りおきください‼ 俺は雷の呼吸を使ってて、こちらの善逸さんの弟子です! まだ下の下、あなたの仰るように雑魚ですからこそ師範の技を見て学ぶ必要があるんです! あなたが何と言おうと知りません! 俺も行きます!」
「はぁぁぁぁぁっ!?」
宇髄と清治は睨み合った。
「何が師範だ! こんな
宇髄が吠える中、アオイもなほも返却されて女の子たちは泣きながら抱き合って無事を喜び合い、急いで屋敷内へと逃げ帰った。それを鼻で笑い、宇髄は屋根の上からズンと地上に下り立つ。
(デケェ……)
絶対に行きたくない善逸は、宇髄の姿を見て青ざめた顔をしていた。とにかくこの男はデカい。デカすぎる。
(何食ったらこんなのになるんだよ。腕パンッパンじゃねぇか。袖はどこへ行ったんだ? まさかはち切れたんじゃねぇだろうな。ジャラジャラと光り物をやたらと着けやがってさ。
「で、どこ行くんだオッサン」
行く気満々の伊之助はせっかちに訊く。
「日本一色と欲に
「……あん? ユーカク?」
伊之助は全くピンと来ていない。
「ゆっ、遊郭ですって⁉ 何すか、男だけで行ってド派手に遊ぶんすか!?」
清治は大真面目な顔をして言う。炭治郎の顔は石のように固まり、善逸は死んだように白目を剥いている。
「バーカ、違ぇよ」
「あっ、さてはアンタ、柱だとか言いながら、裏では
一応相手は柱という事もあり、強い口調で言いながらも威圧感に負けて、清治の声は震えている。
「はぁぁぁぁっ!? そんな事をこの天元様がするわけねぇだろうが!」
「でもずいぶん手慣れたような感じでしたけど!? いつもそうやって女の子をさらって売り飛ばしてるんでしょ! それでよく柱の看板背負ってますね!? 恥を知ってください‼」
「お前はさっきから何なんだよ! 正義漢ぶって出しゃばりやがってクソ生意気なんだよ! 去れ!」
「去りません! とにかく話してくださいよ! こんなゴツゴツの男たちを連れて、いかがわしい遊郭に何をしに行くんです⁉」
宇髄は白い歯を見せてニンマリと笑った。
「……潜入捜査だ。てめえらには女に化けて遊郭で働いてもらう。そんで情報を集めるんだ」
「おっ、女に化けるですって⁉」
「……マジかよ。メス猪になれってか!?」
「……」
「……」
全員顔を見合わせて絶句する。
「だから女にやらせようと思ってたんだよ。なのにお前らが茶々入れるからこうなったんだ。お前ら、責任もってちゃんとやれよ。だがそこの癸のお前、お前はダメだ!」
「何でですか!? 師範の行く先は俺も行きます!」
「要らねぇって言ってんだろうが!」
「女装でしたら、俺の顔はこーんな顔の師範よりも断然向いているはずです! 自分で言うのもアレですが、俺の顔は……そのぉ……結構いい方だと思うので!」
確かに歌舞伎で女形をやれそうなほどの端正な顔立ちである。これ見よがしに指されながらサラリと貶された善逸は、スンとした顔で清治を見ている。
「なので俺にやらせてください! 俺は男にも言い寄られる事もありますし、女装すれば一発ですよ! 声色も変えられます!」
「ダメだ! お前はダメだ!」
「何でですか!」
「デカすぎるんだよ! お前のようなデケェ女がいるかっ‼」
清治は善逸たちを一人ずつ見渡し、空を見て蝶屋敷の面々を思い浮かべる。確かにみんな自分よりも小さい。特に女の子たちは町の子も含めてみーんな小さい。それに比べて自分の丈は六尺とまではまだいかないまでも、もう少し伸びればそのくらいになるほどだ。町を歩けば今の時点でも周囲から頭一つ飛び抜けている。宇髄は言わずもがな、清治ですらも大男と呼ばれる背丈である。
「初っ端から怪しまれる奴は使えねぇんだよ! いいか? 騙すのは客だけじゃねぇんだ! 遣り手ババァをも騙してまずは雇ってもらわなきゃなんねぇんだよ! 確かに
というわけで、清治は師範である善逸としばらく離れることになった。
「師範! 師範がいない間、しっかりと鍛錬をしておきます!」
「あ、ああ……」
「あと、二人で住む家も探しておきますから!」
「う、うん……頼むよ。できれば日当たりが良くて、お化け屋敷みたいなボロ家じゃない所で……」
「分かりました! いい歳して、師範はお化けが怖いんですもんね! では、お気をつけて行ってらっしゃい!」
清治は差し金のように直角に腰を曲げて挨拶をした。
「ほら小僧ども、そろそろ行くぞ。チンタラすんなよな。事は一刻を争うんだ」
言い終わるや否や、宇髄はビュンと走り去った。
「あっ、待ってください宇髄さん!」
炭治郎たちも駆け出す。だが、一瞬で宇髄の姿は見えなくなった。それを見た清治は感嘆の声を漏らした。
「……速ぇ。師範の足が最速だと思ってたけど、上には上がいるんだな……。さすが柱だ」
音柱・宇髄天元。清治はこの時、初めて「柱」と呼ばれる人間を見た。
