人さらいの男
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第二部 柱の力
早朝、蝶屋敷の台所では捕り物劇が行われていた。
「うぉ~ッ! 離せこの野郎!」
「師範、足を押さえて!」
「もう押さえてんだよッ! わぁぁぁぁ、動くなって! バタバタすんなよ伊之助ぇぇぇ!」
「神崎さん、今のうちに!」
腹に何か を抱えて、隠すようにうずくまる伊之助をみんなで押さえつけ、その隙間からアオイが手を入れて奪取する。
「俺も食いたい! 俺も食う!」
「ダメです! こちらは善逸さんと皇 さんが任務で助けた方からいただいた貴重な軍鶏 の卵です! いただく権利は二人にあるんです!」
「ズリィ、そんなのズリィだろ! 何で行くのが俺じゃなかったんだよ! 俺だったらもっと早く鬼を仕留めて、たんまり卵搔っさらって帰って来れたぞ!」
「それじゃあ途中からやってる事は窃盗です!」
清治 と善逸が阿弥陀ヶ原から蝶屋敷へと帰って来たのはついさっきの事。二人が湯浴みをして疲れを癒している間、朝餉の匂いに釣られて台所へとやって来た伊之助は、作業台に置いてある二つの大きな卵を発見した。
なかなか出回らず、高価である軍鶏 の卵を食べられる機会はめったにある事ではない。そりゃあ伊之助だって食べたくなる。
アオイが背を向けている隙に蛇のようにぬーっと近付き、そーっと卵に手を伸ばしたが、ちょうど湯浴みを済ませた清治が台所へやって来てそれを目撃した、というわけだ。
「伊之助はん、盗みはあきまへんよって!」
「あんッ? ピヨ治、お前今なんつった⁉」
「盗みはいけませんよって言ったんですよ! すみませんねぇ、たまにお国言葉が出ちゃうんですよ」
「お国言葉? 何だそれは」
猪と育った伊之助は、親切な爺に教わって人間の話す言葉を覚えたはいいが、日本語ひとつにしてもいろんな方言があるという概念がない。清治は本来、京訛りの言葉を話し、東京へ来てからは努めてそれを出さないように気を張っているが、たまにポロっと出る時がある。
「まぁ、それはいいですって。とにかく卵だったら今度朝市にでも行って買えばいいじゃないですか。軍鶏 の卵はたまに見かけますよ? 高いけど。お給金たくさんいただいてるでしょ? 運が良ければ買えますって」
「俺は今食いたいんだよ! い~ま~!」
いい歳をして、寝転がってバタバタと手足を振り乱す様は呆れるばかりである。
「だからってあげられませんよ、俺たちだって食いたいんだし! ねぇ、師範」
「何だよケチな子分だな! ひよっ子ピヨ治のくせに卵なんか食ってんじゃねぇ! 共食いになんぞ!」
「ヒヨコは卵の中身で育つんですよ! だから俺には食う権利があります! あと、俺は親分の子分は昨日限りで辞めました! 俺はこちらの善逸さんの子分ですから!」
「はぁぁぁぁぁぁんッ!?」
早々に別れを告げられた伊之助は、何もかもが納得いかない。
「はいはい! もう支度ができましたから! さっさと朝餉を済ませて、鍛錬でも何でもしてください! 善逸さんと清治さんは食べたらお昼まで休んでください!」
神聖であるべき台所でギャアギャアと騒がれて、主 のアオイは機嫌が悪い。食い意地の張った男たちをシッシと追い出し、腰に手を当てて仁王立ち。ハァっとため息をついた。
早朝、蝶屋敷の台所では捕り物劇が行われていた。
「うぉ~ッ! 離せこの野郎!」
「師範、足を押さえて!」
「もう押さえてんだよッ! わぁぁぁぁ、動くなって! バタバタすんなよ伊之助ぇぇぇ!」
「神崎さん、今のうちに!」
腹に
「俺も食いたい! 俺も食う!」
「ダメです! こちらは善逸さんと
「ズリィ、そんなのズリィだろ! 何で行くのが俺じゃなかったんだよ! 俺だったらもっと早く鬼を仕留めて、たんまり卵搔っさらって帰って来れたぞ!」
「それじゃあ途中からやってる事は窃盗です!」
なかなか出回らず、高価である
アオイが背を向けている隙に蛇のようにぬーっと近付き、そーっと卵に手を伸ばしたが、ちょうど湯浴みを済ませた清治が台所へやって来てそれを目撃した、というわけだ。
「伊之助はん、盗みはあきまへんよって!」
「あんッ? ピヨ治、お前今なんつった⁉」
「盗みはいけませんよって言ったんですよ! すみませんねぇ、たまにお国言葉が出ちゃうんですよ」
「お国言葉? 何だそれは」
猪と育った伊之助は、親切な爺に教わって人間の話す言葉を覚えたはいいが、日本語ひとつにしてもいろんな方言があるという概念がない。清治は本来、京訛りの言葉を話し、東京へ来てからは努めてそれを出さないように気を張っているが、たまにポロっと出る時がある。
「まぁ、それはいいですって。とにかく卵だったら今度朝市にでも行って買えばいいじゃないですか。
「俺は今食いたいんだよ! い~ま~!」
いい歳をして、寝転がってバタバタと手足を振り乱す様は呆れるばかりである。
「だからってあげられませんよ、俺たちだって食いたいんだし! ねぇ、師範」
「何だよケチな子分だな! ひよっ子ピヨ治のくせに卵なんか食ってんじゃねぇ! 共食いになんぞ!」
「ヒヨコは卵の中身で育つんですよ! だから俺には食う権利があります! あと、俺は親分の子分は昨日限りで辞めました! 俺はこちらの善逸さんの子分ですから!」
「はぁぁぁぁぁぁんッ!?」
早々に別れを告げられた伊之助は、何もかもが納得いかない。
「はいはい! もう支度ができましたから! さっさと朝餉を済ませて、鍛錬でも何でもしてください! 善逸さんと清治さんは食べたらお昼まで休んでください!」
神聖であるべき台所でギャアギャアと騒がれて、
