仲直りの鰻
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険しい表情の清治の前で、しのぶはニコニコと笑っている。しのぶは自分の考えを伝えただけで、清治の気持ちを一向に問おうとしない。責められるはずだと構えていた清治にとって、拍子抜けする面会だ。
「いけません、音柱様~! 今はまだ診察中なんですからぁぁぁぁ!」
「あのなぁ、俺はもう音柱じゃねぇんだよ! ただの祭りの神だ!」
「祭りの神⁉ 何ですかそれ……あっ、ちょっと待ってくださぁぁぁい‼」
廊下から三人娘の誰かと若い男の声がする。どこかで聞いた声だと思った瞬間、ガラリと不躾に引き戸が開いた。
「宇髄さん⁉」
「おう胡蝶、やっと帰って来たんだってな! 怪我の具合見せに来たぜ!」
清治としのぶは突然の宇髄の来訪に驚いてピンと背筋を伸ばした。宇髄の失った左手首にはグルグル巻きに包帯が巻いてある。また、失った左目には宝石付きのド派手な眼帯がしてあった。失くしたものが多いはずの身なのに、以前よりも爽やかな男になったように見えるのはなぜか。
すっかり忘れていたが、清治にはこの男に言いたい事があった。
「アンタはあの時の……!」
「ん? どっかで見た顔だなぁ。ありゃあ……何つったかな、清子 ……だっけか?」
宇髄は顎に手を当て斜め上を見て、わざとらしくニヤリと笑った。清治は源氏名としてそう名乗ったのを思い出してドキリとした。
「ちっ、違います! 皇清治です!」
「そうだっけか? 俺の記憶では清子っつうデケェ女 だったはずだが……」
「そっそれは咄嗟の……‼ アッ、アンタだって、吉原で師範たちにとんでもない女装させてたでしょ!」
「確かにそうだが、お前にまでしろとは言ってない」
清治は宇髄にキーっと歯を見せて睨みつける。
「まあまあ。何の喧嘩か知りませんけど……。宇髄さん、今は皇さんの診察中です。少し待っていてもらえますか」
「悪いがこの後ちょっと用があるんだよ。先に診てくれねぇか。急いでんだ」
「……分かりました。皇さん、打ち身だけでどこも悪くなかったですよ。気胸だった肺の音も異常ありませんでした。一応傷だけは消毒しておきましょうね。すみちゃん、皇さんをお願い」
「はいっ!」
「……だとよ。さぁ清子、交代交代。どいたどいた!」
宇髄は清治を椅子からどかすとドカリとそこに座った。清治は診察台に座らされ、すみから消毒液を塗られる。
「宇髄さん、前みたいに熱は出ていませんか?」
「全~然」
「目も大丈夫そうですね」
「まぁ時々物にぶつかっちまうがな。遠近感の違いにまだ慣れねぇな」
「そうですか。腕の切断面も綺麗になってきていますね。幻肢痛は?」
「まぁたまに起きるが、そんな時は湯治に行くと多少は紛れるな。いっそ下っ端隊士に温泉でも掘らせて家でも建てちまうかな」
「あらあら、それは素敵ですね。でももしひどくなる事があれば遠慮なく仰ってくださいね」
幻肢痛とは、欠損した箇所も脳はまだあるものとして認識しているせいで、存在するはずのない痛みやしびれ等、様々な症状が出る事である。酷ければ、慢性的に寝不足になったり鬱状態に陥ったりと心身に支障をきたしてしまうので、上手に脳を騙す事が重要になってくる。
大怪我には間違いがないのに、それを大して気にもしていないような宇髄を隣で見ながら、清治は勇玄の事を思った。彼も片目を失明したが、便りでは元気そうに振る舞いながらも、本当は幻肢痛に悩まされているのではないかと心配になる。
「はい皇さん、これで終わりです。お疲れ様でした」
「…………」
すみは清治と目を合わせようとしない。清治も必要以上に話そうとしない。しのぶと宇髄の和気あいあいとした会話が聞こえる中、二人の間には気まずい空気が流れていた。
「いけません、音柱様~! 今はまだ診察中なんですからぁぁぁぁ!」
「あのなぁ、俺はもう音柱じゃねぇんだよ! ただの祭りの神だ!」
「祭りの神⁉ 何ですかそれ……あっ、ちょっと待ってくださぁぁぁい‼」
廊下から三人娘の誰かと若い男の声がする。どこかで聞いた声だと思った瞬間、ガラリと不躾に引き戸が開いた。
「宇髄さん⁉」
「おう胡蝶、やっと帰って来たんだってな! 怪我の具合見せに来たぜ!」
清治としのぶは突然の宇髄の来訪に驚いてピンと背筋を伸ばした。宇髄の失った左手首にはグルグル巻きに包帯が巻いてある。また、失った左目には宝石付きのド派手な眼帯がしてあった。失くしたものが多いはずの身なのに、以前よりも爽やかな男になったように見えるのはなぜか。
すっかり忘れていたが、清治にはこの男に言いたい事があった。
「アンタはあの時の……!」
「ん? どっかで見た顔だなぁ。ありゃあ……何つったかな、
宇髄は顎に手を当て斜め上を見て、わざとらしくニヤリと笑った。清治は源氏名としてそう名乗ったのを思い出してドキリとした。
「ちっ、違います! 皇清治です!」
「そうだっけか? 俺の記憶では清子っつう
「そっそれは咄嗟の……‼ アッ、アンタだって、吉原で師範たちにとんでもない女装させてたでしょ!」
「確かにそうだが、お前にまでしろとは言ってない」
清治は宇髄にキーっと歯を見せて睨みつける。
「まあまあ。何の喧嘩か知りませんけど……。宇髄さん、今は皇さんの診察中です。少し待っていてもらえますか」
「悪いがこの後ちょっと用があるんだよ。先に診てくれねぇか。急いでんだ」
「……分かりました。皇さん、打ち身だけでどこも悪くなかったですよ。気胸だった肺の音も異常ありませんでした。一応傷だけは消毒しておきましょうね。すみちゃん、皇さんをお願い」
「はいっ!」
「……だとよ。さぁ清子、交代交代。どいたどいた!」
宇髄は清治を椅子からどかすとドカリとそこに座った。清治は診察台に座らされ、すみから消毒液を塗られる。
「宇髄さん、前みたいに熱は出ていませんか?」
「全~然」
「目も大丈夫そうですね」
「まぁ時々物にぶつかっちまうがな。遠近感の違いにまだ慣れねぇな」
「そうですか。腕の切断面も綺麗になってきていますね。幻肢痛は?」
「まぁたまに起きるが、そんな時は湯治に行くと多少は紛れるな。いっそ下っ端隊士に温泉でも掘らせて家でも建てちまうかな」
「あらあら、それは素敵ですね。でももしひどくなる事があれば遠慮なく仰ってくださいね」
幻肢痛とは、欠損した箇所も脳はまだあるものとして認識しているせいで、存在するはずのない痛みやしびれ等、様々な症状が出る事である。酷ければ、慢性的に寝不足になったり鬱状態に陥ったりと心身に支障をきたしてしまうので、上手に脳を騙す事が重要になってくる。
大怪我には間違いがないのに、それを大して気にもしていないような宇髄を隣で見ながら、清治は勇玄の事を思った。彼も片目を失明したが、便りでは元気そうに振る舞いながらも、本当は幻肢痛に悩まされているのではないかと心配になる。
「はい皇さん、これで終わりです。お疲れ様でした」
「…………」
すみは清治と目を合わせようとしない。清治も必要以上に話そうとしない。しのぶと宇髄の和気あいあいとした会話が聞こえる中、二人の間には気まずい空気が流れていた。
