阿弥陀ヶ原の鬼婆
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暗い道中でも、他とは違う師範の金髪の違和感はすぐに分かる。おまけに派手な山吹色の羽織を着ているのである。
「師範! 待ってください、俺も行きます!」
善逸はビクンと肩を震わせながらも、振り返る事はなかった。無視するようにそのまま歩を進めている。
「師範! 待ってくださいって!」
清治の幼な声と滲み出る人懐っこさのせいで、より無邪気に聞こえてしまっていたのだろう。背後からの声で善逸の機嫌はより一層悪くなる。
「俺は師範じゃないって」
善逸は立ち止まったが、背を向けたまま言った。
「何言ってるんですか。師範は昨日から俺の師範です。なってくれるって言ったじゃないですか!」
「俺が壱ノ型しかできねぇって聞いて、教えてもらえる事はねぇなって思っただろ? 俺は中途半端、いや、初歩しかできてねぇポンコツ隊士だ。俺は今から死にに行くんだよ。お前も間抜けな奴だな、こんな奴に弟子入りしちゃってさ」
清治は言葉に詰まる。「そんな事はない」と反論したくても、それをかき消されるほどの暗い雰囲気が漂っている。
「俺はな、鬼を見ると気を失っちまうほど気が弱いし、怖がりなんだ。俺が今まで生き残って来たのはただの偶然。運が良かっただけなんだよ。それを炭治郎の野郎が強いからだなんてふざけた事を言いやがって。アイツは元々山暮らしだったから、世間知らずなんだよ。山から下りて見たモンは、全部アイツにとっちゃすげぇモンなんだよ。笑っちゃうだろ?」
清治はグッと拳を握った。自虐を盾にして、この弱気な師範は人から自分自身を傷つけられまいとしているのだ。
「師範がどんな人であったとしても、師範を見極めるのは師範自身ではなくて俺自身です! 自分が思っている自分と、周りが思っている自分は違う。炭治郎さんがこれまで見て来た師範の姿は、決して弱い人間には見えなかったのでしょう。師範が自分の事をそう言うのは勝手ですが、俺は自分の目で確かめます。でも師範、たとえ怖がりだとしても、鬼に勝ててるんだからいいじゃないですか! こうして生きて隊士を続けていられるんだから、それでいいじゃないですか! 死なずに勝ち続けていれば、鬼殺隊ではそれが一番優れた隊士の証なんですよ! 藤襲山でもそうだったでしょう? 何体鬼を倒したとか、どう倒したとか、そんな事は不問でした。鬼に殺されずに生き残ったかどうか、それだけだったでしょう?」
清治が必死で呼びかけても、善逸は振り向かない。石の扉のように固くて重い善逸の心は、これだけ言っても動かせないのか。清治は八方塞がりになりつつある。でもどうしても今夜は師範のお供をしたい。それが許されなくても、もう勝手について行くしかないと思い始めていた。
「……もう勝手にしろよ。でも俺がダメな奴だって思ったら、何も言わずに去れ。理由なんて言わなくていいから。そんな事……俺はもう自分でも分かってんだから」
「師範、ありがとうございます!」
すっかり笑顔の清治は、駆け足で善逸に寄って行く。
「師範」
「……何だよ」
「腹が減りました」
「はぁぁぁぁぁッ!?」
「師範の懐から、海苔のいい匂いがします」
「こっ、これはすみちゃんが俺に……」
「俺、慌てて来たんで金持って来なかったんですよね~。ああッ、明日の朝まで腹が持つかな?」
懐に忍ばせたまだ温かい握り飯。善逸はそれを隠すように清治から身を翻した。
「し、知らねぇよ。勝手に出て来たんだろうが」
「……いいじゃありませんか。師範と弟子、同じ釜の飯を分け合って──」
「キャァァァァァァァーッ!」
女性の叫び声を聞き、咄嗟に善逸は刀に手を掛けた。
「……あっちだ! 行くぞ!」
「あっ、師範!」
善逸は、声のした方角を瞬時に把握して走り出した。
「師範! 待ってください、俺も行きます!」
善逸はビクンと肩を震わせながらも、振り返る事はなかった。無視するようにそのまま歩を進めている。
「師範! 待ってくださいって!」
清治の幼な声と滲み出る人懐っこさのせいで、より無邪気に聞こえてしまっていたのだろう。背後からの声で善逸の機嫌はより一層悪くなる。
「俺は師範じゃないって」
善逸は立ち止まったが、背を向けたまま言った。
「何言ってるんですか。師範は昨日から俺の師範です。なってくれるって言ったじゃないですか!」
「俺が壱ノ型しかできねぇって聞いて、教えてもらえる事はねぇなって思っただろ? 俺は中途半端、いや、初歩しかできてねぇポンコツ隊士だ。俺は今から死にに行くんだよ。お前も間抜けな奴だな、こんな奴に弟子入りしちゃってさ」
清治は言葉に詰まる。「そんな事はない」と反論したくても、それをかき消されるほどの暗い雰囲気が漂っている。
「俺はな、鬼を見ると気を失っちまうほど気が弱いし、怖がりなんだ。俺が今まで生き残って来たのはただの偶然。運が良かっただけなんだよ。それを炭治郎の野郎が強いからだなんてふざけた事を言いやがって。アイツは元々山暮らしだったから、世間知らずなんだよ。山から下りて見たモンは、全部アイツにとっちゃすげぇモンなんだよ。笑っちゃうだろ?」
清治はグッと拳を握った。自虐を盾にして、この弱気な師範は人から自分自身を傷つけられまいとしているのだ。
「師範がどんな人であったとしても、師範を見極めるのは師範自身ではなくて俺自身です! 自分が思っている自分と、周りが思っている自分は違う。炭治郎さんがこれまで見て来た師範の姿は、決して弱い人間には見えなかったのでしょう。師範が自分の事をそう言うのは勝手ですが、俺は自分の目で確かめます。でも師範、たとえ怖がりだとしても、鬼に勝ててるんだからいいじゃないですか! こうして生きて隊士を続けていられるんだから、それでいいじゃないですか! 死なずに勝ち続けていれば、鬼殺隊ではそれが一番優れた隊士の証なんですよ! 藤襲山でもそうだったでしょう? 何体鬼を倒したとか、どう倒したとか、そんな事は不問でした。鬼に殺されずに生き残ったかどうか、それだけだったでしょう?」
清治が必死で呼びかけても、善逸は振り向かない。石の扉のように固くて重い善逸の心は、これだけ言っても動かせないのか。清治は八方塞がりになりつつある。でもどうしても今夜は師範のお供をしたい。それが許されなくても、もう勝手について行くしかないと思い始めていた。
「……もう勝手にしろよ。でも俺がダメな奴だって思ったら、何も言わずに去れ。理由なんて言わなくていいから。そんな事……俺はもう自分でも分かってんだから」
「師範、ありがとうございます!」
すっかり笑顔の清治は、駆け足で善逸に寄って行く。
「師範」
「……何だよ」
「腹が減りました」
「はぁぁぁぁぁッ!?」
「師範の懐から、海苔のいい匂いがします」
「こっ、これはすみちゃんが俺に……」
「俺、慌てて来たんで金持って来なかったんですよね~。ああッ、明日の朝まで腹が持つかな?」
懐に忍ばせたまだ温かい握り飯。善逸はそれを隠すように清治から身を翻した。
「し、知らねぇよ。勝手に出て来たんだろうが」
「……いいじゃありませんか。師範と弟子、同じ釜の飯を分け合って──」
「キャァァァァァァァーッ!」
女性の叫び声を聞き、咄嗟に善逸は刀に手を掛けた。
「……あっちだ! 行くぞ!」
「あっ、師範!」
善逸は、声のした方角を瞬時に把握して走り出した。
