鬼を守る者
名前変換
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
清治が伊之助と蝶屋敷の外を走り回っていると、隊服を着た女性が遠くから歩いて来るのが見えた。
「あっ」
伊之助はピタリと止まり、木刀を下ろす。
「どうしたんですか、伊之助さん」
「しのぶだ」
「しのぶ? ああ、もしかして胡蝶さんですか。遠征から戻られたんですかね」
清治は久しぶりのしのぶの姿を遠目に見ながら訊く。二人でじっと見ていると、それに気付いたしのぶが微笑みながら手を振って早足でやって来た。
「目が覚めたようですね。お身体は大丈夫ですか?」
「おうよ! 俺様はスゲェからな! 今日からでも鬼を倒しに行けるぜ!」
「あらあら……。毒が回って大変だったのに、凄い回復力ですね」
「俺は無敵だからな! フヌハハハハ!」
伊之助は両腕に力瘤を出してしのぶに見せつける。
(まるでミツアナグマね。何て頑丈な子なのかしら。本当に人間離れしてる。何か研究に役立てられないかな……)
しのぶは苦笑いをしながら、伊之助の肩をツンツンと突く。
「あん?」
「中へ入りましょう。すぐに診察室に来てください。本当に大丈夫か、最終の検査をします。血液も採らせてくださいね」
「何でだよ! 俺は今このピヨ治とやり合ってんだ! 退っ引きならねぇんだよ今は!」
「ダメです。私がいいと言わなければ、あなたを任務に戻す事はできません。さあ行きますよ」
「断る! 俺は治ったんだって言ってんだろ!」
せっかくの楽しい手合わせの時に水を差され、伊之助は駄々を捏ねた。
「伊之助さん、検査をしてもらいましょうよ。それで何もなければ、俺はいくらでも付き合いますよ」
「嫌だ! 俺は元気だ! 行かねぇ!」
「伊之助さん! まだ十分に治っていないかも知れないじゃないですか。毒が回っていたのなら肝臓などもやられていますし、見た目じゃ分からない事もあるでしょ? ちゃんと血を採って診てもらった方がいいですよ」
「カンゾー?」
「皇さんの言う通りですよ、伊之助さん。肝機能が回復していないと疲れやすくなりますし、万全とは言えないままで任務を行う事になります。それは大怪我にもつながる事なんですから。あと…………。突然死んじゃうかもしれませんよ? フフフ」
いきなり死ぬかもしれないと言われた伊之助は、しょんぼりしながら診察室へ向かった。清治は庭に回って井戸水で顔を洗い、ついでに水を飲む。
「あー、さすがに疲れたな。伊之助さん、容赦ないもんなぁ」
両刀使いの伊之助の攻撃は、瞬きの間すらも油断できない。伊之助は常に全力で、手加減すらもしてくれないのだ。
少し休もうと縁側へ行き、履物を脱いで廊下を跨ぐようにゴロリと大の字になる。明るい外にいたせいか、室内の方は真っ暗に見えた。
「……ん?」
目が慣れないが、縁側沿いの部屋の中で何かが動いたような気がした。誰かいるのかと思い、清治はすぐに起き上がる。
「……あっ、どっ、どうも」
見知らぬ少女が清治を見ていた。桃色の着物に色の濃い羽織を掛け、髪は腰までと長く、なぜか竹筒を咥えている。炭治郎の妹・禰豆子なのだが、清治はその存在すら知らない。
「…………」
禰豆子は会釈する清治に何の反応も見せない。
「初めまして。俺、癸の皇清治と言います。あなたは……蝶屋敷で働かれている方ですか?」
「…………」
だらしなく寝転んでいたのを恥じて、清治は身を正して笑いかけた。だが禰豆子はびっくりしたように固まったまま動かず、清治を黙って凝視している。禰豆子にとっても清治は初めて見る男だ。
「あれ……? あの、俺は怪しい者ではなくて……。アハハ、そんなに怖がらないでくださいよ。今ここで治療している善逸さんの弟子でして……」
清治が笑って話しかけながら近づいて行くと、禰豆子は後退って行く。そして逃げ場をなくして壁に背中を打った時、スルスルと小さくなってしまった。
「⁉」
それを目撃した清治は驚愕して目を見開いた。ただの蝶屋敷に出入りしている少女だと思って話しかけていたが、人間ではないと気付いたのだ。
目が慣れてくると、その姿がはっきりと見えてくる。薄い桃色の瞳は猫の目のような縦長の鬼特有の瞳孔がはっきりと判るほどで、指先も鉤爪のように鋭く尖っている。
「さては鬼だな!? おいッ、こんな所で鬼が何してんだよ! まさかこんな真昼間から人を襲いに蝶屋敷に潜り込んだのか?」
「…………」
「答えろ! 何か言え!」
声を荒げると、禰豆子はうずくまって震え出した。近くには誰もいない。清治とこの鬼の禰豆子だけ。清治はこの部屋に置いてある自分の日輪刀をすぐに手に取ると、鞘からそれを抜いて禰豆子の前に突き出した。
「あっ」
伊之助はピタリと止まり、木刀を下ろす。
「どうしたんですか、伊之助さん」
「しのぶだ」
「しのぶ? ああ、もしかして胡蝶さんですか。遠征から戻られたんですかね」
清治は久しぶりのしのぶの姿を遠目に見ながら訊く。二人でじっと見ていると、それに気付いたしのぶが微笑みながら手を振って早足でやって来た。
「目が覚めたようですね。お身体は大丈夫ですか?」
「おうよ! 俺様はスゲェからな! 今日からでも鬼を倒しに行けるぜ!」
「あらあら……。毒が回って大変だったのに、凄い回復力ですね」
「俺は無敵だからな! フヌハハハハ!」
伊之助は両腕に力瘤を出してしのぶに見せつける。
(まるでミツアナグマね。何て頑丈な子なのかしら。本当に人間離れしてる。何か研究に役立てられないかな……)
しのぶは苦笑いをしながら、伊之助の肩をツンツンと突く。
「あん?」
「中へ入りましょう。すぐに診察室に来てください。本当に大丈夫か、最終の検査をします。血液も採らせてくださいね」
「何でだよ! 俺は今このピヨ治とやり合ってんだ! 退っ引きならねぇんだよ今は!」
「ダメです。私がいいと言わなければ、あなたを任務に戻す事はできません。さあ行きますよ」
「断る! 俺は治ったんだって言ってんだろ!」
せっかくの楽しい手合わせの時に水を差され、伊之助は駄々を捏ねた。
「伊之助さん、検査をしてもらいましょうよ。それで何もなければ、俺はいくらでも付き合いますよ」
「嫌だ! 俺は元気だ! 行かねぇ!」
「伊之助さん! まだ十分に治っていないかも知れないじゃないですか。毒が回っていたのなら肝臓などもやられていますし、見た目じゃ分からない事もあるでしょ? ちゃんと血を採って診てもらった方がいいですよ」
「カンゾー?」
「皇さんの言う通りですよ、伊之助さん。肝機能が回復していないと疲れやすくなりますし、万全とは言えないままで任務を行う事になります。それは大怪我にもつながる事なんですから。あと…………。突然死んじゃうかもしれませんよ? フフフ」
いきなり死ぬかもしれないと言われた伊之助は、しょんぼりしながら診察室へ向かった。清治は庭に回って井戸水で顔を洗い、ついでに水を飲む。
「あー、さすがに疲れたな。伊之助さん、容赦ないもんなぁ」
両刀使いの伊之助の攻撃は、瞬きの間すらも油断できない。伊之助は常に全力で、手加減すらもしてくれないのだ。
少し休もうと縁側へ行き、履物を脱いで廊下を跨ぐようにゴロリと大の字になる。明るい外にいたせいか、室内の方は真っ暗に見えた。
「……ん?」
目が慣れないが、縁側沿いの部屋の中で何かが動いたような気がした。誰かいるのかと思い、清治はすぐに起き上がる。
「……あっ、どっ、どうも」
見知らぬ少女が清治を見ていた。桃色の着物に色の濃い羽織を掛け、髪は腰までと長く、なぜか竹筒を咥えている。炭治郎の妹・禰豆子なのだが、清治はその存在すら知らない。
「…………」
禰豆子は会釈する清治に何の反応も見せない。
「初めまして。俺、癸の皇清治と言います。あなたは……蝶屋敷で働かれている方ですか?」
「…………」
だらしなく寝転んでいたのを恥じて、清治は身を正して笑いかけた。だが禰豆子はびっくりしたように固まったまま動かず、清治を黙って凝視している。禰豆子にとっても清治は初めて見る男だ。
「あれ……? あの、俺は怪しい者ではなくて……。アハハ、そんなに怖がらないでくださいよ。今ここで治療している善逸さんの弟子でして……」
清治が笑って話しかけながら近づいて行くと、禰豆子は後退って行く。そして逃げ場をなくして壁に背中を打った時、スルスルと小さくなってしまった。
「⁉」
それを目撃した清治は驚愕して目を見開いた。ただの蝶屋敷に出入りしている少女だと思って話しかけていたが、人間ではないと気付いたのだ。
目が慣れてくると、その姿がはっきりと見えてくる。薄い桃色の瞳は猫の目のような縦長の鬼特有の瞳孔がはっきりと判るほどで、指先も鉤爪のように鋭く尖っている。
「さては鬼だな!? おいッ、こんな所で鬼が何してんだよ! まさかこんな真昼間から人を襲いに蝶屋敷に潜り込んだのか?」
「…………」
「答えろ! 何か言え!」
声を荒げると、禰豆子はうずくまって震え出した。近くには誰もいない。清治とこの鬼の禰豆子だけ。清治はこの部屋に置いてある自分の日輪刀をすぐに手に取ると、鞘からそれを抜いて禰豆子の前に突き出した。
4/4ページ
