二人の刃
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蝶屋敷では、清治の無事の帰還を祝ってみんなで夕餉をとる事になった。重症で治療中の隊士たちの世話は隠に代わってもらい、アオイたちも久しぶりにみんな揃ってゆっくりと食事をする。
「いやー、やっぱ俺の弟子だね。気が利くよ」
骨折した足が順調にくっつきつつある善逸も、病室から起きて来て一緒に柿の葉寿司を堪能する。
「とても美味しいですね。こういう葉っぱで包んだ押し寿司は色々ありますけど、柿の葉を使うなんて誰が考えたんでしょうか。そう言えば桜餅も桜の葉で包まれていますね。この柿の葉は桜の葉のように塩漬けされていないように感じますが、何か理由があるのでしょうか」
アオイは気に入ったのか、料理好きの目線からあれこれと考察しながら口に運んでいる。
「「「とーってもおいしいです、皇さん!」」」
「それは良かったです。いやぁ、しのぶさんや炭治郎さん、それに伊之助さんの分も買って来たんですけど……残念です。伊之助さんなんか、絶対大喜びするだろうなって思ってたんですけど」
「アイツは食いしん坊だからきっとこの柿の葉まで食っちまうだろうね。そんでもっとよこせって人のまで取っちゃうね」
善逸は美味しそうにパクパク食べながら、顔をしかめて言った。しのぶは昨日から任務で遠出をしていて不在、炭治郎と伊之助は吉原以来まだ意識不明のまま、点滴で何とか命を繋いでいる。清治は風呂上がりに二人の顔を見て来たが、まだ痛々しい姿のままだった。
「そうだ! アイツらの分もみんなで食べちゃおうよ。しのぶさんのは取っておいて」
「えっ、いや……師範、それは今日頼んで来てもらった隠の人の夜食にしようって言ってたじゃないですか」
「そうだけどさぁ。あまりにおいしいから、俺はもっと食べたいんだよぉ。特にこの鯖のやつ」
「おいしいのは分かりますけどねぇ。でもアオイさんたちが作ってくださったおかずもありますし。ほら、この猪肉の串焼き。こんなの伊之助さんがいたら絶対に食べられませんからね」
「そうだけどさぁ。それも食べるけど、俺はお寿司をもっと食べたいんだよぉ。いいじゃん、どうせこのお寿司の存在なんて隠は知らないんだからさぁ。こっちで食べちゃえば分かんないんだし、恨まれる事もないじゃん。最初からなかった事にすればいいんだしさぁ」
清治は苦笑いをする。どこかの誰かが 言っていた事と同じような事を言っているからだ。
「いけませんよ、善逸さん‼」
アオイは頬を膨らまして睨む。
「ちぇっ。清治、またどこかに遠征に行ったら、ちゃんとお土産買って来てね。たくさんだぞ、たくさん」
「……分かってますって。もう、食い意地張ってるんだから」
何も変わらない仲間、温かい食事風景。やはり蝶屋敷は居心地が良い。清治は無事帰ってこれてほっとする。
「ところで皇さん、先程祭壇に祀った隠の方……菊江さんでしたか、その方の遺骨はこれからどうするのですか?」
夕餉の前、さっと簡単に祭壇を設けて御骨を置かせてもらった時、事の経緯は話してあった。まだ入隊したばかりの隠だったため誰も面識がなかったが、すみは花を、なほはお菓子や仏飯を、きよは仏具をすぐに用意してくれた。
「明日、実家の場所を調べて訪ねてみます。家族の方がどなたかいればいいんですが……。はっきりとは分からないんですが、御両親も弟さんも鬼にやられたというような事を聞いているので……。分からなければ近所の人にも訊いて回ってみようと思います」
「そう。ご家族を……。それで隠に……」
ここにいる善逸以外全員が家族を鬼に殺されている。その悲しい過去を思うと、誰しも無言になってしまう。
「あのぉ……ちょっといいでしょうか」
「? 何でしょう」
きよがモジモジしながら話し出す。なほとすみも目を合わせて一緒になってモジモジした。
「祭壇に置かれている美容くりいむなんですが、あれは一体……?」
清治の私物に紛れていた女性用の「くりいむ」が気になって仕方がない。
「あれって、ちょっと前に新発売された人気の物ですよね? お肌がしっとりして白くなるって言う……」
「見たところ新品のようですし、アオイさんへの贈り物かな~って思ってたんですけど……」
「祭壇にあるって事は、もしかして菊江さんの遺品って事ですか……?」
三人は言いにくそうに口を開く。清治は、初めはキョトンとして聞いていたが、そのうちクスっと笑った。
「ああ、あれは……確かに贈り物です。いえ、ちょっと駅からの帰り道で売っているのを見かけたので、買ったまでです。実は、任務中に日焼けをしてしまった菊江さんに、俺がこのくりいむを勧めたんですよね。女性に人気のようなので、東京に帰ったらぜひ探してみてくださいって。でもこんな事になってしまったんで……まぁ俺からの贈り物としてって事ですよ」
使われる事のない物だが、菊江はきっと喜んでいるだろう。みんなで心が温まるような気分に浸っている中、清治の師範はその雰囲気をぶち壊すような事を言い出した。
「ねぇねぇ、菊江さんってかわいかった?」
「はぁっ⁉」
「何歳くらい? どんな顔? 美人系? かわいい系? どんな性格?」
善逸の興味はそこしかない。
「うーん……多分二十歳くらいか、もう少し若いか……。裁縫上手で優しくて、かなり美人でかわいかったですよ。頭巾で顔を覆うのがもったいないくらいの」
「何!? そんな人間国宝みたいな人を殺しちゃうなんて、何て鬼だ! 許せん! っていうか何で守ってあげなかったのさ! お前は何のために吉野へ行ったんだよ‼ 女の子を守らないでどうする! お前なんて修行し直しだ! 雷に打たれて出直して来い!」
「雷に打たれたら死んじゃいますよ! 俺は師範みたいに雷に打たれても平気なほど、鈍感で無神経じゃありません!」
「俺のどこが鈍感で無神経なんだよ! こんなに敏感で神経質なのにさッ‼」
善逸は清治の首を掴んでブンブン揺さぶっている。みんなの笑い声が響く中、清治はふと獪岳の事を思った。
ほとんど笑う事のない獪岳と、そこにいるだけで周囲が賑やかになる善逸。二人それぞれの生い立ちを思えば、内に秘めているものは同じだろう。獪岳はそれを表に出し、善逸はひた隠しにして明るく振る舞っている。
二人はまるで陰と陽。
相反する形を重ねて、一つの円になる勾玉のように──。
第三部 どんぐりの背比べ ──完──
「いやー、やっぱ俺の弟子だね。気が利くよ」
骨折した足が順調にくっつきつつある善逸も、病室から起きて来て一緒に柿の葉寿司を堪能する。
「とても美味しいですね。こういう葉っぱで包んだ押し寿司は色々ありますけど、柿の葉を使うなんて誰が考えたんでしょうか。そう言えば桜餅も桜の葉で包まれていますね。この柿の葉は桜の葉のように塩漬けされていないように感じますが、何か理由があるのでしょうか」
アオイは気に入ったのか、料理好きの目線からあれこれと考察しながら口に運んでいる。
「「「とーってもおいしいです、皇さん!」」」
「それは良かったです。いやぁ、しのぶさんや炭治郎さん、それに伊之助さんの分も買って来たんですけど……残念です。伊之助さんなんか、絶対大喜びするだろうなって思ってたんですけど」
「アイツは食いしん坊だからきっとこの柿の葉まで食っちまうだろうね。そんでもっとよこせって人のまで取っちゃうね」
善逸は美味しそうにパクパク食べながら、顔をしかめて言った。しのぶは昨日から任務で遠出をしていて不在、炭治郎と伊之助は吉原以来まだ意識不明のまま、点滴で何とか命を繋いでいる。清治は風呂上がりに二人の顔を見て来たが、まだ痛々しい姿のままだった。
「そうだ! アイツらの分もみんなで食べちゃおうよ。しのぶさんのは取っておいて」
「えっ、いや……師範、それは今日頼んで来てもらった隠の人の夜食にしようって言ってたじゃないですか」
「そうだけどさぁ。あまりにおいしいから、俺はもっと食べたいんだよぉ。特にこの鯖のやつ」
「おいしいのは分かりますけどねぇ。でもアオイさんたちが作ってくださったおかずもありますし。ほら、この猪肉の串焼き。こんなの伊之助さんがいたら絶対に食べられませんからね」
「そうだけどさぁ。それも食べるけど、俺はお寿司をもっと食べたいんだよぉ。いいじゃん、どうせこのお寿司の存在なんて隠は知らないんだからさぁ。こっちで食べちゃえば分かんないんだし、恨まれる事もないじゃん。最初からなかった事にすればいいんだしさぁ」
清治は苦笑いをする。
「いけませんよ、善逸さん‼」
アオイは頬を膨らまして睨む。
「ちぇっ。清治、またどこかに遠征に行ったら、ちゃんとお土産買って来てね。たくさんだぞ、たくさん」
「……分かってますって。もう、食い意地張ってるんだから」
何も変わらない仲間、温かい食事風景。やはり蝶屋敷は居心地が良い。清治は無事帰ってこれてほっとする。
「ところで皇さん、先程祭壇に祀った隠の方……菊江さんでしたか、その方の遺骨はこれからどうするのですか?」
夕餉の前、さっと簡単に祭壇を設けて御骨を置かせてもらった時、事の経緯は話してあった。まだ入隊したばかりの隠だったため誰も面識がなかったが、すみは花を、なほはお菓子や仏飯を、きよは仏具をすぐに用意してくれた。
「明日、実家の場所を調べて訪ねてみます。家族の方がどなたかいればいいんですが……。はっきりとは分からないんですが、御両親も弟さんも鬼にやられたというような事を聞いているので……。分からなければ近所の人にも訊いて回ってみようと思います」
「そう。ご家族を……。それで隠に……」
ここにいる善逸以外全員が家族を鬼に殺されている。その悲しい過去を思うと、誰しも無言になってしまう。
「あのぉ……ちょっといいでしょうか」
「? 何でしょう」
きよがモジモジしながら話し出す。なほとすみも目を合わせて一緒になってモジモジした。
「祭壇に置かれている美容くりいむなんですが、あれは一体……?」
清治の私物に紛れていた女性用の「くりいむ」が気になって仕方がない。
「あれって、ちょっと前に新発売された人気の物ですよね? お肌がしっとりして白くなるって言う……」
「見たところ新品のようですし、アオイさんへの贈り物かな~って思ってたんですけど……」
「祭壇にあるって事は、もしかして菊江さんの遺品って事ですか……?」
三人は言いにくそうに口を開く。清治は、初めはキョトンとして聞いていたが、そのうちクスっと笑った。
「ああ、あれは……確かに贈り物です。いえ、ちょっと駅からの帰り道で売っているのを見かけたので、買ったまでです。実は、任務中に日焼けをしてしまった菊江さんに、俺がこのくりいむを勧めたんですよね。女性に人気のようなので、東京に帰ったらぜひ探してみてくださいって。でもこんな事になってしまったんで……まぁ俺からの贈り物としてって事ですよ」
使われる事のない物だが、菊江はきっと喜んでいるだろう。みんなで心が温まるような気分に浸っている中、清治の師範はその雰囲気をぶち壊すような事を言い出した。
「ねぇねぇ、菊江さんってかわいかった?」
「はぁっ⁉」
「何歳くらい? どんな顔? 美人系? かわいい系? どんな性格?」
善逸の興味はそこしかない。
「うーん……多分二十歳くらいか、もう少し若いか……。裁縫上手で優しくて、かなり美人でかわいかったですよ。頭巾で顔を覆うのがもったいないくらいの」
「何!? そんな人間国宝みたいな人を殺しちゃうなんて、何て鬼だ! 許せん! っていうか何で守ってあげなかったのさ! お前は何のために吉野へ行ったんだよ‼ 女の子を守らないでどうする! お前なんて修行し直しだ! 雷に打たれて出直して来い!」
「雷に打たれたら死んじゃいますよ! 俺は師範みたいに雷に打たれても平気なほど、鈍感で無神経じゃありません!」
「俺のどこが鈍感で無神経なんだよ! こんなに敏感で神経質なのにさッ‼」
善逸は清治の首を掴んでブンブン揺さぶっている。みんなの笑い声が響く中、清治はふと獪岳の事を思った。
ほとんど笑う事のない獪岳と、そこにいるだけで周囲が賑やかになる善逸。二人それぞれの生い立ちを思えば、内に秘めているものは同じだろう。獪岳はそれを表に出し、善逸はひた隠しにして明るく振る舞っている。
二人はまるで陰と陽。
相反する形を重ねて、一つの円になる勾玉のように──。
第三部 どんぐりの背比べ ──完──
