鬼灯日加栄帳
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すこし昔の話をしよう。
暖かい海のある町に生まれた。
その町の港にはたくさんの船がとまっていて、商人たちが北から南までのきれいな品々を売り買い交換してたいへん賑わっていた。
海沿いの家には商人、船乗り、釣り人が住んでいた。男ばかり。
その町はの海は少しおかしくて、女だけが海で亡くなる。
例えば男と女が船に乗っていると、波もないのに船がぐるりと転覆して、女は海の底へ、男は気がつけば砂浜へ。
普段は穏やかな海だが数年に一度とてつもなく荒れる。何週間も荒れに荒れる。
それを町人たちは公子様がお怒りだ。と恐れおののく。
公子様というのはこの海の底に住んでいる乙姫様の弟君で、心が荒れると海が荒れる。
公子様の心を癒やすために女は海へ嫁ぐのだ。
町の女達は海から少し離れたところに住んでいる。街の女の半分は商人、船乗り、釣り人の伴侶で、もう半分は巫女として育てられる。
巫女は幼い頃から親元を離れ厳しく躾けられ育てられる。勉学、修行はもちろん、仕草、言葉遣い、歌、楽器、舞…どこへ出しても恥ずかしくないよう、海へ嫁ぐのだから、と、厳しく育てられる。
年は十頃から巫女として認められ始め嫁ぐ日を占いにて決めている。
忘れもしない、私が十三の頃。幼馴染のサヨの嫁ぐ日が決まった日。
「さくらちゃん、わたし、海にとけるんだって」
それが最後に交わした言葉。
その日からサヨは別の部屋に移され、日々豪華な食事をとる。すこしふっくらとてきたサヨの目は虚ろになっていた。
これは後から知ったことだが食事に幻を見るものが混ぜられているらしい。それは日を追うごとに多く混ぜられていて、サヨはサヨでなくなっていた。部屋の隅にもたれるサヨの目は暗くどこを見ているのかわからなかった。
前夜、きれいな白無垢に身を包んだサヨは沢山酒を飲んでいた。自分で立てなくなるほど酒に酔わされ、自分を壊され。
サヨは大巫女様に抱きかかえられ海へと向かう。海はどす黒く荒れている。木舟に乗せられたサヨは、誰も漕いでいないのに波が沖へと運ぶ。ざぶんざぶん。
巫女たちが祝詞をあげるなか私はサヨ、またね、とつぶやいた。
夜が明けると昨日までの荒れた海は嘘のようで、朝日を反射させキラキラとしていた。
ああ無事に行けたのだと思った。
三日後岸には大量の魚や海藻、珊瑚までもが打ち上げられていた。
巫女たちは公子様からの結納品だよ、と言った。
町の男たちは喜んだ。これでまた暮らしていける、と。
幼い娘を犠牲にした罪悪感を皆隠しながら喜んだ。これでまた生きていけると。
暖かい海のある町に生まれた。
その町の港にはたくさんの船がとまっていて、商人たちが北から南までのきれいな品々を売り買い交換してたいへん賑わっていた。
海沿いの家には商人、船乗り、釣り人が住んでいた。男ばかり。
その町はの海は少しおかしくて、女だけが海で亡くなる。
例えば男と女が船に乗っていると、波もないのに船がぐるりと転覆して、女は海の底へ、男は気がつけば砂浜へ。
普段は穏やかな海だが数年に一度とてつもなく荒れる。何週間も荒れに荒れる。
それを町人たちは公子様がお怒りだ。と恐れおののく。
公子様というのはこの海の底に住んでいる乙姫様の弟君で、心が荒れると海が荒れる。
公子様の心を癒やすために女は海へ嫁ぐのだ。
町の女達は海から少し離れたところに住んでいる。街の女の半分は商人、船乗り、釣り人の伴侶で、もう半分は巫女として育てられる。
巫女は幼い頃から親元を離れ厳しく躾けられ育てられる。勉学、修行はもちろん、仕草、言葉遣い、歌、楽器、舞…どこへ出しても恥ずかしくないよう、海へ嫁ぐのだから、と、厳しく育てられる。
年は十頃から巫女として認められ始め嫁ぐ日を占いにて決めている。
忘れもしない、私が十三の頃。幼馴染のサヨの嫁ぐ日が決まった日。
「さくらちゃん、わたし、海にとけるんだって」
それが最後に交わした言葉。
その日からサヨは別の部屋に移され、日々豪華な食事をとる。すこしふっくらとてきたサヨの目は虚ろになっていた。
これは後から知ったことだが食事に幻を見るものが混ぜられているらしい。それは日を追うごとに多く混ぜられていて、サヨはサヨでなくなっていた。部屋の隅にもたれるサヨの目は暗くどこを見ているのかわからなかった。
前夜、きれいな白無垢に身を包んだサヨは沢山酒を飲んでいた。自分で立てなくなるほど酒に酔わされ、自分を壊され。
サヨは大巫女様に抱きかかえられ海へと向かう。海はどす黒く荒れている。木舟に乗せられたサヨは、誰も漕いでいないのに波が沖へと運ぶ。ざぶんざぶん。
巫女たちが祝詞をあげるなか私はサヨ、またね、とつぶやいた。
夜が明けると昨日までの荒れた海は嘘のようで、朝日を反射させキラキラとしていた。
ああ無事に行けたのだと思った。
三日後岸には大量の魚や海藻、珊瑚までもが打ち上げられていた。
巫女たちは公子様からの結納品だよ、と言った。
町の男たちは喜んだ。これでまた暮らしていける、と。
幼い娘を犠牲にした罪悪感を皆隠しながら喜んだ。これでまた生きていけると。