心の距離
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森の中いっぱいに立ち込めていた霧が、次第に薄らいできた。
視界が開けたことにより、木々の様子や周囲の環境が窺えるようになる。
「けっ、今度の妖怪も全然大したことなかったな」
木がなく、随分と開けた所に立っていた犬夜叉は、鉄砕牙の峰を軽々と肩に乗せ、吐き捨てるようにそう言った。
「ええ。おなごがいては現れない、美しい女の妖怪だと聞いていましたが…。あっけなかったですね」
犬夜叉の隣にいた弥勒が、霧の晴れていくのを見つめながら言う。
犬夜叉たち一行は、この森の近隣の村に立ち寄ったとき、妖怪の噂を聞いた。
昼も夜も霧の晴れない森の入り口に美しい女が現れて、近くを通りかかる者を森の中に招き入れ、森の中に入った者は二度と帰ってこない。そんな噂だった。
そして、いつも森へと招かれるのは男ばかり。女を連れていた旅人は、今まで一度も美しい女を見たことはなかった。
このことを村人から聞いて、その美しい女は恐らく、女がいては現れない妖怪なのだろうと犬夜叉たちは推測した。
それ故、かごめと珊瑚は村で待っていてもらい、犬夜叉と弥勒のみでその妖怪の退治に赴いたのである。
二人がそこに行くと、噂通り美しい女が現れたが、その頬は青白く瞳も光を宿してはいない。明らかに人間ではない事が見て取れた。
さすがの弥勒も女好きと言えども、この美しい女に真の美しさを感じなかったらしい。いつものように口説こうとせずに、事は順調に進んでいった。
特に手間取ることもなく、犬夜叉の鉄砕牙と弥勒の法力で、二人はあっけなく女の妖怪を倒したのだった。
「さて、そろそろ帰りましょうか。かごめさまや珊瑚も待たせてしまっていることですし…」
弥勒がそう言って、森の出口へと踵を返そうとしたとき…
「!!待て弥勒、殺生丸の臭いだ」
霧が晴れたせいで滞っていた空気が流れだし、臭いを運んでくる。犬夜叉が弥勒にそう言うと、弥勒はぴたりと足を止めた。
「殺生丸が…?では…―!」
弥勒は言葉を続けようとして口を開きかけたが、森の奥の方を見て思わず動きを止める。
木陰の向こうからこちらに歩いてくる人影を認め、犬夜叉と弥勒は食い入るようにその先を見つめた。
影の中からでもその姿を見つけようとして。
しかし―…
「はあー、やっと霧が晴れたわい。これでりんを見失うこともあるまい」
「邪見さまー。りん、あっちに行きたい!」
聞き覚えのある、間の抜けたような声が聞こえた。次いで、その声の主が木陰から現れる。言うまでもなく、殺生丸の連れているりんと邪見だった。
犬夜叉と弥勒は、目当ての人物ではなかったことに、内心少し落胆する。
「!あれっ、犬夜叉さま!」
「なっ!何でお前たちがここにっ!?」
「悪ぃかよ。この霧消してやったのは俺たちだぜ、邪見」
「うっ…」
先ほどの言葉を聞かれていた邪見は、犬夜叉に言い返すこともできず言葉に詰まる。二人が高低差のある睨み合いを続けていたときだった。
木陰が揺れ、犬夜叉と弥勒の前に二つの影が現れた。
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