3話 風を使う女
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今まで幾人もの人間が、妖怪が、その玉を求めて争ってきた。
持つ者の願いをかなえる、四魂の玉。
砕けてしまった玉の、最後の欠片があるのは――…あの世とこの世の境。
そこはかつて、犬夜叉が鉄砕牙を手に入れた地であり、殺生丸の左腕を斬り落とした地。
そして――…
犬夜叉の父が眠る墓場――……
犬夜叉一行の次なる目的は、あの世とこの世の境にある、最後の四魂の欠片を見つける事である。
以前、犬夜叉とかごめがそこに行った時は、犬夜叉の瞳から出て来た黒真珠に導かれた。
だがその黒真珠は既に役目を終え、消えてしまったので、欠片を求める犬夜叉達が、再びあの場所に行く事は叶わない。
そこで、黒真珠を作り出した妖怪・宝仙鬼を訪ね、墓場に通じる入り口となる宝玉を求めたのだが――……
頼みの綱の宝仙鬼は既に死に、新たな宝玉を手に入れる事は出来なかった。
――こうしている間にも、奈落や白童子が、最後の欠片を手に入れてしまうかもしれない。
森の中で一同と共に焚火を囲みながら、犬夜叉は苛立っていた。
「…おい冥加じじい、てめえ本当に他の行き方知らねえのか」
犬夜叉が眉を顰めながら、強い口調でそう言うと、犬夜叉の肩に乗っていた蚤妖怪・冥加が、怯えたように飛び跳ねる。
「ぞ、存じませんっ!墓場に行く方法は、あれ以外は――…」
「…てめえ、嘘言ってんじゃねえだろうな?」
犬夜叉は爪先で冥加を摘まみ、胡散臭そうに睨みつけた。
冥加は、生前の犬夜叉の父にも長らく仕えていた為、父の事や、妖怪の事など、様々な事を知っている。
だが、かなり臆病且つ身勝手なので、身の危険を感じると、犬夜叉達を見捨てて真っ先に逃げてしまう事もしばしばあるのだ。
その為、彼の言う事は、常に半分程度信じられていない。
けれども冥加は、真面目な顔をしてぴょんぴょん飛び跳ね、犬夜叉に必死に訴えかけた。
「何を言いますか、犬夜叉さま!この冥加が、犬夜叉さまに嘘を吐くなど、天地がひっくり返ってもありませぬ!」
「けっ、どうだか」
必死な素振りを余計に怪しく思いつつ、犬夜叉がそう言った時。
ザアアッ――と、強い風が通り過ぎた。
それと同時に、
「――教えてやろうか。入り口を」
聞き覚えのある声が、風に乗って一同の元に届いてくる。
「!神楽…!」
タンッ、と目の前に膝を着いて現れたその姿に、犬夜叉は声を上げた。
そして、神楽を警戒して、すぐさま犬夜叉と弥勒が、その前に進み出る。
すると神楽は面倒くさそうな顔をしながら、緩慢に立ち上がった。
「今日は戦いに来た訳じゃねえよ。…白童子のガキは、火の国の山に向かった。そこに、あの世とこの世の境とやらの門があるんだとよ」
「火の国の山…?」
「!」
怪訝な顔をして、神楽の言葉を繰り返す犬夜叉の肩で、冥加がギクリと飛び上がる。
弥勒は、一歩前に進み出ながら、冷めた顔をした神楽に問いかけた。
「どういう事だ、神楽。なぜそんな事を教えに……」
「さあな。そんな事は白童子に聞けよ」
神楽は弥勒を見据えて、素っ気なくそう言うと、結わえ髪に留めていた羽を、慣れた手つきでピッと引き抜く。
途端、ゴオッと風が巻き起こって、犬夜叉達は目を細めた。
そして、次に瞳を開いた時にはもう、神楽は大きくなったその羽に乗って、どこかに飛んで行ってしまっていたのだった。
風に黒髪を靡かせながら、かごめは神楽の消えた空を訝し気に見上げる。
「…白童子が伝えて来たってこと…?」
「…罠かもしれませんな…」
弥勒が冷静な声音で言い、犬夜叉はけっ、といきり立って様子で吐き捨てた。
「罠だろうがなんだろうが…――」
「――いけません、犬夜叉さま!」
まるで最後まで言わせまいとするように、言いかけた犬夜叉の言葉を、冥加が遮る。
「火の国の山は危険すぎる!何人たりとも、あそこだけは…!」
冥加は犬夜叉の眼前を飛び跳ねて、焦った様子で主張した。
が、犬夜叉は目を細めて冥加を見据え、ふん、と鼻を鳴らす。
「その慌てぶり…門がどうとかって話、ガセじゃねえってことだな」
「ぎくっ」
肩を跳ねさせる冥加ににっ、と口の端を持ち上げて、犬夜叉は声高に言った。
「だったら行くしかねえだろ!白童子のガキが、何企んでようがな!」
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