13話 あなたの隣を生きていく
【名前変換】
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
―――――――――……
物心のつくずっと前から、紗夜の体は呪われていた。
妖怪がその血肉と魂を喰らえば、莫大な妖力と寿命が手に入る。
そんな呪いを、産みの親にかけられていた。
満月の夜になれば、紗夜の体に満たされた妖力は一層力を増し、妖怪達はその力に引き寄せられて、紗夜の元に集まってくる。
けれど、紗夜の命を喰らうことは、簡単には出来ない。
産みの親――朝霞がかけた、もう一つの呪い。
それは、紗夜の意志に関わらず、紗夜の身に危険が迫ったときに現れる結界と、死ぬことの出来ない呪いだった。
だから紗夜は、いつも妖怪に命を狙われていた。
何度も何度も、月が満ちる度に、紗夜の住む村は襲われた。
たくさんの罪のない村人が、犠牲になった。
けれど、どれだけの血が流れても、紗夜自身が死ぬことは、絶対にない。
結界が妖怪を退け、殺してしまう。
そして、紗夜がどれだけ自分を恨んでも、憎んでも、願っても、自死する事は出来なかった。
ずっとずっと、負の連鎖しか起こさない自分が大嫌いだった。
誰かから大切な人を奪ってしまう自分が、苦しくて、怖くて、仕方なかった。
こんな身体、早く死んでしまえばいい。
早く死にたい。消えてしまいたい。
誰か、殺して。
殺して。
私を、殺して。
――あの頃の紗夜は、そんな事ばかり考えていた。
唯の人間として生まれていたら、
何も、失っていなかっただろうか。
優しい父と母のままで、いてくれただろうか。
兄は、死ななかっただろうか。
一月に一度巡って来る満月に、美しさだけを感じる事が、出来ただろうか。
唯の人間として、生きることが出来たなら。
か弱くて、小さな怪我で痛みを感じ、直ぐに病にかかって、あっという間に命を散らしてしまう、余りに脆弱な生き物だとしても。
唯の人間として、生きることが出来たなら。
もう、誰かの命を奪ってしまうこともないのなら。
きっと、笑って生きていくことが出来る。
幸せに、生きていくことが出来る。
紗夜はずっと、そう思っていた。
唯の十六の少女として生きることに憧憬し、それを何より願っていた。
だから――――……
朝霞の呪いを絶ち切って、何に縛られることもなくなったこの身体が、命が。
今は、とても愛おしい。
唯の人間として、生きているこの命。
彼が見ている、唯の人間としての自分。
唯の、人間で。
・