9話 些細な出会い
【名前変換】
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野党との一件があってから数日後。
一行は深い森を抜けた。頭上に生い茂っていたはずの木々はすっかり後方に行ってしまい、目の前にあるのは足首までの高さの草が広がる、平穏な草原ばかりである。木漏れ日はなく、降り注ぐ日光が直接肌を差した。
「おい、紗夜!何をしている、置いていくぞ!」
呆然と立ちつくしていた紗夜は、邪見の声にはっとした。この草原に出たことで、自分が故郷から随分と離れた遠い所に来ているのだと、改めて自覚する。紗夜は少し小走りに、彼らの後を追いかけた。
草原を数刻歩くうちに、少し遠くの方で煙が上がっているのを見つけた。りんが好奇心たっぷりな様子で、そちらの方を眺める。
「町だ!ねえ、町があるよ!」
その声に紗夜も煙の元をたどった。
なるほど、確かに町がある。あまり大きくはないが、それなりの賑わいを見せているようだ。少し寄ってみたいな…と紗夜が思ったとき、りんが言った。
「ねえ殺生丸さま、あの町に行ってみてもいい?」
その言葉に、いつもの如く邪見が口を挟む。
「駄目じゃ駄目じゃ!寄り道などしておったら、一向に進まんわい!」
「もーっ、邪見さまには聞いてないでしょっ!」
そんな二人の言い合いを聞いていると、不意に視線を感じて紗夜は顔をあげた。殺生丸が、お前はどうしたいのだ、という目で紗夜を見ている。それを察して、紗夜は思いのまま、首を縦に振った。殺生丸はそれを見ると静かに言う。
「…好きにしろ。だが、日暮れまでには戻って来い」
「せ、殺生丸さま、よろしいので!?」
「はーいっ!ありがとう、殺生丸さま!行こっ、紗夜ちゃん!」
「…あ、少し待って…」
紗夜は阿吽の傍に行くと、その鞍に括り付けていた風呂敷を手に取った。この中には、前に着ていた打掛などが入っている。
当然、人間の貨幣など持ち合わせていない一行には、人の世で物を買う事は出来ない。この着物を売れば、それなりの額の貨幣が得られるはずだ。
そういうつもりで、紗夜は重い風呂敷を持ったのである。りんは、紗夜の手を取ると、町に向けて駆けだした。
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